あらすじ
2月10日午前5時、JR関東の運転士の時計が、ケーブルテレビの放送が、そして精密機械工場の時間が、すべて15秒遅れ、その結果として2人が死んだ。なぜ因果関係のないそれぞれの時間がそれぞれ15秒遅れたのか? 犯人は何のために、どうやって時間を動かしたのか? 最注目の作家が描く傑作ミステリー!
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Posted by ブクログ
午前5時を期して 時間が15秒遅れた。
発端はたったそれだけのことだった。
それによって人が死ぬなどということは 誰が考え得ただろうか。しかし たしかにそのたった15秒によって何人もの人間が命を落としたのである。
そもそも時間とはどこで誰が決めるのか?
電話やテレビなどの時報もすべてが正確に一致しているわけではないと言う。時計を見せずに生活させると 人間は一日を25時間として動くようになるとも言われる。時間とは一体何なのだろう。
こんなにも不確かであるにもかかわらず 日常からなくすことのできない時間というものを 乗っ取ることができるとしたら 人はどうするだろうか。そして時間を乗っ取られたら世界はどうなってしまうのか。
限りなく荒唐無稽で観念的な「時間」というものが素材とされながら 鉄道・ケーブルテレビ・病院というきわめて日常的な場面として描かれているのが いっそう不気味さを掻き立てる。
足もとを掬われそうな一冊である。