あらすじ
震災を始め、数多くの問題が起きている日本と世界。これらの問題の本質は何か、そして、今後どうなっていくのか……? 日本と世界を取り巻く諸問題について、著名経済学者である著者がわかりやすく説くのが本書である。「東日本大震災とその復興」「電力危機」「円高・円安」「LCC(格安航空会社)の台頭」「ウォール街のデモ」「ギリシャ問題とユーロ危機」「中国経済の過熱」「TPPを巡る議論」「企業の大型合併」「止まらないデフレ」「消費税増税の是非」……こうした日々のニュースを取り上げながら、単なる解説に留まらず、「そもそも何が問題か」が理解できる内容となっている。知識の整理にも、複雑な問題を考えるためのヒントにも。「自分の頭でニュースを理解したい」と考える人、必読の一冊!
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Posted by ブクログ
■経済
1.足もとの動きがみえないときは、遠い将来を見る
2.日本はデフレが続き、欧米とは物価の乖離が生じている。だから、名目で見えれば急速な円高が進んでいるように見えて実質ではそれほどの円高とも言えない
3.大きな震災を経験して、改めて確認されたことは、頼りになる隣人を多く持つことの重要性だ。日本の国内だけですべて完結させようとすれば、日本は巨大なリスクを抱えることになる
4.危機感が重要である。衰退した地域の商店街の再生を手がけている人が言っていた。商店街の復活に成功するポイントは、その商店街が立ち直れないくらい衰退していることであるそうだ。少しでも余力が残っているとエゴが出て、なかなかまとまらない
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経済学者による現在の日本経済の実態と進むべき方向性を説明した本。日経MJ等に連載されたコラムをまとめたもので、それぞれの文章は簡潔にまとめられている。著者の意見に同意。
「「日本人による日本人のための日本国内で閉じた産業や制度」だけを守ろうとすれば、日本社会は衰退するだけだ。経済困難に伴う失業や自殺の増加、税収不足による財政破綻、経済的低迷による日本国民の自信喪失。少し考えただけでも経済活力が失われることの問題点はいくつも思いつく」p6
「大災害からの復興は、国土や社会を元に戻すのではなく、21世紀の経済社会環境に合った社会を創造していくものでなくてはならない」p27
「(デフレなのは)過剰企業、過剰設備、過剰雇用の状況であり、モノあまりが激しいから」p30
「(「中所得国の罠」について)一人あたりのGDPが3000~6000ドルあたりの国を中所得国という。4300ドルの中国は中所得国である。韓国やシンガポールのように高所得国になれた国もあるが、世界的に見ればこれは例外で、多くの中所得国がそこから抜け出すことができずにいる」p104
「技術革新がこれだけ進んだこの時代に、日本の電力メーターではピーク利用とオフピーク利用をきちっと分けて計測できない」p160
「商店街の復活に成功するポイントは、その商店街が立ち直れないくらい衰退していることだ」p186
「生産性の高い企業ほど、海外へ出ていく傾向が強い。そして、海外への展開に積極的である企業ほど、実は国内での雇用を増やす傾向がある」p235
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日本と世界経済について知りたくて読書。
アベノミクスによって空元気状態の日本。急激な円安が今後の日本経済にどう影響してくのか考えつつ読書。元が短編コラムなので読みやすい。
来日する外国人が増えた。消費税は外国人も負担するという意味では、今後も中国や韓国に偏ることなくバランスよく外国人に日本を訪れてもらい日本へお金を落として欲しい。
航空業界、日本の空港のハブ化について興味深く読む。
本書で取り上げられてる成田とハブ化政策と関西をLCC拠点にして活性化するなどは進みつつあるが、チャンギやフランクフルトと比べるとまだまだという印象を受ける。
那覇空港をアジアの物流ハブ構想は、以前から注目しているが、現在はどうなっているのだろうか。沖縄の魅力アップ、活性化させることは沖縄を守るためにも有効だと思う。
確かに香港のスーパーを覗くと肉や米、野菜、果物、菓子にいたるまで日本製品であふれている。国家が特別な制約や規制を加えずに普通に経済活動をすると日本製品のファンが増えるのが世界の現実だと思う。もっと日本のサービスや商品を沖縄を経由して積極的にアジアへ広げることは日本が緩やかでもいいので成長を取り戻す有効な手段だと思う。
マクロ経済学は学生時代のゼミで学んでいたが改めて面白い学問、考え方でまた学びたくなる。
読書時間:約50分
本書は日本領事館大連出張所でお借りしています。有り難うございます。
Posted by ブクログ
伊藤元重著「日本と世界の流れを読む経済学」PHPビジネス新書(2012)
*第一に強い関心をもっているのは日本がいつデフレ経済から脱却するのかという事である。アナリストによれば当分国債の金利上昇は起きないだろうとの見方が強い。理由として当分デフレが続くためだ。それならば、家計や企業から貯蓄資金が金融市場にながれこんでくるだろうし、それで国債も消化できる。また金利も低金利のままである。景気も回復しないので物価も下がり続けるという理論である。ただ本当にそうなのか?せかいてきな資源価格高騰も気になる。何よりも震災と電力危機が日本経済に環境を大きく買え、復興需要と電力不足による供給制約が需要に大きな影響を及ぼしたときいつまで価格下落が続くのだろうか?
*第二に少子化高齢化にどのように対応するのか?2025年にはその段階の世代が75歳を超える。医療費が増えてこの辺りから医療費の問題が深刻化されるだろう。この将来を見据えれば、消費税をあげる、年金の支給開始年齢をあげる、そして医療制度の抜本的な改革を行う。
*第三にアジア経済の成長をどの程度取り込むのか?アジアの成長と日本の人口縮小という事であれば、日本の社会を外に開いて行く事が必要なのは誰にでも分かる。TPPに参加すべきか否かという大きな論点は結果的にも、それを考えるきっかけづくりという点においても良い機会を持てた。
*ナシームニコラス「ブラックスワン」。欧州の人は黒鳥を見た事がなかったので白鳥は白いという事が常識であった。しかし、オーストラリアで一羽の黒鳥に遭遇した事でそれまで続いていた常識は覆された。911やアジア通貨危機、リーマンショックや関東大震災。早急な復興のためには政策なゆがみも是正して行かなければならない。
*復興財源を確保するためには復興税の導入も大切だが、国民すべてを巻き込んだ復興運動を立ち上げ、その贅沢な資金を復興に用いるという方法もある。具体的には消費税や燃料税を引き上げ、将来的には一般財源となるようにする。電力税も考慮できる。
*震災後、日本経済はどのように進むのだろうか?この20年近く日本はデフレギャップの中で過ごしている。デフレギャップとは、潜在的供給が需要を超過している状態である。これがあるから物価下落というデフレが起きる。中央銀行が貨幣を増発すればデフレは解消するという見方をする人もいるが需要が構造的に不足している中では難しいかもしれない。震災によって需要、増えると考えられる。インフラの復興や住宅の建設などはすべて需要の拡大となる。供給側では、電力やインフラ交通網も含め供給不足が心配される。そのように考えると超過供給という日本の現在のデフレ構造は過去のものになりつつあるように見える。ただ、もし超過供給から超過需要の状況に経済が動くのであれば、金利なども高くなって行く可能性がある。これは日本の財政に付加を与えるだろう。金利、物価、為替レートの動きに注意する必要がある。
*為替を読み解く視点として、「素人は為替レートを名目でみるが、プロは実質でみる」。日本はデフレが続き、欧米とは物価の乖離が続いている。だから名目でみれば急速な円高が進んでいるように見えて実質ではそれほどの円高とも言えない。この点が現状の把握で重要である。ただ海外からは突出した円高とは見られていない。デフレが長期間続いた日本においては実質レートは円安傾向となるためである。つまり、1995年にも1ドル=80円を切っていたが、そのときから現在までに日本の物価はあがっていない。しかしアメリカの物価は40%あがっている。この物価さを考慮すれば現在の円ドルの実質レートは、95年にくらべて30%以上の円安ということになる。つまりまだ円高の余地はあり得ると見ることができる。日本は他の欧米諸国にくらべデフレだがある意味安定した状況にはある。一般的にはより強い金融緩和政策をとっている国の通貨は値下がりする傾向がある。欧米の中央銀行が緩和姿勢を強める中で、日本銀行の政策が為替上の関連でも注目される。円高だと輸出産業に大きな打撃が与えられるが、一方で恩恵も被っている。特に、世界的な資源価格の口頭にもかかわらず資源輸入国の日本への影響が軽微におさえられていることは重要だ。今後円安方向に振れる事があれば資源価格の影響が日本を直撃する。それはデフレ下にある日本の経済に影響を及ぼすかもしれない。
*円高の時代にできるのは海外への投資である。円高のお陰で、海外の資産はバーゲンセールの状況である。この5年間で円ドルレートは120円前後から70円台に変化した。ユーロも160円台から100円前後まで動いている。欧州も、米国もその資産は40%近いバーゲンセールという事ができる。
*日本企業が直面する4重苦、1つは厳しすぎる解雇規制による高い労働コスト、2つには高い法人税、3つに日本が主要国とEPA、FTAを締結する事ができない一方、韓国などが積極的に自由貿易協定を締結して行き将来的に日本からの輸出関税などで不利になるという点。4つに円高である。震災によって忘れ去られた感のある法人税率の引き下げ、そしてTPP問題。日本企業成長のためにはそれらに真剣に取り組む事が重要である。
*大型合併による競争力の強化は是か非か。経済学的には、国際競争力強化のメリットと、国内の独占力増大のデメリットどちらが大きいのかは分からない。韓国企業のデータから見る限り国内で高い利益をあげて海外では利益を度外視した売上拡大を行っているという構図がある。つまり、売上で見れば海外比率が高いのに、利益でみると国内割合が圧倒的に大きい。大型合併によって規模の経済性を生かしてグローバル競争を有利に運べば海外から多くの利益を国民経済に還元できる。雇用を維持する上でも国際競争力の強化は重要である。一方で、国内に巨大な企業ができて価格を引き上げるような事があれば国内のユーザーへの負担が大きくなる。
*デフレ的な雰囲気が蔓延する中で、どのような付加価値をつけて商品を値上げできるかが企業には問われている。
*問題なのは自動車や家電などの日本経済を支えてきた産業が海外に出て行く事なのではなく、次の産業が育ってこない事である。
*リチャードセイラー、キャスサンスティーンによる「実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択」(日経BP社)。オランダのスキポール空港で男性の小便用の真ん中にハエの模様をつけておいた。すると便器外にこぼれる小便の量が80%減ったとのこと。この事例は細かなあまり重要でないように見える仕掛けが実は人々の行動に大きな影響を及ぼすという事である。
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伊藤元重氏と大前研一氏、今の日本の国政や世論の方向はこの両者の指南する通りに動いているのではないだろうか、とまで思えるほど語られる論点が今の動向とピッタリ合っている。
今の航空行政、エネルギー行政、国際金融、農業規制改革、TPP議論への明快な論点を提示してくれる。
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毎度、伊藤元重先生の著書は論旨が明確で分かりやすい。
特に為替についての論調が好きだ。なぜ日本は円高なのか、円高の時には我々は何をすべきか、共感できる部分が多い。
しかし、この本は雑誌や新聞でのコラムを編集したものとのことなので、章によっては少し深みに欠けるところもあるように思う。
Posted by ブクログ
この本は2010、2011年について書かれた本であるが、その内容は今の世の中が、直面している問題や議論している問題であるTPPや消費税の増税について取り上げている。最新のニュースが過去に書かれた本で問題視されていると、政府の対応の遅さを感じた。
または、、それだけ重要なことで、議論のしがいがある問題なのかなと思った。
Posted by ブクログ
前著に続いて読んでみました。
新聞連載をまとめたものなので著者が書いているとおり現在と照らし合わせると多少おかしなところも含まれますが、基本的には違和感なく仕上がっている印象。
特に震災前後の記事は生々しく当時の不安感を思い出すに足る内容でした。いずれにしても経済学がすでに通用しなくなっているということですな。
Posted by ブクログ
これといって新しいものではないですが、震災以降の流れをおさらいする意味ではいいのかも、著者は自民党の経済諮問会議のメンバー、来年からの活躍を期待します。
Posted by ブクログ
著者が連載してるコラムとかの記事をまとめたもの。経済学としてはあんまり目新しいものはなかったかな。日本はどうしたらいいかって全体的な著者の考えはおれが今思ってるのと変わらないし。
ただああゆう記事を連載するのは大変だろうなと思った。
Posted by ブクログ
東京大学経済学部教授の伊藤元重の現在直面している問題をわかりやすく解説しているコラムをまとめた一冊
とくに新しいことは書かれいていないけど、教授がフォーラムや客員としていろいろなとことで経験したことも含めてなにが問題なのかを説明し、それに対しての改善点や解決策を提示している
大学時代に読んだテキストの著者ということで、ついつい手にとってしまった一冊
Posted by ブクログ
現在の経済の動き、ユーロの動向、日本の産業の空洞化、税などをわかりやすく解説。新聞に書いてきたものをまとめているのだが、震災前に書いていることが今でも通じることだったり感心する。消費税は北欧は25%くらいあるのに、彼らは決して不幸になっていないと、たしかにそうだが、日本の場合、税金で集めたものがどのように使われるかそこに、不透明感があるので、不安なのだと思う。