あらすじ
夕方五時までは家に帰らせてもらえないこども。 娘に手を上げてしまう母親。 求めていた、たったひとつのもの――。 怖かったのも、触れたかったのも、おかあさんの手だった。
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Posted by ブクログ
きみはいい子
どこにでもあるような郊外のある町の弱き者を巡る連作短編集。
親からネグレクトされ暴行され、「親に抱きしめてもらう」という宿題ができない男の子。ママ友の前では笑顔なのに、家に帰ると娘に手を上げてしまう母親。一人住まいの老女と発達障害の男の子と母親との交流。虐待されてきた娘が認知症の母親を預かる話。
弱き者の負った傷は、虐待の連鎖や孤独という形で続いていくのだということがわかります。
どの話も心に染みる物語ですが、弱き者に寄り添う人たちがいることが救いです。
竹蔵
Posted by ブクログ
映画から入って、原作を読みたくて買った本
今取ろうとしてる資格を目指すきっかけのひとつになった作品
特に印象に残ってるのは虐待の疑いがある男の子と先生の話だった
映画でも原作でも最後先生が男の子のために行動したのかが分からず、読んだ後自分の中で考える余地がある話だった
でも、私はあの先生は男の子のために介入したと信じてる
全て読んだあとに「きみはいい子」というタイトルに涙が出てきた
世の中の虐待を受けている子どもや受けてきた大人、障害のある子どもや大人はみんなちゃんと「いい子」
この作品を読んだことで、虐待は悪で、虐待をする親が全て悪い、なぜこんなことをするのかという以前までの自分の考えが大きく変わった
虐待をしている親も子どもだった頃虐待を受けて育ったかもしれない、と思うと親と子どっちも支援することが出来ればいいと強く感じたし、それを目指す職業に就きたい
Posted by ブクログ
桜が丘小学校と小学校のある「烏ヶ谷」の地域の連作短編集
児童虐待がテーマとなっている
どの話も重くつらいが、必ず見守ってくれている人がいるのが救い
「サンタさんの来ない家」
学級崩壊させてしまった新任の男性教師の岡野と義父から虐待を受けている男児神田を中心とした物語
「べっぴんさん」
自分も虐待された経験を持ち、今は自分の娘を虐待してしまう母親の物語
「うそつき」
小学校のPTA会長をしている主人公の息子の優介の友達のだいちゃん(大貴)の話と子どもの頃の親友で黒人とのハーフのもっちゃんの物語、「サンタさん」の校長先生と担任の先生のエピソードが挿入される
「こんにちは、さようなら」
認知が入ってきた老婦人あきこさんと発達障害をもつ櫻井ひろや君母子の物語、ここにも最初の小学校の先生のエピソードが挿入される
「うばすて山」
認知が入って施設に入ることになった母ふうちゃんを3日間だけ妹のみわから預かることになったかよ。元小学校教師だった母親から受けた虐待が忘れられないが全てを忘れてしまった母親に対峙することになる 「べっぴんさん」のパンダ公園と「うそつき」のもっちゃんのエピソードが挿入される
Posted by ブクログ
短編集。
虐待された子が連鎖的にそのまた子にも虐待、と生々しい心の傷跡が垣間見えるお話があった。
おそらく全てが登場人物等少しずつ繋がっている。活字が細かく個人的に丁度いい厚さ。
Posted by ブクログ
色々な家庭・色々な人達の虐待をテーマにした物語だった。
担任をしたクラスは必ず学級崩壊してしまう新任教師と家で まともに食事を与えて貰えない男子児童。
外出先では愛想をふりまいて、いい人を演じながら子供が親の言うことを聞かなかったり、人の迷惑になったこと等を全て記憶し、帰宅したら、子供の失敗の数だけ虐待をする母親。
シングルファザーだった頃は、そんなことなかったのに、再婚した途端に虐待をする父親。
小さい頃、何かあるとすぐに手を出した母。(文字や数字を言い間違えただけで、お湯の中に頭を突っ込まれたり、自分は散々虐待を受けてきたのに妹には一切虐待されなかったり、テストで70点を取っただけなのに首をしめられたり、目に砂が入った時は目を無理やり こじあけて目を舐められたりされた)
そんな母親が認知症になった途端、自分の娘のことも、一切忘れてしまった。などの物語だった。
虐待されている人達に対して、「君はいい子」と言っているのだなと感じた。
この作者の本を以前何冊か読んだことがあるが、どの本も必ず読み終わった後は、切ない気持ちになるなぁと思った。
Posted by ブクログ
かつて自分を加害してきた存在が、老いて無垢な存在になってしまった時。ぶつける先を失った感情はどこへやればいいのか。
あれが嫌だった怖かった許せない。けれど加害者側はそれを忘れていて、自分が大人で親であることすら忘れていて、かつての怒りをぶつけた所で今度はこちらが加害者になるだけ。
たった一つの優しい記憶を繰り返し再生して、これからも生きていく。それは希望のようにも見えるけれど私には逃避と自己暗示にしか思えなかった。
けれどそうでもしないと生きていけないのは、加害者が親だから。唯一無二の存在だから。あれがしてほしかったこれがしてほしかった愛してほしかった。それが叶わなかったから、最後の最後に思い出したたった一つの優しい記憶を頼りに生きていく。
親という呪縛。何処までも前向きで後ろ向きなラスト。
***
・文章が淡白なのに読みづらい
・母に「かよちゃん」と呼ばれるシーンは泣いてしまった。
・べっぴんさん。子供に手を上げる側の気持ちが痛いほど伝わってきて苦しかった
Posted by ブクログ
心が痛かった。
悪い人はいないんだろうけど、全てのことに何か原因があるんだろうけど、許せないことも沢山あって、でも理不尽なことを飲み込むことが生きることなのかな…なんて思ったり、でも、なんでも美談にしてしまうのは、何かに蓋をしてなんの解決にもなっていないと思ってみたり…
Posted by ブクログ
本帯に書いてたとおり、ものすごいことが書かれてる。
だけど、きっと、現実、今、この世界のどこかで起きていることなのだと思う。
だけど 全ての物語の最後は 何か “救い”があって、自分の中で救いを見つけるのだけど、それが、他者との関わりやつながりによって見つけらているところがよかった。
どんなに自分が自分のことを嫌いで、そうなったのは誰かのせいだと思いたくて、そんな自分を更に嫌いになって、自分のことを分かる人なんていない と思っていても、向き合い、何かに救われるのだ と思わせてくれる。
べっぴんさん は特に自分自身にすごく響く物語だった。
このお母さんを救ってくれる人に出会えて本当によかった。
この本の中ですごく残った言葉。
うそつき の中の最後、『たとえ別れても、二度と会わなくても、一緒にいた場所がなくなってしまったとしても、幸せなひとときがあった記憶が、それからの一生を支えてくれる。どんなに不幸なことがあったとしても、その記憶が自分を救ってくれる。』
本当にその通り。過去を振り返りすぎることはよくないと思いつつ、わたしがよく過去を思い出すのは、きっとその記憶がよくも悪くも今のわたしを作り、その時の喜びや嬉しさや、楽しさ、悲しみ、怒り、悔しさが今の私を支えているからなのだと思った。