あらすじ
出稼ぎに出たきり戻らぬ父を尋ねて、ひとり東京に着いたキワ、自分は電気仕掛けで動くのだと頑なに信じる少年・作次、晴れ着を着て父親とメリー・ゴー・ラウンドに乗るチサ――。危ういバランスをとりつつ、生と死の深淵を覗き見る子供たち。この、人生の小さな冒険家たちの、様々な死とのたわむれを、清冽な抒情と澄んだユーモアを重ね合せて描く「接吻」「睡蓮」「厄落し」「星夜」「初秋」「ロボット」「遠出」「遊び」「出刃」など12編。著者会心の連作短編集。
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Posted by ブクログ
小説家としての三浦の業をこの一冊でみた気がした。
はじめの「接吻」がほんとうにすごいと思った。
出稼ぎに出ているお父さんに東北から会いにきたキワは、上野駅のホームで見知らぬ女の人に自分の名前を呼ばれる。
とにかく三浦哲郎の文章は一切の誤魔化しがなく、身を委ねられる。話がいいようにも思うのだけど、この作家はひとつひとつの文章が作品を作っているのだとやはりつよく感じる。
自分が短篇小説を書くときに、これらの作品はお手本になるだろうな。
Posted by ブクログ
2012年のセンター試験の追試問題で「メリー・ゴー・ラウンド」に出会いました。
その話の悲しさに驚き、思わず周囲の友達に読ませたのを覚えています。
特にそういった描写がないのにぞっとさせられる文章に出会ったのは、小野不由美の「くらのかみ」以来です。
こちらの文章のほうがより洗練されている気もしますが。。
この短編集の中では、メリー・ゴー・ラウンドの次に「睡蓮」が好きです。
真っ暗な背景に、足まで泥に使った子供と、ぽっかり浮かぶ睡蓮の花。そのような情景がありありと思い浮かび、背筋が寒くなります。
子供の無邪気さ故の恐ろしさが丁寧にかつ簡潔に書かれています。
ただかわいいだけの存在ではなく、何をしでかすかわからない未知の存在であることを認識させられます。
他の話も胸を締め付けられるものばかりです。
短編ですぐ読めるので是非他の人にも読んでほしいですね。
特に中身のない小説ばかりを読んでいる人には是非。小説とはこういうものだと思ってほしいです。