あらすじ
北海道の旭山動物園が上野動物園の入場者数を抜いて日本一に! 快挙の裏に隠された汗と涙の物語……。人間も動物も「自分らしさ」を見てもらいたい。人間は、「自分が誰にも負けないこと」を発揮できる場を与えられ、もしそれが、他人に評価されれば本当に嬉しい。それは、動物も同じである。ほかの動物にはない「自分だけが持つ能力」を発揮できる環境を提供して欲しいのである。――日本一の動物園はいかにして奇跡を起こしたのか? 驚異の復活に学ぶ、ビジネスモデルの原点。
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Posted by ブクログ
チェック項目10箇所。動物それぞれの能力を発揮できる行動展示を行うことで、動物がイキイキすることを、飼育する中で確認してきた。「動物園とは何をするところなのか」。「人の目でトラの見え方」と「シカの目で見たトラの見え方」が比較対照できるようになっている。ライオンやトラ、ヒョウといった、いわゆるネコ科に分類される動物は食料が十分得られないかもしれないという前提で、活動をしている。動物園のような場所で一種だけで暮らしていたら、自分の特性も分も、ほかの動物の素晴らしさも分からなくなってしまう。動物はすべて棲み分けで自然を共有している。「命」というのは、一度失われると取り返しがつかないという事実を知らなければ伝わったことにはならない。命に優劣はない、命は、等しくかけがえのないものなのである。「人間とは何か」に関する堪えも、他の動物を見て、「ああ、自分は人間なのだ」とわかり、安心する。「地獄とはやりたいことができないことだ。」
Posted by ブクログ
著者は旭山動物園元園長の小菅正夫さん。苦境にあった同園復活の立役者である。とにかくブレない姿勢が素晴らしい。
●動物園には「「レクリエーションの場」「教育の場」「自然保護の場」「調査・研究の場」の四つの役割がある」
動物園は単なる娯楽施設ではない。だから、来園者には動物の本来の姿を見せ、彼らの生きる地球環境についても考えてもらう。園内環境整備のため、そして、繁殖成功のための調査研究はけして怠らない。
●「動物も人間も「自分らしさ」が大切」
だから、動物には、自然に備わった個々の能力が最大限に発揮され、それが来園客に思う存分披露できる環境を提供する。スタッフに対しては、ビジョン共有は徹底的に行う。でも、細かい指示は与えない。あとは自分で考えさせ、自由にやらせる。失敗を恐れてはいけない。
動物園とは何であるか。よりよい動物園をつくるには何が必要なのか。こうした根本的な問題に対して明確な答えを持っているため、やることに迷いがないのである。
組織のあり方、そしてまた、人生の歩み方を考える上でも多くの示唆を与えてくれる一冊だと思う。
Posted by ブクログ
旭山動物園園長の手による、閉園の危機から日本一の動物園に躍進するまでの取組みの紹介や、社会において動物園が担うべき役割への提言。
実例や学識に基づいた内容で、豆知識としても面白いしすごく説得力もあります。
以下、印象に残ったところを箇条書き。
・動物園の4つの役割=レクリエーション、教育、自然保護、調査・研究
・不遇の時期に熟慮してこそ、予算を与えられたときに実行動として効果を発揮する
・老い、死を伝える、悲劇的なことを隠さない
・自分が人間であることを再確認する場所
以下、感じたことを箇条書き。
・リソースは限られていてもアイディアに限りはない。ありものの中でどう実現するか/チャンスが巡ってきたときにどう行動するか、頻繁に使われるフレーズだが「よく考える」ことが重要。
・こちらも頻出だが、「本質をとらえる」こと。動物の見せ方、動物自身がどうありたいか、動物園とは何か、旭山動物園が果たすべき役割とは・・。旭山動物園が成功した根幹には、旭山動物園の皆さんが自分たちの本質を熟考し、その存在意義を実現した点にあると思う。自分が提供すべきファンクションは何か、本質を捉える癖をつけるべき。
動物の内容盛りだくさんで、読書癖のない人でもすらすら読めると思います。
面白かった。