あらすじ
没後30年、ますます鮮やかな人間ドラマ!
地唄の名人である盲目の父親と、アメリカに渡った娘との凄まじい愛情の確執、芸へのひたむきさを描いた著者初の記念的長編。
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Posted by ブクログ
これが有吉佐和子さんのデビュー作。しかも有吉さんが22〜24歳の若さで描かれたものとは驚いた。完成度が高い。
"地唄"自体あまり聞き慣れない言葉で読み始めは戸惑ったけれど、女子大生・瑠璃子が菊沢寿久に弟子入りしてから俄然面白くなった。周囲を遮断するかのように頑なな寿久の心をあっさりと溶かしてしまう、とても魅力的な女性だった。
日本古来から受け継がれる伝統を継承し続ける難しさは、令和の世でも変わらない。
「過去と現代が握手する」
「愛しつつ抵抗する。反逆しつつ愛する」
確かに現代に残る伝統芸能の数々は進化を遂げながら、その時代の人に取り入れられて次の時代へ繋げられている。
ラストの寿久渾身の演奏は圧巻だった。
年の瀬にいい作品に巡り合えて嬉しい。
有吉作品は『悪女について』しか読んだことがなかった。来年はもっと有吉作品を読みたい。