【感想・ネタバレ】ワンダーリングのレビュー

あらすじ

七つの年にラスベガスのカジノで拾われた芦原雪。自分を拾ったシンガポール華人の令輝から徹底的にルーレットを仕込まれ、雪は一流の腕を持つまでになる。厳しい育ての親とは対照的に、“雪”に名前をつけ、無条件に甘やかそうとするのが令輝の腹違いの弟、藤堂だった。雪にはそれが煩わしくて仕方ない。現在は藤堂が社長を務める東京の公営カジノで働く雪だが、どんなに素っ気なくしても藤堂の態度は変わらず…?

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『ノーモアベット』で大人の余裕を見せていた藤堂と飄々として掴みどころのないディーラー芦原のスピンオフ。ラスベガスのカジノで藤堂の兄に拾われた芦原。思いもよらないプレゼントみたいに喜んで、“雪”と名付け、年の離れた弟みたいに可愛がろうとする藤堂。まっとうな教育と暖かい家族の愛情を与えて、堅気の人間として幸せになって欲しいと心を砕く藤堂の思惑とは裏腹に、雪はルーレットに取り憑かれていく。愛情を与えたいと手を差し伸べてくる藤堂が疎ましい。腹が立つ。大嫌いだ。会えばついケンカ越しになって、お互いひどく勘に触るのに、それでも磁石みたいに引き寄せられてしまう。
スマートでクールでそつがない雪よりも、結果一枚上手だった藤堂のどこか執念めいた愛情。
健やかで、鷹揚で、大人の懐の深さを見せつける藤堂も雪だけには余裕をなくしてしまう。本音など穏やかに貼りつけた笑顔でコーティングして、誰にものめりこまない、他人になんて全く興味がないスタンスを貫いている雪も藤堂だけには露骨にか嫌悪を露わにしてしまう。
逸や一哉の前では余裕な藤堂が雪にだけは振り回されてしまうのも何だか微笑ましかったし、嫌い嫌いと逃げ回っていても結果自分より藤堂を大切にしている雪も何だか健気でかわいくて、両想いの甘ったるさは皆無なのだけど、これはこれでいいんだなと思う。
カジノという非現実的世界を小気味よく描くテンポの良さも、家族の愛憎劇もさらりと読ませてしまう軽妙さも、一穂さんの文章はやっぱり好きだな~

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2014年07月20日

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