あらすじ
兄の部屋を偏執的にアサる弟と、執拗に監視・報復する兄。出口を失い暴走する憎悪の「黒冷水」。兄弟間の果てしない確執に終わりはあるのか?当時史上最年少十七歳・第四十回文藝賞受賞作!
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Posted by ブクログ
黒くて冷たい深淵のような沈んだ憎み。
兄がカウセリングによって生まれ変わったと思ってから、以前よりも弟を憎むようになったまでの心理の過程がとても絶望的で、読んでいるこちらも、昔何らかのことに対して 希望を持つようになってから長い間も経っていないうち早くも諦めたことをいくつか思い出してしまった。少し鬱な気分になってしまった…
最後に兄弟愛に目覚めた兄の正気と、そんな「黒冷水」を書いても自分が前科者にならないよう弟の生を祈る兄が対照的である。後者より前者のほうが可愛らしく、人間的だと思う。
陰湿で毒々しい感じの小説でした。羽田圭介さんのイメージと違って少し驚いた。ほかのも読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
⚫︎受け取ったメッセージ
「兄弟喧嘩」をここまで魅せる…
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
兄の部屋を偏執的にアサる弟と、執拗に監視・報復する兄。出口を失い暴走する憎悪の「黒冷水」。兄弟間の果てしない確執に終わりはあるのか?当時史上最年少十七歳・第四十回文藝賞受賞作!
⚫︎感想(⚫︎ネタバレ注意)
「兄弟喧嘩」をここまで発展させ、読者を最後まで惹きつける。小説家とはやはり感受性、想像力、表現力を併せ持つ特別な人々なんだなぁと改めて感じた。真剣でやばいのだが、ベースは兄弟喧嘩なので、ダークなんだけど、ちょっと笑ってしまうというか。そういったところは芥川賞受賞作の「スクラップアンドビルド」にも感じた。他の著作も読んでみたい。
黒冷水は「兄」によって書かれたメタ構造の物語だったが、小説内の現実で一番ヤバい奴は「黒冷水」を書いた「兄」であり、弟が意識不明だというのに、親も「…手加減しなさいよ…」なんて言う程度で、異常サイコパス味があってほんとこわい。不穏だし、こわいけど読むのがこわいくらいとまらない。そんなお話でした。
Posted by ブクログ
序盤からは、弟のアサリと、それに気づきつつも冷静さを保っている兄の描写がひたすら続き、そこまでの波乱はなく進んでいきます。
カウンセリングを経て、弟を許そうと決意した兄が、帰宅してからはじまるストーリーからが、この小説のスタートとも言えるのではないでしょうか。
初めて黒冷水という言葉が出てきてから、引き込まれるようにして読みました。
完 までのエンディングは、兄の改心とともに、それまでの戦争に終止符が打たれるような描写で、綺麗に丸く収めるのか〜と思いつつ、あまりしっくりこない感じでした。
が、その後の展開で、この本が評価される意味がわかりました。
最初は夢オチ?と言う感じで、なんだよーと思いながら読んでいましたが、単純なそれとは違う結末でした。
結局、兄の方がやはり、すぐ暴力に頼るし、人格異常なところがあるのでは。と。
羽田さん本人の描写なのか とも思いましたが流石に違いました、よかった。笑
わたしは今はとても仲の良い姉妹ですが、高校生の頃までは妹とあまり仲良くなく、わたしが意地悪ばかりしていたので、嫌な記憶が蘇ってくるような気持ちで読みました。
正気と修作は、親という第三者の介入により、兄弟仲が悪くなった。
私は、父も母も姉妹それぞれを大切にしてたから、私が意地悪しても平気だったのかな、と個人的なことを考えてしまいました。
子育てをする身になった今、親としてどう接すればいいのか、ということも考えてしまいました。というか、この小説における両親は、子供達に無関心すぎでは??と感じましたが。
男同士の諍いで、決して気分よく読める小説ではありませんでしたが、気になっていた羽田圭介さんの作品、読んでみてよかったです。
Posted by ブクログ
信頼できない語り手ではあると察していたが、かなり特殊な構成をしていて純粋に驚いた やや不自然な会話や稚拙な表現に関しても、伏線に捉えられるように作っており面白い
私自身はこういう性的表現が露骨に使われる文章はあまり好きでは無いが、高校生と中学生という多感な思春期の不仲な兄弟感をリアルに描いているように感じた
構成上か(または作者自身が17歳だったためか←関係ないけど作者の性別や年齢で文章どうこう言うのは失礼な気もするし、思い込みも多く発生すると思うのでよくないと思う)、やや不快に感じる部分も多く存在した一方で、大きなオチはあるがカタルシスを感じさせるものではなくやや微妙な気持ちは残る
テニス部に所属する兄には、中学生ながら明瞭で結末に大きく関わる後輩が存在するがその後輩がやや特殊な立ち位置でこの人物に関しては何か作為を感じるが1回目の通読では読み切れなかった そのためもう一度読んでみようと思う
そう思うほどには中々悪くない作品だったということ