【感想・ネタバレ】パワー 上 西のはての年代記IIIのレビュー

あらすじ

〈西のはて〉を舞台にしたファンタジーシリーズ第三作!少年奴隷ガヴィアには、たぐいまれな記憶力と、不思議な幻を見る力が備わっていた――。ル=グウィンがたどり着いた物語の極致。ネビュラ賞受賞。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

この物語には、アーシュラ・K・ル=グウィンの頭のなかには、わたしたちが自分が属すると思っている以上の集合体の声が、流れているにちがいない。
わたしは、大きな絶望感と空虚感の最中に、ほぼ偶然これを手に取って読んだ。グウィンは、むろんその腕を最大限伸ばして知識を得ただろうが、それのみに留まらず、実際に起こったであろう(グウィン自身には起きていないだろうが)ことをしずかに聞いたのだと思う。「奴隷」という人びとの受ける扱い、かれら自身が思い込むことで耐える拠り所……わたしとておおよそは本で伺い知った(そうでないところも、いちおうあるが)その考え方の構造のようなもの、そして残酷さを、ゆっくり誠実に、内なる声を聴きながら描き出している。このことはわたしに勇気をくれた。もう少しだけ、グウィンその人が別著で語ったように、「才能に人生を懸けて」みようと思う。むろん、「声」に耳を傾けながら。

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2022年12月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ギフト、ヴォイスと言葉の力、本の力にまつわる物語が語られて、そして、最後はパワー。文庫版だと、上下2巻。西の果ての年代記の最終巻。

奴隷として、幸せな(!)生活を送る少年が、自由と自分に目覚めていく物語。
西の果ての年代記は、ゲド戦記にくらべると、著者が今の世界の比喩として生み出した世界ということがちょっとわかりやすい気がする。
『パワー』でも、奴隷制で描かれる世界を読みながら、自分自身の精神の自由について考えてしまって、ときどき苦しい。

例によって、少年は特別な力を持つが、その力が少年の人生を決定的に助けてくれたり、英雄的行為に導いてくれたりはしない。
ル=グウィンの物語はいつでもそうだから、今回も「きっとそうなんだろうな」と思い、「でも、もしかして・・・」となぜか期待し、「あ、やっぱりそうなんだ」と思う。

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2011年05月28日

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