【感想・ネタバレ】チェンジング・ブルー 気候変動の謎に迫るのレビュー

あらすじ

温暖化の背後から静かに、しかし確実に聴こえてくる気候変動の足音。地球は、これまでどう変わってきたのか。これからどう変わってゆくのか。その謎の解明にいどむ科学者たちのドラマを、スリリングなストーリー展開で描く。日本の科学ノンフィクションに新たな地平をひらいた、講談社科学出版賞受賞作。(解説=成毛眞)

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Posted by ブクログ

気候変動が社会の重要アジェンダになって久しいが、その議論レベルは果たして進歩しているのだろうか?
初版から15年以上経って初読したが、少なくともこれまで読んだ気候変動を題材にした本の中でダントツである。
政治ではなく科学として議論されることがいかに重要かがよくわかるし、逆にこの水準の書籍がどんどん出てくるようにならないと、この課題は先に進まない気がする。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

あとがきにも書かれているが、一般向けの気候変動を扱う本で、ここまで深く気候変動の科学史を追っている本は稀有だと思う。気候変動理論は常に科学的挑戦を受けてきて、その科学的ロバスト性は新しい理論とともに紡がれてきている。今後新たな理論が、既存の理論を覆す可能性がないわけではなく、そういう理論を頭越しに否定するのではなく、科学的に評価していきたいと思う。

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2025年03月17日

Posted by ブクログ

気候変動に関する研究とそれが生み出されてきた歴史について描かれる骨太な科学読み物。

正直なところ、すべて理解できた訳ではないが、そてでもとても面白く書かれていて、多少飛ばし読みしてもついて行くことは出来た。

地球の過去の温度がどう推定されてきたのか、地球の温度はどうして変化するのか、その変化はどの程度のスパンで起こるのかなど、素人にも分かりやすく説明される。

読み終えると、なんだか賢くなった気がする一冊だった。

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2022年05月22日

Posted by ブクログ

気候変動というと、センセーショナルな話題とか、社会的経済的側面からのやや感情的な話題とか、そういうのが多い気がするが、この本はそういったものとは一線を画す。
今だけに限らず長期的な視点でとらえているのと、科学的な見地から冷静に気候変動現象を解説しているところがよい。

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2022年04月11日

Posted by ブクログ

正直な所、環境問題に対して意識無かったのだが、若い世代のSDGs熱を感じつつ、満ち足りた世代の興味が行く先で、自分には関係無いとさえ思っていたが、最近読んだイーロンマスクの本で、彼が猛烈に環境問題への意識が高くて更にビジネスとして成立させている様をみて、環境に関する本をあたってみるかと検索してこの本を手に取ってみた。
読み始めると海の底に降り積もったプランクトンの死骸(有孔虫の殻)の成分に含まれる酸素同位体の比率から大昔の気温を調べるアイデアまで一気に述べられる。水温と殻に含まれる酸素同位体には実験の結果相関がある事が突き止められて、大昔に水温の大きく変動した時代が存在する事が証明されたと… そこからは巨大氷床、地球の自転と降り注ぐ太陽エネルギーとバランス、温室効果ガスとあって、気候変動のスイッチとして海洋深層水と氷河(主にグリーンランドをはじめとした北半球)、南極大陸での分析。 

第11章の気候変動のスイッチの章では、2021年にノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏が、「大気と海洋を全地球スケールで小さな均質な箱に切り分けて気候変動を予測する方法論(大循環モデル)を確立したパイオニアとして紹介されている。

第12章の気候変動のクロニクルでは、中世温暖期と小氷期という文字や絵で記録が残る時代に起きた気候変動も触れられていて、とにかく内容の幅が広い。

一回読んだくらいでは、とても理解しきれない内容なので、そう言う点で何回も読むとより楽しめる部類の本だと思う。
気候変動と聞いて海洋深層水の話なんか絡んでくると今の自分達の世界が如何に絶妙なバランスの上で成立しているのかと思いながら、イーロンマスクが火星に行くしかねーって言う発想になるのも、なんとなくほんの少し分かる様な気がする??火星で生き延びる術が確立されれば、地球のバランスが崩れて氷河期になったとしても生き残れる可能性あるかも知れんし…

少し時が経ってからまた読みたい本。

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2021年12月21日

Posted by ブクログ

気候変動のシステムの解明を目指す、一世紀にも渡る科学者達の成果をまとめた本。何故過去数万年の気温を推定することができるのか、目前に生じ得る地球温暖化のイベントとは何か、その答えが分かる、、、?

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2021年01月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

観測が出来得るまでの範囲で古気候の変遷を解き明かしていくことで、
地球の気候システムのメカニズムに迫ることができる。

ここ100年くらいの間で、
気候の科学分野で業績を積んできた数々の科学者たちのストーリーを辿りながら、
この本が書かれた2007年までで最先端の、
気候についての知見を知っていく内容になっています。
とてもおもしろく、かつ、学べます。
ここ一年くらいでもっともお薦めしたい本でした。

現在は完新世と呼ばれる、氷河期を抜けた温暖な間氷期です。
10万年周期で移り変わるという説があり、
ミランコビッチ・フォーシングという理論がもとになっている。
この理論は、地球の公転するわずかな歪み(離心率)、
自転が一定ではなく、首振りの軌道の元で動いていること(歳差運動)、
自転軸の傾きの変化、の三つを合わせて考えたことで導き出されたもので、
このミランコビッチ・フォーシングによって地球の気候は変化する、と唱えられました。

これはこれで気候変動の一部を解き明かしていますが、
さらに海洋深層流が気候をつくる大きなカギになっていると、
気候変動分野の科学者である著者は解説していきます。
北大西洋のあたりから始まる海洋深層流がなければ、
たとえばロンドンなどは年平均気温は10℃以上も下がっているはずだそう。
この海洋深層流は北大西洋で、
氷結などの理由で塩分濃度が濃くなった海水が深層に沈み込んで起こるのが
主な理由だそうです。
深層流によって表層の海流も変わり、
理論上はもっと寒冷なはずの地球環境を温暖にしている。

本書では、その他に二酸化炭素の濃度についても触れていますし、
最後の部分で短くではありますが、
昨今の地球温暖化について、気候学者が何を恐れているか
についても端的に述べていて、
本書をそこまで読んできた者であれば、
非常に腑に落ちます。

また、本書の大部分にあたりますが、
多くページを割かれているのは、
科学者たちの技術を革新したさまや、
調査がどのようなものかといったところです。
海底堆積物や、氷の掘削(アイスコアの発掘)で古気候を分析しているのですが、
その詳しいやり方やそれで解析できる論理を丁寧に、
そして読者を飽きさせないおもしろさで説明してくれています。

まるごと読んでみて、
もともと地球温暖化に興味があった僕ですから、
では今後、気候はどうなるのだ!? と結論を持ちたくなってくる。
僕がどのくらい昔から環境問題に興味を持ったかというと、
緑色のドラえもん(グリーン・ドラえもん)のカード型バッチを胸につけて、
地球を大切にしなきゃ! と同級生に地球の危機を説いていた
小学4年生頃に遡ることになるくらいです。
たしか、先生から、今度、温暖化に関する世界的機関ができるから、
となだめられたのですが、それがたぶんIPCCなんです。

それで、今回この本を読んでみて、
このまま温暖化していって、気象予報番組がだす100年後の予想気温が現実になるのか、
それとも、一部でささやかれている寒冷化が実現するのか、
もしくは、今までの気候の常識に当てはまらない未知の気候に移るのか、
いろいろ考えてみました。
一番シンプルというか、安易な推測は、
南極やグリーンランドの氷床が融解するまで温暖化して、
その後、融解水を取りこんだ北大西洋の深層流に変化が生じて、
寒冷化がはじまる、といったものです。
この場合、寒冷化するまでに海面上昇が避けられないので、
危惧されているように、沿岸の大都市や海抜の低い国では大きな被害がでそうです。
ただやっぱり気候は複雑なものですし、
大体、ここまで人間活動という
非自然的な作用で二酸化炭素濃度があがってしまっていますから、
これまでの気候サイクルのルールにそった変化ってするのかなあと疑問符が浮かびます。
それに、北大西洋に融水が流入していって
海洋深層水が変化する都合で寒冷化するはずのところで
温暖化した時代が実際にあったそうで、
それは理由がわかっていない。

こういうことからして、
気候が暴走してしまう段階に到達するのを助長するような真似を
人類はしないほうが賢明なのは明らかなんですよねえ。
気候がおかしくなるかな? ならないかな? 
とロシアン・ルーレットで遊んでいると喩えている科学者がいるんですが、
まったく、遊んでどうする、と思います。
これも経済活動、という名の、
人間の欲望に突き動かされているところが大きいのでしょう。

もう、高校の教科書にしてほしいくらい良書。
みんな読んでみて! っていいたいです。
★評価は満点です。

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2020年03月01日

Posted by ブクログ

地球温暖化、異常気象という単語は誰もが耳にしたことがあると思います。これらの現象を研究対象とする科学がどのように進歩してきたかを辿る科学ノンフィクションです。
誇大に危機感を煽るような書き方を一切廃し、気候変動をどのような方法で観測し、研究を積み重ねて来たのかを分かり易い文章で解説しています。取り扱うテーマは非常に広範で、地球の軌道や太陽活動に関する天文学、南極やグリーンランドの氷から過去の気候を研究する気候学、化石などの試料の年代を放射性同位体の性質を利用して特定する分析法、過去の気候を定量的に評価する古気候学などの基本的な考え方や過去の研究者の試行錯誤の様子の人間ドラマも交えて描いています。
このような科学読み物は海外で出版されたものが翻訳されるケースが多い中、本書は日本人の著者による作品だけあって文章が非常に読みやすく、その表現方法も教科書的な無味乾燥な文章ではなくて、小説を読むかのような印象を受けます。今の地球が抱えるリスクや、自然科学の研究とはどのようなものか、著者の言葉は端的に表現しており、以下に抜粋します。
「人類が放出した温室効果ガスが温暖化の原因であることが証明できないとしても、このまま放出を継続することは我々の気候に対して危険なロシアンルーレットで遊んでいるようなものだ」、「今年も去年と同じだけの雨が降り、3年前と同じような気温で、10年前と同じような海面の高さである事、これらのことに私たちはもっと感謝しなければならない」、「研究成果だけをつなげたストーリーは研究の本当の姿を物語っていない。自然科学の最先端とは、無数の袋小路に潜む立った一筋の抜け道を探り出す孤独な旅である」」
文庫本で約400ページの大作ですが、情報量、トピックスの掘り下げ度合いともに新書とは比較にならないほど充実しています。気候変動についてマスメディアで紹介されるよりもより本質的な真実を知りたい社会人、理系の大学を進路に考えている高校生などに特にお勧めしたい1冊です。

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2018年04月07日

Posted by ブクログ

地球温暖化がCO2の増加だけが影響していると思っている人に読んでもらいたいかな。
ミランコビッチ・サイクル、海洋深層水の動きや火山の噴火等々、色々な研究結果から地球温暖化について考えさせられる本。

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2015年02月15日

Posted by ブクログ

面白かった!
いえ、気候変動のメカニズムとして書いてある内容はほとんど理解できていないけど、それにも拘わらず、面白かった!と思わせてくれる本です。

資料を駆使して、よくわからない読者にも、なんかわかった気にさせてくれる構成力、文章力が素晴らしい。

海底の資料を顕微鏡で覗く地味な作業を発端に、太古の時、宇宙へと思考が広がっていくのが、なんとも素晴らしい!

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2022年05月23日

Posted by ブクログ

地球の気候変動の謎、氷河期と間氷期が繰り返す仕組みや地球温暖化について、そして多くの謎の解明を果たした科学者たちの物語。

現代の科学では、過去数十万年レベルで地球の気温の変動がわかるらしい。それは深海の海底に沈殿したプランクトンの化石や、極地の氷床から採取したアイスコアに含まれる酸素同位体の比率で、温かい時期と寒い時期ではその比率が異なるのだそうだ。

地球規模の気候変動については、地球の公転軌道が楕円形である事、公転軌道の中心から太陽がズレている事、地軸の傾きが変化している事などなど、複合的な要因によって起こるらしい。この理論は発見したセルビアの気象学者の名に因んで、「ミランコビッチ・フォーシング」と呼ばれている。

科学的な仕組みの解説だけではなく、理論や仕組みに迫る人間のストーリーもあり、なかなかスリリングで面白い作品であった、もっと一人づつに焦点を当てた作品も読んでみたいと思った。

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2015年04月29日

Posted by ブクログ

とても素晴らしいサイエンスノンフィクション、科学読み物。ただ、自分がそれを読みこなす素養に徹底的に欠けていることを思い知らされて赤面する。偏読や勉強不足のあらわれ…。地球温暖化がなぜクリティカルなのか、19世紀から20世紀にかけてそれを解き明かしてきた科学者達へのリスペクトに溢れ、我々に警鐘を鳴らす。良い本です。

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2015年05月05日

Posted by ブクログ

表題からは想像できないほど、専門的。
でも・・・読みやすく、納得できる。
気候変動は線形的ではなく、ごっとん、こっとんと変わるものであることがよくわかった。

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2015年02月20日

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