あらすじ
野蛮で残酷、時に繊細で芸術に過剰なまでの情熱を傾けるロシア人。日本と近く、欧米に憧れて近代化してきたという似通った過去も持つ。だが私達は、隣国の本性を知っていると言えるのか。欧米中心のヘゲモニーが崩れつつある今、世界はロシアが鍵の一つを再び握った。ロシアを知り理解し得なければ、今後日本は生き残れない。一九六〇年代からソ連・ロシアと深く関わってきた二人の作家が、文学、政治経済、宗教他あらゆる角度からロシアを分析。人間とは、国家とは、歴史とは、そして日本人とは何かを浮き彫りにしたスリリングな知の対論。
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Posted by ブクログ
五木寛之氏がこんなにソ連に通暁している作家だったとは恥ずかしながら知らなかった…!
初期の名作を知ることができて、それだけでも大収穫な一冊。
罪と罰のラスコーリニコフの名前は分離派ラスコーリニキからきていて、「ラスコーリニコフという名前の時点で、彼はもう斧を持って異常なことを行う人間に宿命づけられている。」なんて、『はじめに』に書いておいてくれないと全く分からないよ~~~そんな差別的な話を活字で明示できるわきゃぁないんだろうけど…!
Posted by ブクログ
ページめくってまず行間が空きすぎてるのにびっくり。これなら1時間で読めるわいと思ったら思いのほか内容は濃くて、特に最後のほう、哲学的な話になっていったあたりはすっかり引き込まれた。二人の知識人が実に素直に詩や自らの戦争体験への思いを語る貴重な書。異国の地で様々な経験を重ねた両名がここまで敬意を持って外国人の叙情に心を傾けることに感動。
Posted by ブクログ
佐藤優と五木寛之の対談本。
五木寛之さんがロシアに詳しいということはよく知らなかった。ロシア通として有名な佐藤さんが、五木さんの知識や経験に一目置いている感じがして、共に分かり合える部分と、二人それぞれの経験から見たロシアが紹介されていて、薄い本の割に内容が濃い印象だった。 ウクライナ戦争のロシアを見ていると、昔と変わらず一国で完結の考え方があり、周辺で何が起きようが他国に非難されようがお構いなし、唯我独尊の国という感じがする。だからこそロシアに嵌る人もいるのだろう。
Posted by ブクログ
前から、ロシアに縁のあるお二人のコラボがないかなと思っていましたが、夢の対談が実現し、楽しく読ませていただきました。
五木寛之さんの歴史の瞬間に立ち会う引きの強さや、一時の経験から時代を切るとる感覚の鋭さなどを改めて感じるとともに、佐藤優さんのあらゆる分野への知識の豊富さに驚きました。
これを読んで、そういえば随分前に、五木さんは仏教を勉強するために大学で勉強されてましたが、お二人の共通項として宗教もあるなあと気付きました。
また、他の切り口でもいつか対談して欲しいなと思いました。
Posted by ブクログ
日本人のロシアに対する昨今の関心の低さを憂う二人による博覧強記の対話。
ウクライナ問題を考える上で必要な教養と時代の理解。
ロシア市民にとって切っても切り離せない存在である詩と文学。
知られざる異端とされた宗教の歴史。(日本には”隠れ念仏”はあった)
現代の国際問題・外交問題の背景にある歴史や思想の理解を深める上で、近代文学をもっと触れようと思った。
Posted by ブクログ
ウクライナ侵攻によりロシアの存在感が高まる中、ロシアという国、ロシア人のものの考え方を知ることが大切である。
前書きには、「人間とは何かというテーマに対して、ロシアを切り口にして人間について語り合った。人間力をつけるための究極の実用書として活用してほしい。」とある。
テレビ映画「捕虜大隊・シュトラフバット」では、捕虜大隊は、下がったら撃ち殺される。諜報部隊のスメルシュは、狼藉を働いた囚人兵を打ち殺し、恐怖である。
ウクライナのクライは、辺境という意味。ロシアとウクライナでは、捉え方が違う。ウクライナ西部のガリツィア地方は、第二次世界大戦中はドイツについた。ロシアとは相入れない地域。ソ連時代はカナダに亡命し、現在はスボボタというネオナチ政党となっている。
スタロヴェールという、ロシア正教の分離派を理解しないと、ロシアは分からない。異端の人間学の、名前の由来か?
Posted by ブクログ
ロシアという国を正確に理解できる人が世の中にどれほどいるだろうか。勿論私にとってもロシアはよくわからない国の一つだ。プーチン大統領の目つきや喋り方をニュース映像から見ていると、鋭く威圧的な雰囲気が漂ってくる一方で、帯を締めて柔道で技を決めたり、乗馬する姿などは少年の様な純粋さを感じたりする。ウクライナへ侵攻して随分と日が経つが、大規模反転攻勢に出てから既に3ヶ月経過し、未だウクライナはロシアを追い出して領土奪還まで到達できていない。開戦当初経済封鎖などで早々に疲弊するだろうと思われたロシアも、ルーブルの急激な下げを一時的に受けただけで、現状でもまだまだ戦う力を失っていない。寧ろロシアに進出していた諸外国の拠点や製品を奪取できた分、中長期的に見ればロシアに益があった様にさえ見える。
ロシアの内情がどうなっているのか、真の姿が中々見えてこないのは、プーチンという人間自体が前述した様に。掴みどころがなく謎めいているせいだろうか。
本書は元外交官の佐藤優氏と「大河の一滴」で知られる作家の五木寛之氏との対談形式で、テーマは正に「ロシア」である。前者は外交官時代はロシア駐在官として、後者は著作に多くのロシア物を書いており、ロシア文学にも文化にも、社会にも人にも充分に触れてきた二人が、ロシア人の思考方法について考える。同国民が触れてきた文学や歴史文化、周辺諸国との関係性などから現代ロシア人がどの様に考えているか。
正にウクライナとの戦争中であり、その終結には独裁者プーチン大統領の意思・判断が重要な鍵を握る。現時点で70歳に満たない氏が当面ロシアおよび周辺国の行く末を決めるのは間違いない。本書でロシア人の文学的背景を学びつつ、日本国内でもどの様な人々がロシアについて語ってきたかを知る機会になるだろう。
Posted by ブクログ
ロシアに詳しい作家五木寛之と、元ロシア駐在の外交官佐藤優による、ロシアについての対談集。
面白かったので、対談の中で触れられている五木寛之の本とか、アウシュビッツに関する本を読んでみることにした。
Posted by ブクログ
ロシア通の二人が、自らの大変に基づき隣国ロシアに関する人間・歴史・宗教など様々な点を対談する。気になった文面はロシアはソ連が崩壊するまで、驚くべき読書大国であったこと。それは消費的な文化産業が入ってこなかったので、読書は普通の人の娯楽だったから。また国民が詩をものすごく愛する文化であることも興味深い。小学校高学年から高校までの教育の中で読本を暗唱するため、さらさらっと詩を暗唱するらしい。ロシア人の知り合いは少ないが、次の機会にはドストエフスキーとかトルストイを読んで付き合おうと邪に思った。
Posted by ブクログ
五木寛之の本はあまり読んだことがない。「さらばモスクワ愚連隊」「蒼ざめた馬を見よ」が世に出た頃は当方は小学低学年だったし、その後もこちらのストライクゾーンに打てる球がくることがなかった。近年は「親鸞」など仏教に関連した著作や探訪記を書かれているのは知っていたが、手を出していなかった。
佐藤氏が博識を披露する対談だろうと思ったが、五木氏が異端の信仰の口伝を収録しているとのエピソードに驚き。
アンタは宗教学者か民俗学者か!。五木氏への認識を改めなければ。
ロシア人については、残忍で極端な情熱家で詩人への尊敬が強いことが語られるが、ついていけないなあというのが正直な感想。ウクライナ、ポーランドのことも語られる。しかし、もうじき欧州が欧州でなくなると、大陸に多数を占めるをロシア、東欧への理解はもっと必要だな。
最近読んだ辻原登さんの本にもあった二葉亭四迷、「悪魔の歌」を翻訳して筑波で暗殺された五十嵐一、ドストエフスキーのことも話題になる。
知らないことも多くて、いろいろ考えさせられた。
廣松渉の本も読んでないなあ。
Posted by ブクログ
知識を得て、アウトプットするために読むのでないから、記憶をする作業は省き、しかし、興味ある事はそれを広げるために、やはり固有名詞の暗記が必要となる。こんな事を考えさせられたのは、やはり佐藤優の博覧強記ぶりを見せられたから、というのが本音の所。限られた時間の中で、幅広く事象を押さえるのは難しい。その点、僅かな期間の体験でリアルな小説を書き上げる五木寛之との対談は面白い。
タイトルの異端について、どう解釈すれば良いか。主に宗教における異端についてを取り扱った感が強いと感じる。信仰は一人で可能だが、宗教には、宗派としての組織が必要だ。組織において解釈が分かれれば、宗派を分かつ必要性が生じる。斯様に、宗教には、一時異端が生じ得る。同様に、派閥の分派段階、括り、定義からの異端が存在し得る。寺山修司という職業、のように。
大河の一滴のように、大局的な潮流における一滴を描いた五木寛之が、このタイトルを選んでいるのも面白い。