あらすじ
商店街の脇道に佇む古ぼけた一軒屋は、年齢も職業も異なる人々が集い、手作りの料理を共に食べる“共同台所”だった。イジメに悩む女子高生、婚活に励むOL、人生を見失ったタイ人、妻への秘密を抱えたアラ還。ワケありの人々が巻き起こすドラマを通して明らかになる“すみっこごはん”の秘密とは!? 美味しい家庭料理と人々の温かな交流が心をときほぐす連作小説!
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Posted by ブクログ
タイトルと表紙の雰囲気が気に入ってジャケ読み!
大当たり!
チャプターごとに変わりゆく主人公の話がどれも気になるし、ほっこりさせてくれる。話しは連作だから繋がっていて、ご飯をおかわりするかの如くどんどんススム!あと、自分でも丁寧なご飯をしっかり作ってみたくなる効果付き。
続編というか、シリーズになっているようなのでまた続きも確保しないと!
Posted by ブクログ
すみっこごはんって名前の、夕飯時に集まった人達でレシピ通りのごはんを作ってみんなで食べる食堂みたいな不思議な場所。
店に置いてあるそのレシピ通りのメニューしか作れないルール。
偶然そこで出会って通う事になった人達一人一人の物語☆
あー最初はすごくイライラした話の始まり方でどうなることかと思ったけど、読後感めちゃくちゃほっこり♪
気になる謎も読み通りでスッキリしたし、どのお話もすごく良かった。
料理が嫌いな私が、昆布とかつおでしっかり出汁をとったお味噌汁を作りたくなってしまった。
そして調べて作って美味しかった☆
だしの素で作ったお味噌汁とはまた違った優しい味のお味噌汁で嬉しかった☆
他にも美味しそうな基本のメニューがいっぱい出てきて、しばらくお料理頑張れそう♬.*゚
調理実習みたいで、みんなで料理作るの楽しそう♬.*゚こんな場所あったらいいなぁ♡
まだまだ続きがあるのでしばらく楽しめそう☆
Posted by ブクログ
連作短編集。傑作である。
共同台所 すみっこごはん。素人が作るので、まずい時もあります。見知らぬ人たちが集まり、当日集まったメンバーがくじ引きをして料理当番を決める。集まった人がかわりばんこに夕飯を作り、みんなで食べる場所
悩みを抱える人たちが集まるあったかい場所。家庭とは違うホッとした場所、団欒がそこにはあった。そんなセーフティネットのような場所が、あったらなんて素敵なことなんだろう。
Posted by ブクログ
すみっこごはんという、年齢も性別も違う色々な人が集まって、くじ引きでご飯を作る人を決めてご飯を作り、みんなで食べるという場所のことが書かれた本。
本当に色々な人が集まり、その色々な人は心に何かしらの悩みを抱えていて。
最後にすみっこごはんの謎も明らかになるのですが、まだ知りたい謎もあり。(続き、ありますよね)
Posted by ブクログ
しんどいなと思ったとき、逃げられる居場所があるのっていいな。シェルターというほど大袈裟なものじゃないけど、何も聞かずに温かいごはんを一緒に作って食べる。普段は学校や職場、家庭でそれぞれ生活を全うしなくてはいけないけど、別のコミュニティがすみっこにあってもいいよね。
物語後半では、すみっこごはん設立の謎を追い始めるのですが、大体こういう話の鍵を握る人って、こういう性格してるよな〜と思った人がズバリそうでした。思わずにっこり。
レシピノートと永久予約席のひみつが明かされたとき、ほろりと涙しました。
Posted by ブクログ
おじいちゃんが助けに来た時は泣いちゃったな
各々の物語が日常的なんだけどドラマで
すみっこごはんの程よい距離感が居心地悪くさせず
老若男女、国籍問わず
皆で机を囲んでごはんを食べる
由佳さんの気持ちが入ったレシピノート、
考えただけて目頭が熱くなる
続編読むのも楽しみ
Posted by ブクログ
なんて切ないんだろう。
涙が止まらなくなってしまった。(今もまだ止まらない)
そうそう、これこれ私が求めていたのはこういう場所なのよ!と思いながら読んでいた。
中盤頃からもしかして?これはやっぱりもしかして?と思っていたらそうだった。
あの人もこの人もどの人にも感情移入できるなかなかに良い本だったけど、最後は切なくて。。。自分に置き換えたら入り込みすぎてしまった。
でもそれだけで終わらなくて良かった。
Posted by ブクログ
老若男女が集う共同台所のすみっこごはんには
心の中に闇や孤独を抱えた人が集まり、ごはんによって心の澱が解放されて自分らしく生きていきます。こんな場所が本当にあったら孤独や辛い想いをしている人の温かい避難所になりそうです
Posted by ブクログ
陰湿なイジメに会う女子高生、婚活や女子力とうまく付き合えなくて悩む会社員、すみっこごはん という場所はなぜ出来たか。
どんな人でもこの場所に出会えたらいいのに...
Posted by ブクログ
おー、どんでんがあったとは⁉︎
ただのハートフル料理小説(失礼)と気を抜いて読んでいただけに、驚きました。
なかなか良き!
…ゆうたんブログの続きが気になる。
Posted by ブクログ
その日お店に来た人たちが料理を作る、東京すみっこごはん。
いじめに遭い、学校に居場所がないカナや、婚活に悪戦苦闘していた奈央、態度も口も悪く、来れば文句ばかり言うのに何故か常連の柿本、最初は市民からのタレコミで監視目的で訪れた役所で働く丸本さん。それぞれの物語とすみっこごはんとの出会いを描く。
意外だったのは柿本さんが東京すみっこごはんの代表だったこと。それには驚くべき背景があってカナも深く関わっていた。
私も気兼ねなく誰かと食事ができるところ見つけたいなー。
Posted by ブクログ
面白かった。
最後の伏線回収にはびっくりした。
一人一人の悩みが結構深くて読んでるとちょっと苦しくなったけどやっぱりどんだけ悩んでてもご飯は食べなきゃなって思った。
まずは食べて元気出してそれから考える。
お腹減ってたらネガティヴになっちゃうよね。
家族じゃなくても一緒に食べると一人で食べるよりおいしいもんね。
団欒って素敵だなって思った。
Posted by ブクログ
悪くなかった。読み易い。
けど、シリーズものでこの後どう続くのか…
新しいお客を増やせばよいのかな?
1冊目で伏線回収してしまっていたので心配になった。
んー、でも食べ物がそんなに美味しそうじゃないんだよね、物語上不味いのがよく出てくるから全体の印象も美味しい料理がない…
Posted by ブクログ
生きていく上で様々な悩みを抱える、年齢も職業もばらばらな人たちが集まるのは、商店街の一角にある「すみっこごはん」。ここはくじ引きで料理当番が決まる共同台所。
立場の違う人たちが集まり、みんなで「いただきます」と手を合わせて、あたたかいご飯を食べる。個人の事情に無理に立ち入ったりはせず、他愛のない話をしてご飯を食べる。そして答えは見つからなくても明日を生きていこうと決意を新たにする。お互いに深く事情に関わることはなくとも、温かいごはんが悩み苦しむ心に満ちるところが魅力に満ちていた。
そしてすみっこごはんにある「レシピノート」には秘密が隠されており、短編の物語が連なり秘密が明かされるときには涙が止まらなかった。誰かと一緒にご飯を作って、誰かと共にご飯を食べる。そんなひとときが悩める心に染み渡る。
美味しいとは限らない、けれども温かな「すみっこごはん」の料理で心も体も癒やされる物語だった。
Posted by ブクログ
年齢も性別もはたまた国籍まで違う人達が集まってくじ引きで料理当番を決めるというシステムが面白いと思った。近くにこのような共同台所があったら毎日通いたい。渋柿こと柿本さんが最初は嫌味な人だと思っていたが実は人情味溢れる人ですみっこごはんの代表だったとは驚いた。
Posted by ブクログ
年齢や職業も異なる人々が集い、手作りの料理を共に作り食べるずみっこごはんは共同台所でした。わけありの人々それぞれの人生があり悩みもあるがそんな人々の背中を押してくれる温かな話でした。
Posted by ブクログ
仕事が忙しかったので、美味しい食べ物やホッとする小説を読みたくて選びました
くじでご飯を作る担当を決めるなんて、面白い!
私も料理が大得意ではないけれど、暮らしの支えは食事!
レシピがつなぐ、親子愛に感動
子供には楽しく料理ができる人になって欲しいと思いました
誰かが作ってくれるご飯って、最高!
主婦になって心からそう思います
Posted by ブクログ
あなたは『ただの定食屋さんだと思って入った』場所でいきなりこんなことを言われたとしたらどうするでしょうか?
『ここは、みんなが共同で使う台所なんです。…当日集まったメンバーがくじ引きをして、料理当番を決めることになっています』。
私たちが日々を生きる中では”食”は欠かせないものです。”外食派とお家派”というようにそんな食事をする場の好みは人それぞれであり、それをどう捉えるかはその人その人の価値観次第とも言えます。”食”を明日を生きるための活力と考えると、余計にそんな場を楽しみに生きるのは素晴らしいことだとも言えます。
しかし、よくよく考えると、私たちの生活の中で食するものは、プロの料理人が作ったものか、自分を含む家族の誰かが作ったものに限られると思います。普段、どんなに仲の良い人、それが友達や会社の同僚であっても、そんな関係の人たちが作ったものを食する機会はまずありません。ましてや、初めて出会った見ず知らずの人が作った食事など逆に怖くて口にするのも憚れると思います。明日を生きるための活力であるからこそ、私たちはそんな料理を作る人に全幅の信頼を寄せもするからです。
さて、ここに初めて出会った見ず知らずの人の作る食事を楽しむ場を舞台にした作品があります。『一 一ヶ月ごとに更新の会員制とします』等、十の約束事が提示された『共用台所』を舞台にするこの作品。美味しいそうな”食”の風景だけでなく、それを作る場面にもページが割かれるこの作品。そしてそれは、『どんな時でも、おいしいごはんを食べなさい。食べてさえいれば、何とかなるんだからね』という考え方の先に”食”を通じて繋がっていく人の優しさを感じる物語です。
『学校から帰って』きて『ただいまあ』と誰もいない家の中で一人声を出したのは主人公の沢渡楓(さわたり かえで)。『おじいちゃん』は『工房にでも籠もってるのかな?』と思いながら仏間へと入った楓は『お母さん、ただいま』と手を合わせます。『おじいちゃんの元で育った』楓は、自身が『まだお母さんのお腹の中にいる時に、両親は離婚してしま』い、一人で育ててくれた母親も『物心つく前に病気で亡く』なったと聞いて育ちました。そんな時『スマホがピコンと鳴った』ことに身構え画面を見ると『明日の放課後、246いかない?』と、『グループチャットに、真理亜からの書き込みが表示されてい』ます。『うちの高校の女子たちのたまり場』という『246』への誘いに次々に『行く行く』、『私も〜』と返事がなされる中に『私も、行きたいな』と書き込んだ楓。しかし、その後の真理亜の書き込みには『オッケー、ミヤ、紗季、明日香は参加ね』と楓の名前はありませんでした。『何を書いても』『スルーされ』、『書き込まなければ、一斉に攻撃される』という状況に『胸が捩れ』る楓は、ある夜に『うっかり眠ってしま』い、その時のやりとりに返信できなかったことをきっかけに『クラスから消えた』とその時のことを悔やみます。そして、『教室でも』『見えていない』ように扱われるようになった楓。そんな時、『楓、帰っているのか』とおじいちゃんがやってきました。『学校はどうだ?』と唐突に訊くおじいちゃんは『ぼっち飯、してるって?』と問いかけてきました。『誰かが入れ知恵したに違いな』いと思う楓は、『これから、友達と約束』があるので『晩ごはんもいらない』と言うと『逃げるように外へ出』ました。『よりによって、おじいちゃんに、ぼっち飯のことを知られたなんて』と思う楓は、一方で『お腹、空いた』と思いながら『ふらふらと路地の奥へと、誘い込まれるように進』みます。そんな時、ある一軒の家に、『不思議と目が吸い寄せられ』ます。『すみっこごはん?』、看板を見て『普通の民家だけど、どうやら定食屋か何からしい』と思う楓は、もう一度、看板をよく見ます。『共同台所 すみっこごはん ※素人がつくるので、まずい時もあります。』という記載に『何、ここ』と不思議に思う楓。そんな時、『あれ、参加希望の方ですか?』と『色白のおじさん』が現れました。『今日はもう締め切った』が『まだ調整できるかもしれない』と言われ『いや、私は別に』と慌てる楓。そんな楓に『大丈夫のようです』と言うおじさんに促され楓は中に入りました。『初めての方は、材料費の三〇〇円しかいただいてい』ないと言われた楓。『今日の料理当番は、一流の板前さんです。それはもう、とろけるように美味しいクリームコロッケが食べられますよ』とおじさんににっこり笑いかけられ『失礼ですがお名前は』と訊かれ『新手の宗教団体か何かなのかもしれない』と焦ります。そして、偶然にも訪れることになった『すみっこごはん』の場で『美味しいって、不思議だ…気持ちが満たされて、力が湧いてくる』と楓の心がときほぐされていく物語が描かれていきます…という最初の短編〈いい味だしてる女の子〉。いじめを扱う神経戦の物語の中に『すみっこごはん』というなんだかワクワクする場の存在を上手く対比させていく好編でした。
『ここは、みんなで集まり、当番に選ばれた誰かの手作りごはんを食べる場所です』。
そんな説明と共に物語冒頭に十ヶ条からなる『すみっこごはんのルール』がまず提示されることから始まるこの作品。『共用台所 すみっこごはん』を舞台に五つの短編が連作短編を構成する物語です。書名に『ごはん』と入っていることから、”食”のシーンが登場するであろうことが予測される物語は、内容紹介にも”美味しい家庭料理と人々の温かな交流が心をときほぐす連作小説!”と、想像される通りの物語が展開することが示されてもいます。”食”を扱った小説は多々あり、”お仕事小説”と並んで私にとっては大好きな分野です。小川糸さん「あつあつを召し上がれ」、原田ひ香さん「ランチ酒」、そして伊吹有喜さん「オムライス日和」など”食”を扱った作品の特徴は、美味しそうな”食”の描写が登場し、何かに思い悩んでいた主人公の心がときほぐされ、それによって次に進むための起点となっていく、そんな舞台が描かれるのが定番です。成田さんのこの作品でもそんな定番な展開は期待に違わず存在します。では、まずはそんな”食”の描写から見てみたいと思います。〈団欒の肉じゃが〉で『みんなで、いただきます、と手を合わせた』という場面です。
『ごろりとしたじゃがいもや人参、糸こんにゃくなどで、それぞれがうまそうに照り輝いていた』と『たっぷりとよそわれた肉じゃが』。『立ち上る湯気は、ほんのりとした甘味を伴っている』のを見て『見る間に唾がわいた』という主人公。『丼に手を伸ばして、じゃがいもに箸を入れ』ると『割れ目から、さらに湯気が上』がります。そして、『軽く冷ましながらそっと嚙んでみると、ほっくりと煮崩れたじゃがいもが、甘じょっぱい出汁といっしょに、ふんわりと口の中を満たしていった』と表現されるその味わい。『まるで昨日煮込んで一度冷ましたように、しっかりと味が染みこんでいる』という『肉じゃが』に感銘を受けた主人公は思わず『どうしてこんなに味が染みこんでるんですか』とその秘訣に興味が湧きます。
なんだか無性に『肉じゃが』が食べたくなってもくるこの絶妙な表現。やはり、”食”を取り扱った作品は良いなあ、とじわっと物語に浸ることのできる表現の上手さがそこにあります。
そんなこの作品は他の”食”を扱った作品と比べて一つの大きな特徴を持っています。それこそが、冒頭に示される十ヶ条の『すみっこごはんのルール』によって半ば自動的に展開する物語の流れです。それが分かる条文を抜き出します。
・『三 受付は五時半まで。三名以上、六名以下で実施とします』。
・『四 くじで当たりを引いた人が、その日の料理当番です』。
・『五 当番は、レシピノートから好きなメニューを選んでつくりましょう。その時、なるべくレシピ通りにつくってください。必ず野菜を入れること』。
これは、『すみっこごはん』が”レストラン”ではなく『共同台所』という位置づけだからこそ生じる事情ですが、このことが、今までに読んだことのないオリジナリティ溢れるこの作品ならではの物語を誕生させます。そう、『集まった人が、かわりばんこに夕飯をつくって、みんなで食べる場所』という『すみっこごはん』。だからこそ、『※素人がつくるので、まずい時もあります』という注意書きがご愛嬌で入る理由があるわけです。
では、それぞれに美味しそうな”食”が登場する五つの短編について簡単に触れておきましょう。
・〈いい味だしてる女の子〉: 沢渡楓が主人公。『クリームコロッケ』、『味噌汁』。高校でいじめの標的にされ学校で居場所のない楓は、おじいちゃんとの二人暮らしの中に、あるものを見つけたことで家にも居場所がないと感じる日々を送ります。そんな中に偶然にも『すみっこごはん』を訪れた楓は、そこに安らぎを感じていきます。
・〈婚活ハンバーグ〉: 三森奈央が主人公。『ハンバーグ』。『仕事も一生懸命なわけじゃないし、ずいぶんと宙ぶらりんなまま、三十五歳』という中に会社での毎日を送る奈央は『すみっこごはん』で一緒に過ごす田上から婚活雑誌を押し付けられます。そして、自宅に帰り、『Qネット恋愛結婚』というサイトにアクセスした奈央は…。
・〈団欒の肉じゃが〉: ジェップが主人公。『肉じゃが』。『ここは平和な国だ。そして留学先に選んだこの国のことが、僕は嫌いだ』というジェップは『おまたすしまたあ。またくしくださませえ』と慣れない日本語を駆使しながらコンビニでバイトをしつつ日本語学校に通います。そんな中に『すみっこごはん』へと訪れることになり…。
・〈アラ環おやじのパスタ〉: 丸山が主人公。『ナポリタン』。『区民相談窓口』で働く丸山は『すみっこごはんと称する怪しげな店』への投書に対応する中『すみっこごはん』に関わりを持っていきます。そんな丸山は毎日更新される『ゆうたんの凸凹な日常』という『都内某所でOLをしている』女性のブログにハマっていきます…。
・〈楓のレシピノート〉: 『レシピノート』に隠された謎に触れる物語。ネタバレになるのでここまで(笑)。
五つの短編は、いじめの標的にされる高校生、アラフォーの自身を見つめるOL、自分の生きる意味を考えるタイからの留学生、そして妻に内緒でOLのブログにはまるアラ還の男性…と性別、年齢、さらには国籍までも変化させる凝った作りとなっていて、常に新鮮な感情の中に読み進めることができます。一方で、いじめを扱う小説は多々ありますし、独身女性が焦りの感情に苛まれる小説も他にありますが、留学生を登場させる物語は、私にとって初体験です。祖国で貧しい生活に喘ぐ妹と祖母のために仕送りをしていた主人公ですが、状況の変化によりその必要がなくなった今を生きています。そんな中に『僕は、なんのためにここにいるんだろう』と『ずるずるとこの日本で月日が過ぎていく』のを感じる主人公。『ホストファミリー』との関係性を描く部分、片言の日本語を揶揄され見下される日々を描く部分など、この短編に描かれる物語は、なかなかに痛烈なこの国のさもありなんな環境を描いていきます。それぞれに主人公たちの思い悩む様子が描かれていく物語はなかなかに深いものを見せてくれました。
そんな五つの物語を繋ぐ存在、それが『すみっこごはん』です。『受付は五時半まで。三名以上、六名以下で実施』という条件から各短編によっても、その短編の中でもその日の面々は異なっていきます。しかし、短編ごとの主人公の交代によって、〈いい味だしてる女の子〉で主人公の楓(『すみっこごはん』では、カナという名)も他の短編では、『やさしいカナちゃんも沈黙して』、『カナちゃんも、もりもりと食べてくれている』といった風に連作短編らしく視点の先に登場します。この辺りは連作短編という構成をとても上手く活かした作りですが、そんな場で明示はされていないもののもう一つのルールが存在します。それこそが、
『すみっこごはんでは、個人の事情に無理に立ち入らないのが暗黙のルールだ。この場所に集まった他人同士が、他愛のない話をしながら、美味しくごはんを食べておしまい』。
というものです。これこそが、さまざまな年代の人たちが集う『すみっこごはん』の最大の魅力であり、結果としてこんな効果を生んでいきます。
『飲みやすいほうじ茶みたいな、適温の人間関係が保たれている』。
まさかの『ほうじ茶』に比喩する表現ですが、成田さんのおっしゃりたいことはどことなくわかります。そして、そんな居心地の良い場所で出される素朴な料理の数々。『自分のためだけのメモって感じじゃなく、人に伝えるためのノート』という謎を秘めたレシピがそんな料理の味を深めてもいく中に描かれていく心地良い時間。この作品はそれぞれの主人公たちが苦闘する物語と、この『すみっこごはん』での心地よい時間の絶妙なブレンドがなんとも言えない味わいの良さを作り出しているのだと思いました。
『この世界は大きな鍋で、人は昆布や鰹節みたいなものかもしれない。みんな、それぞれの味を出しながら、世界という一つの大きな味をつくって暮らしているのだ』。
『お味噌汁』を作る楓がそんな”食”の場面を人の暮らしに比喩する素敵な表現の登場など、成田さんの気の利いた表現の数々にも心囚われるこの作品。そこには、『すみっこごはん』という場にその日その日に集った面々が調理した料理を食す光景が”食”の魅力たっぷりに描かれていました。十ヶ条のルールの提示が見晴らしの良い読書に上手く導くこの作品。さまざまな人物が主人公となることによって、誰もが何かしら思い悩む人生を送っていることを絶妙に浮き彫りにしていくこの作品。
極めて読後感の良い物語の中に、人と人とが繋がっていく連作短編の魅力を上手く生かした素晴らしい作品でした。
Posted by ブクログ
近場でまとまったキセキというか偶然というか。
あのヒトが参加していたのはそういう理由ね、というのは納得かな。
偽名を名乗った成り行きはちょっとしっくりこないけど。
それでも心があたたかくなる結末にはほっとした。
Posted by ブクログ
様々な悩みや秘密を持った年齢も職業も異なる人たちが、商店街の脇道に佇む一軒家に集まって、手作りの料理を共に食べる共同台所を舞台にしたお話し。
美味しい家庭料理がお話の真ん中にあるので、読んでいてすごくほっこりするストーリーだった。
なんと言ってもお料理の描写がとっても美味しそうで、本当に目の前に出されたような感覚になってお腹が空く空く。笑
特に私の胃を掴んだのは、団欒の肉じゃがに出てくる肉じゃがを、タイ人留学生のジェップくんが食べるシーン。
僕は丼に手を伸ばして、じゃがいもに箸を入れた。
割れ目から、さらに湯気が上る。
軽く冷ましながらそっと噛んでみると、ほっくりと煮崩れたじゃがいもが、甘じょっぱい出汁といっしょに、ふんわりと口の中を満たしていった。
ほこほことして、味がしっかりと染み込んだじゃがいも…このときのジェップくんの状態とも相まって、想像しただけでたまらなかった…。
世の中には美味しい食べ物がたくさん溢れているけれど、家庭料理に勝るものなし。
読んでるだけで心の栄養になるような家庭料理と、温かい登場人物たちに癒された1冊でした。
Posted by ブクログ
やっと読みましたー
この頃はこう言った“ごはん”“癒し”系の書物が溢れていますね。みんな癒しを求めているんです。
登場人物それぞれの出来事から、ぐるぐる回って収まった感じです。
このお店に出会って少しづつ幸せに向かって変化していく人達のお話。
Posted by ブクログ
展開は早くて、読みやすい。
いじめやセクハラ、外国籍の表現にもやもやしてしまい、途中で挫折しかけた。
終わり方がとても良く、まとまった一冊でした。
Posted by ブクログ
ザ・エンタメ小説!
気楽に読める、いわゆる「ほっこりする」系かな。
私はもうトウが立ってしまって、なかなか素直にほっこりできにくいのですが笑、時にはこういう系も楽しいなと思いました。