あらすじ
遺伝子工学の天才ウラムは、自分の白血球をもとにコンピュータ業界が切望する生体素子を完成させた。だが、会社から実験中止を命じられたウラムは、みずから創造した“知能をもつ細胞”を捨てきれずに、体内に注射して研究所からもちだしてしまった……この新細胞ヌーサイトが人類の存在そのものを脅かすことになるとも知らずに! 奇才が新たなる進化のヴィジョンを壮大に描き、新時代の『幼年期の終り』と評された傑作
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Posted by ブクログ
遺伝子工学で優れた能力を持つヴァージルは、自身の白血球をもとに、生体素子を作り上げ、研究所の人たちにバレないように持ちだした。彼が作り上げた細胞ヌーサイトは知能を持つ細胞であったが、この細胞が原因で、アメリカどころか人類を巻き込むほどの大災害が発生する。とくに終盤では、世界中の人々が犠牲になり、その影響で食糧不足、資源の枯渇など、人間の手によって人間同士を争うという、皮肉な結果を招いてしまった。科学技術の発展が、場合によって文明規模で衰退してしまうことが本作からうかがえる。
Posted by ブクログ
ヴァージルが主人公の間の展開は身震いする恐ろしさで、細胞が学習していくのが脅威だった。全て学習し尽くされたら乗っ取られるという恐怖に追い立てられる。
パンデミック要素も、コロナ禍を経験している今は身に迫ってくる。ワクチンの注射だってそう。ウイルスはあっという間に国境を越えてしまうものだし、意志を持ったヌーサイトならより簡単に全てをやってのけられる。
バーナードが他人の記憶を見て、ヌーサイトの思考宇宙を知るシーンが衝撃だった。壮大すぎて胸がザワザワする。全ての記憶が内包される一つの生命体のような、その混じり合った様々な経験や記憶が共有されてずっと続いていく事実が胸を締め付けて、わけもなく涙が出そうになる。消滅しない、というだけでこんな気持ちになるのか。
感染した人間の身体が変わっていくのが面白かった。肌の白い隆起は震えるほど気持ち悪いけど、人間の形態への執着を捨てれば安寧が待っている。細胞を弄ったことによる進化を受け入れるのか、もし私が選択を迫られたらどうするだろうと考える。たぶん迷わず捨てるだろうと思う。
Posted by ブクログ
北アメリカで起きたかなり物質的な(後半は精神的な)人類補完計画。てか元ネタこれ説もみかけた。
序盤にヴァージルを殺しちゃった理由がいまいちつかみかねる。あの時点ではヌーサイトの脅威がどの程度のものか判明していないので、もったいなくないか?と。むしろその未知への危機感からなのかな。
ヌーサイトが敵対存在になっている感覚がとても抑えられていて、この手の話につきものなぞわぞわする恐怖感を楽しむわけでなく「なんか幸福そうだな…」と事の顛末を眺めてしまった。
ラストは救いがあると感じるかそれは騙されてる終わったんだと感じるかは読み手次第なんだろーなと。
タイトルがおっしゃれで好きだなー。