あらすじ
AI(人工知能やロボット)の歴史や現状を踏まえながら、AIと人とのかかわりを分析した解説読み物です。AIは人間の仕事を奪うという悲観論でも、夢物語でもなく、冷静に分析します。テクノロジーに偏ったり、感覚に訴える感情論でもなく、AIの在り方を探ります。
本書を貫くテーマは「AI・ロボットは人類を救うか?」です。これに対する著者の考えは、人類を救うためには、「心を持ったAIがカギとなる」というものです。処理能力の向上、扱えるデータの大容量化、テクノロジーの単なる組み合わせだけでなく、脳に近いアーキテクチャの進化が必要になると考えています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
読むのに1年程度かかってしまったが、素晴らしい一冊だった。
シンギュラリティ、コネクトーム仮設、人間原理、宇宙はコンピュータシミュレーション、といった様々な仮説をそれぞれ紹介するだけでなく一歩深堀していておもしろい。
AIに関する思索について、これまで読んだ中では最先端で、「意識」や「心」の正体にも腹落ちする仮説であり、もって人工生命の可能性をよりクリアに捉えることができるようになった。
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【目次】
・第1部 電気羊の夢
−第1章 「新しい心」の誕生
−第2章 ゴーストの森の生活
−第3章 機械仕掛けのトルコ人
−第4章 異人を愛する
−第5章 鎖を解かれたプロメーテウス
−第6章 神の帰還
・第2部 心の問題
−第7章 世界の青写真
−第8章 身体のない心
−第9章 レジスタンス
−第10章 心を見つめる
−第11章 サイバネティックな脳
・第3部 不思議の国のエイダ
−第12章 「すべてのクレタ人は嘘つきだ」
−第13章 プログラム
−第14章 ブレッチリー・パークからグーグルの構内へ
−第15章 思考するマシン
−第16章 カオスの縁にいるダーウィン
■全般
・本当に人間のように考えるマシンを作るためのポイントはたったひとつ、
自分が思考していることを意識できなければならない
→考えているのは「自分」だとわからなければならない
・意識がアルゴリズム化できるなら意識はコード化できる
・オーストラリアの哲学者デイビッド・チャーマーズは、脳を純粋に唯物論的に
見たのでは説明できない問題があることを指摘
→主観的経験の問題であり、「クオリア」と呼ばれる
→人間が620-740ナノメートルの光を「赤」と感じる理由を科学は説明できない
・意識のハードプロブレムに密接に関係しているのが、自我の主観的経験の性質
→科学は経験論を基礎としている
本書は、人工の心を作ることができたら、私たちはそれとどのように付き合っていけばよいのか、そもそも人工の心がなぜ重要で魅力的なのかを理解するために私が考えてきたことを説明
・第1部は、ロボットについての物語の起源
・第2部は、心の哲学と神経科学の世界
・第3部は、私たちの世界を変えたテクノロジーであるコンピュータの魅力的な歴史
Posted by ブクログ
AI、人工知能。最近、よく目にするようになったキーワードについて理解が深まるかと思ったが、「心」とは何か、「心」をプログラムによって再現できるか、という内容が印象的だった。(タイトルで気づくべき)
科学技術としての側面だけではなく、哲学や脳科学の見地から考察と解説がされており、ぼんやりしたAIや人工知能のイメージがより具体化される。
AIはビックデータの解析やアナリストのような機能的役割と映画に出てくるようなアンドロイドのような人間的役割の二つに分かれるが、本著は後者における考察がメイン。
技術的な転用に対する考察について学ぶには、関連書籍を併読する必要がありそう。