あらすじ
『蛇イチゴ』『ゆれる』『ディア・ドクター』『夢売るふたり』、2002年のデビューから、オリジナル脚本・監督による四作の長編映画を生みだし、数々の映画賞を受賞した映画監督・西川美和。本書は、いま次回作にもっとも期待の寄せられる西川氏、初のエッセイ集。小説誌「ジェイ・ノベル」の連載「映画にまつわるXについて」を中心に、雑誌、新聞、ウェブなどに寄稿した7年分のエッセイを収録する。脚本やキャスティング、取材やオーディションなど、『ゆれる』『夢売るふたり』などの映画制作の現場にまつわるエピソードはもちろん、旅先での出来事や人との出会い、刺激を受けた映画や本について、子どもの頃のことなど、内容は多岐にわたる。いずれも西川美和というフィルターを通し、見つめられ、切り取られた一瞬の風景だが、横綱・朝青龍関はヒーローかヒールか、映画において裸とはどうあるべきか、オーディションでは何を見られているか、カチンコの役割について――などなど、映画作品と併せて楽しめる一冊。解説は、寄藤文平氏。
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Posted by ブクログ
ベラボーに面白いです。こりゃ凄い。こりゃお見事です。
西川美和、という人は、自分の思っていること、考えていることを、自分以外の他人に伝えることが、めちゃくちゃ上手いなあ、ってね、思いました。
映画監督としては、自分の思いを、映像情報として他者に伝えることが、ベラボーに上手い。
小説家、エッセイストとしては、文字情報として他者に伝えることが、ベラボーに上手い。
ということなのかな?と思うのですが、うーむ。なにしろ「わたしはこう思っています」ということを、これほどに見事に他者に伝えることができるものなのかね?と、驚嘆。つまるところ、西川美和さんは、コミュニケーション能力が途轍もなく高い人なのだろうなあ、と、思います。なんか、対人関係はめちゃ苦手そうな自分の書き方をしておられる場面は多々ありますが、「自分の思いをつたえる」というコミュニケーション能力は、ホンマに高いと思う。それがすなわち「共感力」ってことなんじゃないのかね?とかね、思う次第ですね。
西川さん、結構「それを意見の俎上に乗せるのは、そうとうヤバい話題ではないのかね?」って事も、臆せずに、語りますよね。その勇気は、尊敬します。あたりさわりの無い事を言っておいてお茶を濁す、とか、しない。そもそも、その話題に触れないければ、なんも波風立てないで終わるからそれで良いことなのに、でも西川さんは、その話題に、触れる。その勇気。うむ。尊敬します。もう、素直に、尊敬します。
あと「ゆれる」という映画を本当に本当に心の底から愛している自分にとっては、その「ゆれる」のプロダクション・ノーツが読めただけでも、この本読んだ甲斐あった!って感動。「夢のあとさき」と名付けられた、この一章。本当に素敵です。「映画」というものの本当に抗いがたい悪魔的な天使的な魅力を、これでもか!と語っている西川さんの姿が最高です。「ゆれる」は、ホンマになあ、、、途轍もない映画だよなあ、、、「映画は、一人で作るより、人と作った方がいい」というさりげない一言が、これはもうマジで映画の本質を言い当てまくっていて感涙。
ま、映画監督・西川美和に、心を撃ちぬかれまくっている自分にとっては、聖典みたいな本ですね。珠玉の言葉が並んでいます。手元に大事においておいて、一生、ことあるごとに読み返したい。そんな素敵な、素晴らしすぎる一冊です。いや最高ですよコレ。