【感想・ネタバレ】家栽の人 4のレビュー

あらすじ

▼第1話/クリスマスローズ▼第2話/コスモス▼第3話/アジサイ▼第4話/ハエジゴク▼第5話/ガジュマル▼第6話/冬虫夏草▼第7話/ホウセンカ▼第8話/ホオノキ▼第9話/スイセン ●登場人物/桑田義雄(岩崎家庭裁判所春河支部判事) ●あらすじ/新しい勤務地の春河で、着任早々、桑田はある少年の窃盗事件に関わることになる。担当の調査官の渋谷は熱血漢だが、事務的に仕事をしがちな裁判官に不信感を持つ男だった。しかし桑田は違っていた。バイクを盗んだという少年の、それは自分の意志ではなく脅かされてやったことだったという真実を導き出す桑田に、驚きを隠せない渋谷だった(第2話)。

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Posted by ブクログ

 家裁、すなわち家庭裁判所では少年犯罪が審理される。この作品は家裁判事である桑田義雄という人物を主人公にして家庭裁判所という舞台に登場するさまざまな少年たちと桑田判事との出会いを綴った作品である。「おっ、題名にある家裁のサイの字がまちがっとるばい。」というご指摘もあろうかと思うが、これでいいのだ。主人公の桑田判事はいつも植物の世話ばかりしている何となくぼーっとした判事である。そして彼の少年の非行に対する取り組みも植物の世話とよく似ている。「育てなければ…毎日愛して、そこから始めませんか」と言う桑田判事の語りかけは家裁は裁くところではなく栽(そだ)てるところだというこの作品の底流に流れている。だから〈栽〉の字でいいのである。
 扱われている素材は少年の非行である。教育の現場(学校やら家庭)が切り捨ててしまった少年少女たちの傷をそのまま受け入れ、自分の力で育っていけるように桑田判事は彼らに接していくのである。
 東京第二弁護士会の山崎司平氏が監修しているので、事例はおおむね実際の事件に基づいているのかもしれない。それだけのリアリティがあるし、法律的なバックグラウンドも確かである。きびしい状態に置かれた子どもたちを我々はどう理解しているのか、を具体的な事件を素材に見つめてみることは必要ではないだろうか。特に法律の世界は無視し、教育の理念も省みずに子どもを切り捨てている教育現場の人間にはぜひとも読んでほしい作品である。また、第十三巻から十五巻はあの福岡でおきた生き埋め体罰事件をモチーフとして描かれている。全十五巻のうち三巻を費やして語らなければならないほど、あの事件は桑田判事にとっても重たい事件であったのだろう。それに対して福岡の教員は答えを出したのだろうか。三越三郎というどこかで聞いたような名前の博多弁をしゃべる弁護士も登場する。さあ、あなたも姿と名前を変えて出ているかもしれないよ。


◎実は荒れている少年たちに読ませたい。
   ★★★★★(これは特上五つ星)

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2010年04月02日

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