【感想・ネタバレ】ボヴァリー夫人のレビュー

あらすじ

娘時代に恋愛小説を読み耽った美しいエンマは、田舎医者シャルルとの退屈な新婚生活に倦んでいた。やがてエンマは夫の目を盗んで、色男のロドルフや青年書記レオンとの情事にのめりこみ莫大な借金を残して服毒自殺を遂げる。一地方のありふれた姦通事件を、芸術に昇華させたフランス近代小説の金字塔を、徹底した推敲を施した原文の息づかいそのままに日本語に再現した決定版新訳。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『ボヴァリー夫人』

「そろそろやばいかな」とかこの若妻は思いません。
元祖ゴーイングマイウェイな”ボヴァリー夫人”。

若い時の夢見がちな空想って、
いつしか現実と向き合う時間が増えるにつれ
にこやかに送り出せるものだと思うのですが、
(と言うかサヨナラせざるを得ない…?)

この妻、諦めない。
夢想で無双。

ナボコフは『ナボコフの文学講』の中で、
「俗物の中の俗物」みたいな勢いで彼女を評していましたが、今で言うと

スイーツ大好きインスタ映え命の韓流ドラマ大ファン女子って感じでしょうか。
(悪気はないです。例えね例え。)

もうね、ここまで貫かれると賞賛しちゃう。
あっぱれだよあっぱれ。
最後のほうなんてむしろちゃんとやりきってくれよって若干思ってた。

1857年の作品が、2023年に新訳で読めてるってもうやべーことだと思うのですが、
何でそこまで語り継がれているかって言うと、
当時のフランス文学をガッツリ変える革命を起こしているからなんですねぇ。

起こっている事を何もかも知っている俯瞰の第三者に語らせるという物語進行をせず(神の視点の排除)、
話者がかわるがわる交代することにより
それぞれの主観を際立たせ、感情移入を容易にしている。

つまり話者が、
誰かがこちらへ向かっているけどそれが誰かは分からないという状況なら、
我々読者も誰が来るのかわからない。

こういったミステリアスな仕掛けが、個々の文章や小説全体から受ける印象を形作っており、
まさにハラハラドキドキソワソワの追体験を読者に提供してくれています。

そして当然ストーリーとしても面白い。
これは当時のフランスで意欲作というか、
最早喧嘩腰作ですね。やるやんフロベール。

うまいなこの料理ってなって、
複雑な調理法や意外な材料を考えながら食べることもできるし、
「とりあえずうまい」とそのものの全体の味を楽しむこともできちゃう、と盛り沢山でありました。

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2023年05月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どうしようもない女性の話。真っ当で愛情深い夫を退屈で凡庸だと軽蔑。夫は安定した稼ぎがあるのに、この人でなければ自分はもっと裕福な暮らしができたはず、と自惚れ。そんな女性の話でも一応の格調を保っている。文章の美しさもさることながら、女性の一途さ故に。ただ物語のような恋愛をひたすら求める様は、哀れだけども純粋である。
高評価にしたのは、主に話の筋から。予想はできながらも終結はやはり圧巻である。それと上記にみるような、低俗さと高貴さの絶妙なバランスから。
しかし、男性には不評かもしれないと思う。この女性は完全に恋愛脳で、メンヘラだからだ。

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2019年01月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ボヴァリー夫人ことエンマは、元々このような道に進む性だった。夫シャルルは真面目で優しいにも関わらず、夫や田舎を馬鹿にして自分を不幸と思い、常に夢見がちで浪費家だった。
そんな彼女の心に火をつけたのがロドルフ。不倫し借金で首が回らなくなり、エンマは最後自殺する。後半、彼女の欲望の激しさは凄まじく、破滅へと追い立てる。エンマは自業自得だが、ひたすらシャルルが気の毒だった。そしてロドルフに天罰が下されないのが悔しい。
エンマが暴走していく様子がありありと描かれ、当時、問題作と言われたことにも納得の恐ろしい作品だった。

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2025年06月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初夜のあとシャルルがむしろ処女だったみたいでエンマはスンとしてたのウケる
「彼女が知らない場所で寝るのはこれで四度目だった。(中略)そして、そのどれもが自分の人生に新たな段階の幕開けをもたらしてきた。場所が違うので、同じことがまたしても起こるかもしれないなどとは思えず、これまで体験してきた部分がなにしろ辛いものだったので、たぶんこれから味わうべきものは、もっとましになるだろう。」
「男の子を持つというこの思いは、これまでできなかったさまざまなことに対するひそかな復讐のようなものだった。少なくとも、男なら自由で、どのような情熱もたどれるし、いかなる国々も駆けめぐることができ、あらゆる障害をくぐりぬけ、どんなに遠くにある幸福でも食らいつくことだってできる。ところが女はしじゅう思うようにいかない。女は活発さに欠けるだけでなく従順だし、意に反して肉体の軟弱さを持ち、法に縛られやすい。」
「自分の魂を奪ってくれるなら、生活をまるごと消し飛ばしてくれるなら。どんな深い信仰にも身をささげてみようという気になっていた。」
「エンマもほかのどの情婦とも似たり寄ったりで、そして、目新しさの魅力は少しずつ剥げ落ち、衣服と同じことで、そうして目にする裸は、お定まりの恋情の単調さで、恋情はいつも同じ形をしており、同じ言葉づかいをするのだ。じっさいの経験をつんでいるこの男も、同じ表現を浴びせられると、感情の違いなど見きわめようもなかった。というのも、放埒な唇や金で買った唇にも同じ文句をささやかれていたからで、彼はエンマの言葉の純真さをろくすっぽ信じられず、凡庸な情熱を秘めている大げさな愛の言葉は割り引いて聞くべきだと思っていて、まるで心が充ち足りると、ときどきじつに空虚な比喩がこぼれでるようなもので、なにしろだれであれ自分の欲求や想念や苦悩が正確にどれほどのものか示すことなど決してできないからで、さらに人の言葉は音の狂ったひどい楽器のようなものだからで、空の星までほろりとさせようとしても、熊を踊らせる節回しを打ち鳴らすことにしかならないのだ。」←心当たりありすぎ

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2023年03月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

レオンとの関係が冷め、しかし借金はかさみ、のっぴきならなくなり、薬剤師の鍵付き倉庫を開けさせて、無理やり砒素をあおる。
自らが招いた、破滅。
夫である医師シャルルは、後に、手紙を発見し、妻の不倫を知る。その後しばらくして亡くなる。

前半は、退屈で、挫折しそうになった。後半から急に話が動き出し、次第に追い詰められていくエンマの様子に夢中でページをめくった。エンマが亡くなって即、物語が終わると予想していたんだが、その後の描写も予想外に長かった。そして、あっけなくシャルルが亡くなったのには、ビックリ。

あとがきを読んでビックリしたのは、実際にあった話を元に小説が書かれた、ということ。こんなことが実際にあったんだ。

660pと長いし、前半退屈だったので、やや飛ばし気味で読んだ。キチンと読み解けているかというと、細部にまでは自信がない。全体は大掴みできたが。
音楽で言うところの、ラベルのボレロみたいな感じかな。
盛り上げるだけ盛り上げて急にガクンと、終わるような。

モームが世界十大小説にあげているが、そこまで面白いとは思わなかった。感情教育は、読んでみたい

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2025年04月15日

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