あらすじ
長い不倫の恋が終わったほたるは、彼と過ごした東京を離れてふるさとに戻ってきた。失恋の痛手を負いながら祖母の喫茶店を手伝うほたるは、出会った瞬間に懐かしいと感じる赤いダウンジャケットの男の人に出会う。確かに会ったはずなのに、なぜ思い出せないんだろうーー。
誰かを失った心の痛みをゆっくりと癒してくれる、あたたかな物語。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
るみちゃん、好き。
人のやさしさはハゴロモ。心の成長を一押ししてくれる。すごく沁みた本。読んでよかった。
人も幽霊も同じだよ、こちらの思い入れで接すると必ず痛い目に合う。・・・背筋を正して接していれば何かわかりあえるものがある。
あのおじさんは君と見ている世界が違うから、自分の世界を大切にして、何度壊れても作り直してね、
そして突然、わかった。
私は失恋してかわいそうな感じで東京追われてきたので仕方なくここにいるわけではなくて、今ひまだし、好きこのんでここにいるのだ、
そしてこれからもどこにいたっていいのだ、とい
うことが。
あとがき
もし自分が本当に弱っていて、でもそれが病気や事故など命に関わることではなくって、そんなことでこんなに弱っている自分も情けない…と言う気持ちの時に、この小説を誰かが書いてくれたらいいな、と再読して人ごとのように思った。
Posted by ブクログ
ばななさんがあとがきで、弱っている時にしか価値がないとも言えるが、弱っている時にじんわりしみてくる気がする小説だと書いていた。出会うべき時にこの小説に出会えた気がする。なんとなくずっと苦しくて落ち込む数日間を過ごしてたのに、この本を読んだらホッとした。川とか山とか、親しい人との繋がりとか、本当に大事にすべきものが人間にはあると思います。(この本読んでTwitter消せた!!)
「でも私だって、実のところ、もしもみんなが等しく鳩を愛するだけの世界だとしたら、私はそこに住んで幸せだろうか?っていつでも考えてしまうもの。別の考えに触れたときの感じは、やっぱりいつでも衝撃的で、自分の世界が広がっていく気がするから。」
対立したり、自分の気持ちが人にわかってもらえない時ってとても苦しいけど、それが人間の面白さであることを忘れずにいたい。
Posted by ブクログ
誰にでも恐ろしいくらいの孤独が現れる。それは何にも例えようがないもの。鋭く痛く貫くような。でもそんな傷でさえ、ちゃんと時が癒してくれる。「時間薬」とはまさにそのことだ。人を失った苦しみは何にも比べようがないから助けてあげられないけれど、いつかあなたにも暖かい光が差し込みますように。全てのあやまち、迷いから抜け出せますように。私の大切な一冊にこめて。
「何か大切なことを忘れているような気持ちにさせる。
Posted by ブクログ
恋愛するということ
誰かとともに生きるということは
ひとりではないということ
誰かの人生が自分の一部となり
自分の人生は誰かの一部となる
しかし、その誰かと離れたとき
私はひとりであること
もともとひとりであったことを
思い出す
愛人と離れた主人公が
自分自身の人生を生きはじめる
そこには彼女が生まれ育った土地
家族、街の人々、友情、
彼女自身に関わる人間関係があった
愛人とともにあった生活を失い
ぽっかりと空虚で透明になっていた彼女が
自身の過去や周りの人々と向き合う中で
様々な記憶や感情を取り戻し
色鮮やかになっていくように感じられた
それは″生きる″ということを
思い出していく過程のように見えた
ひとは結局いつまでも
ひとりなのかもしれないと思う
ひとりであって
はじめてだれかといられる
彼女と関わるひとみんな
不思議な力があるようだった
目に見えないことを信じていた
目に見えないことがほんとうで
目に見えることはほんの一部のように
自身の過去を、自身の物語として、
点と点が線で結ばれたとき
ほんとうの意味で
ひとは癒されるのかもしれない
そしてわたしも彼女の物語を通して
こころの奥深くのどこかで
共鳴したなにかが
癒されたように感じた
Posted by ブクログ
最後、みつるくんじゃなくて、るみちゃんとの時間で物語が終わるのがよかった。
私のひいおばあちゃんも人を惹きつける不思議な力がある人物だったらしく、よく街のいろんな人が相談に来ていたと父が話していたのを思い出した。私が生まれたときにはもう亡くなっていたけれど、いつか夢の世界で逢えるといいな。
Posted by ブクログ
・そしてそういう景色には、見ている側の甘えをきっぱりと拒むような、何かぞっとするところもあった。
・だから、どうにもほっとできない気持ちの中にいる人が、ふと読んで、何のメッセージを受け取るでもなく、ただちょっとだけ苦しみのペースを落とすことができたらいいな、と思います。(あとがき)
Posted by ブクログ
長さというものは、それ自体がひとつの生命を持つような感じで、いつのまにか思わぬ大きさにふくれあがっている。
そして本当の別れというのは、縁がぶちっと切れるということは、死よりもよっぽど死に近いことなのだ、とさとった。
人の、感じる心の芯のところは、決して変わることがないようだ。
「同じような気持ちでそばにいるだけで、語り合う言葉がないほうがかえって通じ合えるということのすばらしさを私はその歳にしてもう知っていたみたい。」
人の、意図しない優しさは、さりげない言葉の数々は、羽衣なのだと私は思った。
「そういうのが最高なんじゃないのか?自然に、川のように流れて、あるところにいつのまについてしまうっていうのが。」
その遺していく力の重みこそが、きっと人間が唯一このどうしようもなくたまらない世界の中に置いていける何かなのよ。
Posted by ブクログ
大人のためのやわらかなおとぎばなし。
ふわふわで口に含むとほろり、ととけてしまう甘さ控えめのケーキのようなおはなしでした。
UAがBGMによく合います。
新潮文庫の100冊と言うキャンペーンが、2006'9,25迄やってます。
対象の本の帯にあるマークを2枚集めて送ると、Yonda?マスコット人形がもれなくプレゼントです。
※別の読書サイトから感想を移行中なので、その当時のオハナシ。
Posted by ブクログ
田舎ならではの暖かさや人との繋がりの温度感は伝わってくる。しかし、登場人物の大半に超能力(?)があるのは予想外で、運命だと無理やりこじつけている気がした。
主人公への感情移入もできない。
18歳からの8年を不倫相手だけに捧げたからなのか、多面的に物事を見る力に乏しい。
不倫という関係性において、病気の奥さんよりも自分の方が辛いという意見は私には聞き入れがたかった。
全体を通して見ると、すっきりとまとまっており、主人公が失恋から立ち直るまでの心境の変化が丁寧に書かれている。彼女がこの先どの道を選ぶか、どの道に進むのかは分からないが、この本を通して成長は遂げたと思う。
この作品において、私はみつるの母が一番好きだ。
病床に臥せったとしても、ただ死を待つのではなく、自分の気持ちと折り合いをつけ、回復をじっと待っているその姿は、私が今1番手本とするべき考え方だと思う。
失恋した時に見ると、また違う感想を抱くのだろうか。今はあまり、ピンと来ない。