【感想・ネタバレ】黒百合のレビュー

あらすじ

昭和27年の夏休み。14歳だった「私」こと進と一彦は、六甲山にあるヒョウタン池のほとりで、不思議な雰囲気を纏った同い年の少女と出会う。池の精を名乗ったその香という少女は、近隣の事業家・倉沢家の娘だった。三人は出会った翌日からピクニックや山登りを通して親交を深めてゆく。自然の中で育まれる少年少女の淡い恋模様を軸に、昭和10年のベルリン、昭和15年の阪神間を経由して、物語は徐々にその相貌を明らかにしてゆく。そして、最後のピースが嵌るとき、あらゆる読者の想像を超える驚愕の真相が描かれる。数々の佳品をものした才人による、工芸品のように繊細な傑作ミステリ。/解説=戸川安宣

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Posted by ブクログ

ネタバレ

昭和27年、戦争が終わりサンフランシスコ平和条約が結ばれた年の夏。「私」こと寺元進は14歳の夏休みを父の友人である浅木氏の別荘がある六甲で送ることになる。そこで出会った浅木氏の息子・一彦と地元の事業家の娘・香との交流、中学生の男女の淡い恋模様の始まり。

文芸+ミステリということでイニシエーションラブのようにミステリであることを作品内で示さない作品ですね。
<六甲の女王>を相田真千子に<車掌>を日登美の夫に誤認させるようなプロット。正直、六甲の女王についてはミスリードの為にだけ存在する人物であまり好みではない手法だが本作は示された人物内で犯人を推理するような形式でもないので許容範囲。両者が別人である伏線も細やかで素晴らしいね。

どうやら浅木真千子と日登美の関係は続いているらしい。少なくとも日登美の方は夫に冷めてるのに加え、木の玩具が部屋にあったことがそれを匂わせてる。ここがおそらく本作のタイトルである黒百合という蠱惑的なタイトルに掛かっているのだろう。香にプレゼントされた純潔でストレートな白百合に対して、どこかミステリアスで歪曲されたような黒百合な恋が裏で展開されたことが示唆されているのだと思う。

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2023年02月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これはミステリなの?
昭和初期とか戦後とかの少年少女の話は実はちょっと苦手なのだが、これは意外とその苦手感は感じずに読めた。が、一体なんなのか?
ずっと疑問符。

しかし、読後、ミステリでした。
即読み直し。

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2023年11月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

以前、『綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー』で綾辻行人さんが「多島さんが書いたド本格の長編を一度、読んでみたいですね」と発言していたのを読んだことがある。有栖川有栖さんとの対談での発言だったが、この作品こそ「多島流ド本格」と言えるものではないかと思う。

というのも、物語そのものは文芸ながら「謎の提示→真相の提示→種明かし」というミステリのフォーマットに則って書かれているからだ。ある理由からどの部分も非常にわかりにくく、わたしも初読では理解できなかったが、真相に関わる部分を再読して理解した。

トリックそのものや終盤の展開には気になる点もあるが、ミステリとして読んでも文芸として読んでも楽しめる作品だった。これが事実上の遺作になってしまったのは惜しいが、広く読まれてほしい。

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2023年05月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ラストでの仕掛けに、物語の全ての要素が奉仕しているタイプのお話。あからさまなミスディレクションを仕掛けて、読者の目をそらし、使い古しのトリックを巧妙に使って、最後はうっちゃる。だからミステリとしての評価は高い。
けれど裏表紙の惹句にある「文芸とミステリの融合」には首を傾げる。このお話はトリックが全てのお話。三人の少年少女の繊細な物語に、心を惹かれてきた読者は結末で梯子を外されたような思いをするはずだ。基本的にこのお話は、そういうことはどうでもいいのである。これはそういうもの。

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2021年09月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

〇 概要
 時代は昭和27年。六甲の山中にある,父の旧友の別荘に招かれた14歳の少年が主人公。少年は,その家で同い年の一彦とともに,池のほとりで不思議な少女,香と出会う。夏休みの宿題のスケッチ,ハイキング,淡い恋,身近な人の謎めいた死―少年二人と少女の姿を瑞々しい筆致で描き,文芸とミステリの融合を果たした作品

〇 総合評価
 非常に評価が高い作品。個人的な感想としては,ミステリとしての完成度より,小説としての完成度が高い作品だと感じた。ミステリとしての驚きは,相田真千子が日登美と付き合っていた車掌だという部分に集約される。ミステリを読みなれているので「車掌が男性とは限らない」といううがった見方をしてしまうが,車掌=男性として読んでしまうと,かなり驚けるだろう。しかし,そのような驚きを演出するような描き方をせず,丹念に読めば気付いてしまうような伏線の出し方をしている。同じプロットで綾辻行人あたりが書けば,全く別の仕上げになっていただろう。多島斗志之らしい底意地の悪さもあって,個人的には非常に好きな作品。★4で。


〇 サプライズ ★★★☆☆
 相田真千子が,六甲の女王ではなく,相田一彦の母であることが明かされるのは,驚きではあるが,きっちりと伏線が描かれているので,「驚愕」というより,「なるほど」とうならされる。日登美が付き合って居たのが相田真千子であることも同様。なまじ,人間がしっかり描かれているので,納得してしまい,驚愕とまでいかないのだ。小説としてデキがいいために,ミステリ的な驚きが減ってしまうというジレンマ。ミステリ的な驚きを優先すれば,描き方も変わるのだろうが…★3で。

〇 熱中度 ★★★☆☆
 小説のデキがよく,十分楽しめる。しかし,先が気になるように描くというより,丹念に,丁寧に描かれているので,気になって読むのがやめられない!というほどではない。全体から見れば必要な伏線であるために,たいくつな部分もある。小説とはそういうものなのだろう。★3で。

〇 インパクト ★★★☆☆
 相田真千子が浅田一彦の母であったという真相は,十分なインパクトはある。とはいえ,このインパクトに頼った小説ではなく,寺本進,相田一彦,倉沢香の一夏の青春の姿を描いている部分の読み応えが十分であるため,反対に,インパクトが薄れてしまっている。ミステリとしてのインパクトは★3だろう。

〇 キャラクター ★★★★★
 寺元進,浅田一彦及び倉沢香の3人のキャラクターが十二分に描かれているほか,小柴一造,相田真千子,倉沢日登美など,全てのキャラクターが極めて魅力的に描かれている。人間がしっかり描かれている小説は面白いということが再確認できた。文句なしに★5。

〇 読後感 ★★★☆☆
 相田真千子が,倉沢貴久男と貴代司を殺害していることが分かるラストなので,殺伐としたラストになってもおかしくないのだが,読後感は悪くない。寺元進の回想という形で物語が描かれており,寺元進はその事実を知らないからかもしれないが。とはいえ,読後感がよいというほどでもなく★3か。

〇 希少価値 ★☆☆☆☆
 非常に評価が高い作品であり,出版してそれほど日が経っていないので今は手に入りやすい。しかし,多島斗志之の作品がいつまでも手に入りやすいとは限らない。創元推理文庫から出版されているので,細々と版を重ねていくと信じたいが…。

〇 トリックなどのノート
 相田真千子(黒百合のお千)は,かつて,倉沢貴久男と付き合っていた。しかし,ベルリンに駆け落ちすると嘘をつかれ,貴久男に捨てられる。
 昭和10年11月に,小柴翁に連れられて寺元と浅木がベルリンを訪れていた際に,倉沢真千子に出会う。
 その後,日本で倉沢真千子は,浅田謙太郎に偶然,再会し,小柴一造の計らいで,阪急電鉄の運転手として働く。相田真千子は,運転手として働いているときに,倉沢日登美と付き合う。その後,倉沢貴久男から倉沢日登美と別れるように脅され,殺されそうになるが,反対に,貴久男を殺害する。このとき,足を負傷する。
 その後,相田真千子は,浅田謙太郎と結婚する。
 昭和27年,寺元進が,浅田家の別荘で夏休みを過ごすことになる。寺元進は,同じ歳の浅田一彦と仲良くなり,倉本貴久男の愛人の子である倉本香と仲良くなる。この年に,倉本貴久男の弟である倉本貴代司から倉本貴久男殺しのことで脅迫を受けた相田真千子は,倉本貴久男を殺害する。
 ストーリーはこの流れだが,この作品では「六甲の女王」と呼ばれる喫茶店のオーナーが登場し,この人物が相田真千子と誤認させるような書き方がされている。また,倉沢日登美が付き合っていたのは,男性であると思わせる描写がされている。
 最後に,相田真千子が,浅田謙太郎の妻であることが明かされ,相田真千子が倉本貴久男と貴代司を殺害した犯人であることが明かされる。

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2017年02月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この小説に探偵は出てこないので、一体何がどうなっていたのかは自分の頭で考えなくてはなりません。

ラストを読むまで完全に叙述トリックにやられていました。何度か読み返してようやく頭の整理がつきました(遅すぎ笑)

ベルリンにいた女性「相田真千子」=若かりし日登美叔母さんと交際していた「運転手」=一彦の「義理の母」

これで合ってますよね?笑
六甲の女王と日登美の旦那さんは完全なるダミーでした笑

タイトルの黒百合の百合はそっちの方の意味も含んでいるんでしょうか?



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2021年12月09日

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