【感想・ネタバレ】イルカのレビュー

あらすじ

恋人と初めて結ばれたあと、東京を離れ、傷ついた女性たちが集う海辺の寺へ向かった小説家キミコ。外の世界から切り離された、忙しくも静かな生活。その後訪れた別荘で、キミコは自分が妊娠していることを思いがけない人物から告げられる。まだこの世にやってきていないある魂との出会いを、やさしく、繊細に描いた長編小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

女としての生生しさを個人的には感じた作品。
ばななさんの私小説とも思えるような内容で、素直で淡々とした文面から
日常とその中にある非日常が伝わってくる。

男と女の違いというものを、否応なしに考えた。
やはりまったく変な意味でなく、役割が違う生き物なのだと改めて思った。
人間と言っても動物なのだから、本能というものはある。
雄は戦い、雌は守る。
そういう役割分担がきちんと出来ているのだ。
現代は女が戦いながら守ることもしなければいけなくて
というような記述にははっとした。

また性別の違いを抜きにしても、本能について考えさせられた。
『現代化』でセンサーが鈍ってきていて
霊感や直感、第六感だとか虫の知らせだとか呼ばれるけれど
やはり人には本能が備わっていて
その本能の『声』は雑多なことに掻き消されることが多い世の中だが
感覚を研ぎ澄ませていれば聞き届けることが出来るし
お腹の中に自分以外の命が宿っていれば尚更
守らなくてはという本能が働くものだろう。
また、南の国や田舎に療養に行ったり、寺へ行ったりすれば
静かな環境で本能に寄り添いやすくなり
歪んでいたことも修復されていくのではないかと思う。

オカルト的なことでなくとも、日常にちょっとした不思議は溢れていて
なんとなく嫌だな、とかなんとなくこうかな、と思ったことが
実は的を射ているということは結構あるものだ。

日常を本能に従い、良いものを選び取って間違えずに生きていくことは
誰の邪魔がなくとも実は難しい。


2017.9.2 再読
生々しさが、前回よりも受け入れ難い気持ちが出てきていて、
共感まではいけない部分があった。
日本だから駄目、ということはないはず。
なぜ母親がいるのにもうひとり母親を欲するのか。昔と違ってなにもこらえてないのに母親だけは求める
というのは苦笑しつつ頷いてしまうし
剥製についての考えは同じだと思う。

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2017年09月03日

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