あらすじ
シャーロック・ホームズのもとに届いた暗号の手紙。悪の首魁モリアーティー教授の配下からのそれは、サセックス州の〈バールストン館〉のあるじに危険が迫っていることを告げるものであった。そして実際、その館で凄惨な殺人事件が発生する。捜査に乗りだしたホームズが解き明かした驚愕の真相とは? ホームズの推理譚の第一部に続き、第二部ではアメリカの荒涼とした〈恐怖の谷〉での目をおおいたくなるような、凄絶な物語が描かれる。第一部と第二部の双方に意外性が秘められた、最高傑作の呼び声高い長編!/解題=戸川安宣、解説=北原尚彦
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Posted by ブクログ
シャーロック・ホームズのシリーズは、小学生の時にひととおり全部読んだ。
その後中学・高校時代に、短編集だけは文庫本(大人の本)で読みなおしたけれども、長編を読み返したことはないはず。
だって、長編はあまり面白くなかったんだもの。
今回大人の目で、名作と言われる『恐怖の谷』を読み返して、子どもの頃は面白くなかったろうなあと思った。
まず、男女の真摯な恋愛に興味がなかったのである。
そして、ハードボイルドも割と苦手分野であったこと。
決定的なのは、シャーロック・ホームズ出てこなすぎ!
一部と二部に分かれているのだが、シャーロック・ホームズが出てくるのは主に一部の方で、二部は、時代も違えば登場人物も全然違う話なのだ。
それは、シャーロック・ホームズのお話を読もうと思っていた小学生だからこそ「なんだこれは?」となってしまう展開。
では、大人の目で読んだ『恐怖の谷』は面白かったのかと言われると、「それほどでも…」となってしまう。
一部と二部を別作品として書いていたのなら、どちらも面白かったけれど、無理やり長編にして、特に根拠も必要性も感じないモリアーティを登場させることによって、余計に作品としての統一性が失われたと思った。
多分作者が書きたかったのは二部の方だったのだろうと思うけれど、シャーロック・ホームズ抜きでは出版が許されなかったのかな。
二部だけで、エピローグ抜きで終わらせても、それはそれで面白いと思うのだけど。
というか、エピローグのエピソードも、事実確認ができない時点で、ホームズ言いたい放題なわけです。
ホームズの言う通りなのかもしれないし、さらに裏をかいて逃げ切ったということだってあり得る。
ただ、悪の天才としてモリアーティを出してしまったから、彼に花を持たせなければならなかったのだろう。
そのモリアーティよりホームズを上に置いて、究極の天才にしなければならないのだから。