あらすじ
明治17年、伊藤博文邸の新入り書生となった杉山潤之助の手記を、小説家の「私」は偶然手に入れた。そこに書かれていたのは、邸を襲った恐るべき密室殺人事件の顛末だった。奇妙な住人たちに、伊藤公のスキャンダル。不穏な邸の空気に戸惑いつつも、潤之助は相部屋の書生・月輪龍太郎とともに推理を繰り広げる。堂々たる本格ミステリの傑作、シリーズ第1弾!
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Posted by ブクログ
うーん...物語の設定だったり、主人公の潤之助のキャラクターだったりというところは良かったのだが、正直ミステリーとしては弱い。
著者は本格ミステリーを書きたかったようだが、これは本格ミステリーとは呼べないだろう。
密室トリックなんてものはないし、名探偵役と思わせていた月輪が実は偽物、というのも興醒め。
むしろ大河内や岩村たちが警察関係者だった、という事実の方が面白かった。
次作、『黒龍荘の惨劇』は巷の評価通り良作であることを祈る。
Posted by ブクログ
事件そのものが小粒なのと、歴史上の人物の造形が浅いところに物足りなさが残りますが、密室、推理合戦、手記形式を利用したミスディレクション、大どんでん返しなど、推理小説のネタが盛り沢山ですし、事件と時代背景を上手く絡めているところや、歴史小説なのにライトに読めるところなど好印象な点が多く、トータルで見ればなかなか良く出来た作品だと思います。
Posted by ブクログ
去年『黒龍荘の惨劇』が注目を浴び、不覚にも未読で歯痒い思いをしていたので、前作にあたる博文邸が文庫化したと聞きさっそく購入しました。
時代小説の書き手とあって、文章は読みやすくストーリーもテンポよく進むので飽きることはありません。
ですが、明治時代が舞台ではあるものの、事件が起きた段階ではオーソドックスな本格ミステリという印象は拭えませんでした。
しかし、解決編に至って本書が一筋縄ではいかない、憎々しい仕掛けが施された怪作であったことがわかります。ミステリが好きでないとこの仕掛けは思いつかないでしょう。
『黒龍荘』を読むのが楽しみになる良作でした。