あらすじ
昭和27年の夏休み。14歳だった「私」こと進と一彦は、六甲山にあるヒョウタン池のほとりで、不思議な雰囲気を纏った同い年の少女と出会う。池の精を名乗ったその香という少女は、近隣の事業家・倉沢家の娘だった。三人は出会った翌日からピクニックや山登りを通して親交を深めてゆく。自然の中で育まれる少年少女の淡い恋模様を軸に、昭和10年のベルリン、昭和15年の阪神間を経由して、物語は徐々にその相貌を明らかにしてゆく。そして、最後のピースが嵌るとき、あらゆる読者の想像を超える驚愕の真相が描かれる。数々の佳品をものした才人による、工芸品のように繊細な傑作ミステリ。/解説=戸川安宣
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
14才の少年少女のひと夏の恋物語…と思いきや伏線とミスリードだらけですっかり騙されました。
二本立ての映画を観た感じ。
多島作品は初めて。ほかも読んでみたいな。でもこの作品が最後なんですね。失踪されてるって知って、また驚きました。
Posted by ブクログ
昭和27年、戦争が終わりサンフランシスコ平和条約が結ばれた年の夏。「私」こと寺元進は14歳の夏休みを父の友人である浅木氏の別荘がある六甲で送ることになる。そこで出会った浅木氏の息子・一彦と地元の事業家の娘・香との交流、中学生の男女の淡い恋模様の始まり。
文芸+ミステリということでイニシエーションラブのようにミステリであることを作品内で示さない作品ですね。
<六甲の女王>を相田真千子に<車掌>を日登美の夫に誤認させるようなプロット。正直、六甲の女王についてはミスリードの為にだけ存在する人物であまり好みではない手法だが本作は示された人物内で犯人を推理するような形式でもないので許容範囲。両者が別人である伏線も細やかで素晴らしいね。
どうやら浅木真千子と日登美の関係は続いているらしい。少なくとも日登美の方は夫に冷めてるのに加え、木の玩具が部屋にあったことがそれを匂わせてる。ここがおそらく本作のタイトルである黒百合という蠱惑的なタイトルに掛かっているのだろう。香にプレゼントされた純潔でストレートな白百合に対して、どこかミステリアスで歪曲されたような黒百合な恋が裏で展開されたことが示唆されているのだと思う。
Posted by ブクログ
信頼できる読書家さんの感想を以前に読み、またある時行きつけの書店でもずらりと棚に並べられた推し作品になっていたこともあり、ずっと読みたかった一冊。
いや、みごとに騙されました。途中で見抜けたと思いこみいい気になって読んでいたら、最後まさかの事実関係の語りから真相の絵がすべて鮮やかに浮かび上がった時には「うわぁ」と声を上げてしまった。幾重にも広がる人間関係が持った接点でこんなことができるとは。登場する女性達それぞれに意味深な雰囲気があること、語りの3人がそれぞれうまく役割を果たしていること-戦後の14才の夏を振り返ってその時の心情のママのように語る男性、WWII直前のベルリン出張中のビジネスマン、太平洋戦争中の女学生との「ママゴトのような交際」を語る電車の運転手-。特に少年の視点の語りが大部を占めるためか、ミステリのようで青春小説のような不思議な世界にもなっている。単調ながら綺麗で品を失わない文章も魅力的だった。本作脱稿後行方不明となったとのことだが、著者には是非もっと多くの作品を描いて欲しかった。
Posted by ブクログ
多島斗志之の長篇ミステリ作品『黒百合(英題:a Black Lily)』を読みました。
多島斗志之の作品を読むのは初めてですね。
-----story-------------
「六甲山に小さな別荘があるんだ。きみと同い年のひとり息子がいるので、きっといい遊び相手になる。一彦という名前だ」
父の古い友人である浅木さんに招かれた私は、別荘に到着した翌日、一彦とともに向かったヒョウタン池でひとりの少女に出会う。
夏休みの宿題、ハイキング、次第に育まれる淡い恋、そして死。
1952年夏、六甲の避暑地でかけがえのない時間を過ごす少年たちを瑞々しい筆致で描き、文芸とミステリの融合を果たした傑作長編。才人が到達した瞠目の地平!
*第1位『『ミステリが読みたい!2010年版』国内篇サプライズ部門
*第2位『ミステリが読みたい!2010年版』国内篇ナラティヴ部門
*第4位『ミステリが読みたい!2010年版』国内篇総合部門
*第7位『このミステリーがすごい!2009年版』/国内編
*第7位 CSミステリチャンネル「闘うベストテン2008」/国内部門
*第8位『週刊文春』「2008ミステリーベスト10」/国内部門
*第8位『ミステリが読みたい!2011年版』ゼロ年代ミステリベスト・ランキング国内篇
-----------------------
2008年(平成20)に刊行された作品です。
■Ⅰ 六甲山 1952年夏①
■Ⅱ 相田真千子 昭和10年
■Ⅲ 六甲山 1952年夏②
■Ⅳ 倉沢日登美 昭和15~20年
■Ⅴ 六甲山 1952年夏③
■Ⅵ ………… 昭和27年
■Ⅶ 六甲山 1952年夏④
■解説 作者渾身の一作 戸川安宣
六甲の山中にある、父の旧友の別荘に招かれた14歳の私は、その家の息子で同い年の一彦とともに向かった池のほとりで、不思議な少女・香と出会った……夏休みの宿題のスケッチ、ハイキング、育まれる淡い恋、身近な人物の謎めいた死──1952年夏、六甲の避暑地でかけがえのない時間を過ごす少年ふたりと少女の姿を瑞々しい筆致で描き、文芸とミステリの融合を果たした傑作長編。
物語の最後にすべてのピースがはまったときの衝撃……心地よく騙されましたねー 読後におーっ、そういうことか! という感じで、Ⅱ章、Ⅳ章、Ⅵ章を読み返してしまいました、、、
叙述と伏線が巧妙な好みのタイプの叙述トリックだったし、14歳の少年少女の成長を描いた好みのタイプの青春小説でもあったので、愉しく読めました……機会があれば、多島斗志之の他の作品も読んでみたいですね。
Posted by ブクログ
今回はとりわけ自分の勘の鈍さが浮き彫りになったと感じてます。昭和何年と西暦がよく分からないので時系列の困惑が最初にありました。それが解決した後においてもこのトリックに気づくのにラグが生じていたと思います。
単純に3人の恋模様だけでは終わらない複雑さと我々のちょっとした先入観を利用したミステリーは他には味わえない深みがありました。
Posted by ブクログ
最初は少年少女の淡い恋愛模様と随所に挟まれる過去のパートの繋がりが分からず「読み物として面白いけどどこがミステリーなんだろう?」と訝しげに読みつつ、最後にようやく「あ、これは紛れもないミステリーだ。」という風に驚かされた。思った以上に複雑だったのでまた再読したい。
Posted by ブクログ
これはミステリなの?
昭和初期とか戦後とかの少年少女の話は実はちょっと苦手なのだが、これは意外とその苦手感は感じずに読めた。が、一体なんなのか?
ずっと疑問符。
しかし、読後、ミステリでした。
即読み直し。
Posted by ブクログ
以前、『綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー』で綾辻行人さんが「多島さんが書いたド本格の長編を一度、読んでみたいですね」と発言していたのを読んだことがある。有栖川有栖さんとの対談での発言だったが、この作品こそ「多島流ド本格」と言えるものではないかと思う。
というのも、物語そのものは文芸ながら「謎の提示→真相の提示→種明かし」というミステリのフォーマットに則って書かれているからだ。ある理由からどの部分も非常にわかりにくく、わたしも初読では理解できなかったが、真相に関わる部分を再読して理解した。
トリックそのものや終盤の展開には気になる点もあるが、ミステリとして読んでも文芸として読んでも楽しめる作品だった。これが事実上の遺作になってしまったのは惜しいが、広く読まれてほしい。
Posted by ブクログ
多島斗志之さんのミステリー『黒百合』
難しかったーッ(^^;;
『ラスト五ページの衝撃』?!
私の場合、わからない事が衝撃だったーッ(笑)
難しいよ、と聞いていた
伏線がわからない人はそのままの小説だと思うだろう、と聞いていた
時代が前後して時系列がわかりにくいので、負けてなるものか!とメモをとりながら読んだのだが。。。
誰が宝急電鉄の車掌だった?
ここが一番のポイントだよねー!
どうしてみんな足を引きずっている?
わからなくてネタバレを検索した
人物相関図も見た
だがいまいちピンと来ない
ミスリードが多い
ダミーもいる
タイトルの意味はわかった
再読すれば違うはず
わかっていて読むとまた違うだろう
でも、この落ち着いた読み心地は好きなんだよね
少年少女の爽やかな六甲での淡い夏恋物語も良かった
好きなのにわからなかった、と複雑な気持ちにさせられた作品だった
Posted by ブクログ
最後に謎解きで解説してくれないスタイル。
というわけで、読み直すというほどでもないけど、えーっと、結論としてはどうなん?と振り返る必要はあるかな。賢い人は要らないかもだけど。
と言ってもめっちゃ難しいことはないので、ちょっとした頭の体操という感じかな。たまにはこういうのも良いか。
一番のポイントはやっぱおばさんなんかなー。しかしバレないとかあるんかな。いやしかし。
とかなんとか妄想するのもいとおかし。
Posted by ブクログ
読みやすくて、甘酸っぱい恋物語もよかった笑
途中描かれたあの人は、のちの物語のあの人?って繋がりがみえてくるのがいいよね。
でももう少し頭の整理必要みたい、、すっきりしたようですっきりしてない部分が残ってるよ〜
ーーー
ちょっと解説みて、震えてる。え、あれもこれも全部繋がってたなんて!!
考え始めたら興奮して眠れなくなったくらい上手い!!
星もひとつ増やした笑 もっかい読み直そ
Posted by ブクログ
ラストでの仕掛けに、物語の全ての要素が奉仕しているタイプのお話。あからさまなミスディレクションを仕掛けて、読者の目をそらし、使い古しのトリックを巧妙に使って、最後はうっちゃる。だからミステリとしての評価は高い。
けれど裏表紙の惹句にある「文芸とミステリの融合」には首を傾げる。このお話はトリックが全てのお話。三人の少年少女の繊細な物語に、心を惹かれてきた読者は結末で梯子を外されたような思いをするはずだ。基本的にこのお話は、そういうことはどうでもいいのである。これはそういうもの。
Posted by ブクログ
最初のうちは、進と一彦と香の三人の交流が淡々と描かれ
単純に「すらすら読みやすい」「特に大きな展開もないな…」と思っていました。
しかし、時折、挿入される異なった時間軸からみた登場人物達の描写が後にとても深い意味を帯びてきて、そこに気づき始めた時には、面白くて一気読みしてしまいました。
特に、最後の数ページに渡る怒濤の展開には驚き、
「そういうことだったのか!」と何度も、前のページに戻ってはこれまでの歩みを一つ一つ辿っていきました。
Posted by ブクログ
〇 概要
時代は昭和27年。六甲の山中にある,父の旧友の別荘に招かれた14歳の少年が主人公。少年は,その家で同い年の一彦とともに,池のほとりで不思議な少女,香と出会う。夏休みの宿題のスケッチ,ハイキング,淡い恋,身近な人の謎めいた死―少年二人と少女の姿を瑞々しい筆致で描き,文芸とミステリの融合を果たした作品
〇 総合評価
非常に評価が高い作品。個人的な感想としては,ミステリとしての完成度より,小説としての完成度が高い作品だと感じた。ミステリとしての驚きは,相田真千子が日登美と付き合っていた車掌だという部分に集約される。ミステリを読みなれているので「車掌が男性とは限らない」といううがった見方をしてしまうが,車掌=男性として読んでしまうと,かなり驚けるだろう。しかし,そのような驚きを演出するような描き方をせず,丹念に読めば気付いてしまうような伏線の出し方をしている。同じプロットで綾辻行人あたりが書けば,全く別の仕上げになっていただろう。多島斗志之らしい底意地の悪さもあって,個人的には非常に好きな作品。★4で。
〇 サプライズ ★★★☆☆
相田真千子が,六甲の女王ではなく,相田一彦の母であることが明かされるのは,驚きではあるが,きっちりと伏線が描かれているので,「驚愕」というより,「なるほど」とうならされる。日登美が付き合って居たのが相田真千子であることも同様。なまじ,人間がしっかり描かれているので,納得してしまい,驚愕とまでいかないのだ。小説としてデキがいいために,ミステリ的な驚きが減ってしまうというジレンマ。ミステリ的な驚きを優先すれば,描き方も変わるのだろうが…★3で。
〇 熱中度 ★★★☆☆
小説のデキがよく,十分楽しめる。しかし,先が気になるように描くというより,丹念に,丁寧に描かれているので,気になって読むのがやめられない!というほどではない。全体から見れば必要な伏線であるために,たいくつな部分もある。小説とはそういうものなのだろう。★3で。
〇 インパクト ★★★☆☆
相田真千子が浅田一彦の母であったという真相は,十分なインパクトはある。とはいえ,このインパクトに頼った小説ではなく,寺本進,相田一彦,倉沢香の一夏の青春の姿を描いている部分の読み応えが十分であるため,反対に,インパクトが薄れてしまっている。ミステリとしてのインパクトは★3だろう。
〇 キャラクター ★★★★★
寺元進,浅田一彦及び倉沢香の3人のキャラクターが十二分に描かれているほか,小柴一造,相田真千子,倉沢日登美など,全てのキャラクターが極めて魅力的に描かれている。人間がしっかり描かれている小説は面白いということが再確認できた。文句なしに★5。
〇 読後感 ★★★☆☆
相田真千子が,倉沢貴久男と貴代司を殺害していることが分かるラストなので,殺伐としたラストになってもおかしくないのだが,読後感は悪くない。寺元進の回想という形で物語が描かれており,寺元進はその事実を知らないからかもしれないが。とはいえ,読後感がよいというほどでもなく★3か。
〇 希少価値 ★☆☆☆☆
非常に評価が高い作品であり,出版してそれほど日が経っていないので今は手に入りやすい。しかし,多島斗志之の作品がいつまでも手に入りやすいとは限らない。創元推理文庫から出版されているので,細々と版を重ねていくと信じたいが…。
〇 トリックなどのノート
相田真千子(黒百合のお千)は,かつて,倉沢貴久男と付き合っていた。しかし,ベルリンに駆け落ちすると嘘をつかれ,貴久男に捨てられる。
昭和10年11月に,小柴翁に連れられて寺元と浅木がベルリンを訪れていた際に,倉沢真千子に出会う。
その後,日本で倉沢真千子は,浅田謙太郎に偶然,再会し,小柴一造の計らいで,阪急電鉄の運転手として働く。相田真千子は,運転手として働いているときに,倉沢日登美と付き合う。その後,倉沢貴久男から倉沢日登美と別れるように脅され,殺されそうになるが,反対に,貴久男を殺害する。このとき,足を負傷する。
その後,相田真千子は,浅田謙太郎と結婚する。
昭和27年,寺元進が,浅田家の別荘で夏休みを過ごすことになる。寺元進は,同じ歳の浅田一彦と仲良くなり,倉本貴久男の愛人の子である倉本香と仲良くなる。この年に,倉本貴久男の弟である倉本貴代司から倉本貴久男殺しのことで脅迫を受けた相田真千子は,倉本貴久男を殺害する。
ストーリーはこの流れだが,この作品では「六甲の女王」と呼ばれる喫茶店のオーナーが登場し,この人物が相田真千子と誤認させるような書き方がされている。また,倉沢日登美が付き合っていたのは,男性であると思わせる描写がされている。
最後に,相田真千子が,浅田謙太郎の妻であることが明かされ,相田真千子が倉本貴久男と貴代司を殺害した犯人であることが明かされる。
Posted by ブクログ
読みやすい文章でサクサク進む。どこがミステリーなんだろうなぁ、と思って最後の数ページで、ああそう言うことかと。まぁ小説ならではのトリックだよな。
あと、昭和と西暦がごちゃ混ぜでややこしい。表現はもう少し分かりやすくしてほしかった。
面白かったけど、もうワンパンチあっても良かったなぁと思った。少しだけ物足りないなぁ。
Posted by ブクログ
[1]ボーイ・ミーツ・ガール&三角関係が昭和二十七年の物語で、昭和十年のベルリンでのできごとと昭和十五年〜二十年の過去話も描かれるがどういうつながりがあるのかわからない。同じ名の人物が出てはいるのだが。
[2]ミステリのつもりで読み始めたのにミステリらしくない淡々とした展開に、これはたぶん叙述トリックものやろうなあと思っていくらか警戒して読んだので結末は予想の範囲内に収まった。
[3]真相は読者にしかわからず、昭和二十七年の少年少女が狂言回しのためだけの存在に終わったのが残念かも。こっちはこっちで事件と謎が、もしくは真相を暴くような活躍が欲しかったかも。
■簡単な単語集
【相田真千子/あいだ・まちこ】海外視察中の小芝一造一行がベルリンで出会った女性。なかなか打ち解けてくれない。誰かを待っているそうだ。
【浅木一彦】→一彦
【浅木謙太郎/あさぎ・けんたろう】進の父の古い友人。
【香/かおる】倉沢香。十四歳の進や一彦がヒョウタン池とのほとりで知り合い二人とも恋してしまった同じ年の少女。美人というほどではないが笑ったときの口もとがキュート。芦屋に住み六甲に別荘があり神戸女学院に通っている。倉沢家の別荘は広壮さと豪華さでご近所でも有名。進と一彦は彼女の言動に一喜一憂することになる。
【香の叔父】→貴代司
【香の母】義母。
【一彦】進の友人となった。浅木謙太郎の息子。利口さを鼻にかけているような性格に見えた。口笛は吹けない。
【一彦の母】木の玩具づくりが得意。梅田の宝急百貨店におろしている。
【ガルベン池】六甲で泳げる池はここだけ。香の兄が溺れかけたことがあって香の家では遊泳禁止を言い渡しているとか。
【貴代司/きよじ】香の叔父。デカダンスやけど話のおもろい人らしい。日登美の夫、新也ではない。
【倉沢香】→香
【倉沢貴久男/くらさわ・きくお】日登美の兄。ということは香の父かもしれない。もう一人体の弱い兄がいるらしいのでそちらかもしれない。愛人などつくっていた。
【黒ユリお千】香の父の恋人だったらしい。
【黒ユリ組】戦前の東京の女学校の不良グループのひとつ。リーダーは「黒ユリお千」。と、新也が言っていた。
【ケーブルカー】六甲ケーブルは一回だけ乗ったことがあります。特に必要はなかったのですが、まあ冥土の土産的気分で。
【神戸女学院】香が通い、日登美の母校でもあるプロテスタント系ミッションスクール。宝急電鉄では専用車両を運用していた。
【小芝一造/こしば・いちぞう】宝急電鉄の創始者。東京電燈の社長でもあった。三十歳の浅木謙太郎と三十二歳の寺元が海外視察のお供をした。小林一三さんがモデルと思われる。
【駒石】倉沢家の運転手。香の母と愛人関係にあるかもしれない? その筋の人と付き合いがあるかもしれない?
【十四歳】人生に現実味はなく楽しさも鬱屈も等しくありいちばんおもろい時期。この物語時点の十四歳は美空ひばりや江利チエミの一歳下。
【新也】日登美の夫。入り婿。昔の名字は船津。現在の倉沢家の事業を差配している。元宝急社員で浅木とは知り合いだったようだ。片足を痛めている感じ。
【進】寺元進。語り手の「私」。父親は東京電力勤務。東京から夏休みの間だけ六甲山の浅木家に滞在することになった。
【寺元進】→進
【日登美/ひとみ】香の叔母。父親の妹。若々しく、香の姉のように見える。本好き。ラジオドラマの「君の名は」にハマっているが本人はたまたま聴いてるだけというような言い方をする。神戸女学院出身。進の感想ではやさしいけれど少しお高い。
【日登美の夫】→新也
【ヒョウタン池】六甲山はよく歩いてた山ですがそんな名前の池は実在してたような気がします。まあ、どこにでもある名前ですのでこのお話の池と同じものかどうかはわかりません。ジュンサイが採れる。
【宝急電鉄/ほうきゅうでんてつ】浅木さんの勤める会社。モデルは阪急電鉄だと思われる。
【ロープウェイ】かつてはロープウェイもあったが戦争中に金属供出のため撤去された。
【六甲山】六甲山は馴染のある場所なのでその雰囲気を表すための風景描写とかもっと欲しかったような気がする。
【六甲山ホテル】小芝一造が夏の間暮らしている。これもまた、冥土の土産くらいのつもりで一度だけ泊まったことがあります。近場なんで泊まる用事はまったくなかったのですけど。
【六甲の女王】小芝一造がそう呼んだ。以前はバーか何かを営んでいたようだが今は六甲山で喫茶店を営んでいる。三十六歳。
【私】→進
Posted by ブクログ
昭和10年と27年を行ったり来たりしながら、会話の中の登場人物の関係が明らかになる。ずいぶんと狭い世界にいるのか登場人物が錯綜しててなるほどねー、という感じではあるけど感動するドラマとかトリックみたいなものはなかった。
Posted by ブクログ
ジャンルはミステリだし、まあ騙されたが、あまりスカッと系ではなかった。半分以上を占める少年少女3人の六甲物語が良いし、それを中心に時折別の物語を挟みつつクライマックスへの急加速は面白かった。構成上仕方ないところもあるが、人物相関がややこしい。
Posted by ブクログ
経験していない体験が、生まれていない時代の思い出が浮かんでくる、不思議な話。ミステリとか叙述とか、それはともかく、もう一度読み返すという行為で、思い出してみようかと思う、そんな作品。
Posted by ブクログ
多島作品を読むのは三作目ですが、作品ごとにまったく違うテイストに仕上がるのに驚きます。
『症例A』がサイコサスペンス。『二島縁起』が冒険・ハードボイルドに歴史要素を組み入れたミステリー。そしてこの『黒百合』は少年のみずみずしい筆致が印象に残る青春小説の味わい。作家名を隠したままそれぞれの作品を読んだら、同じ作家の作品とは気づかないかもしれない。
この小説では三つのエピソードが語られます。昭和27年、夏休みに避暑地に訪れた14歳の少年が同年代の男の子や少女と交流を深め、淡い恋心を抱いていく話が中心となります。
合間に挿入されるのは、昭和10年のドイツベルリンを舞台に、電鉄会社の会長や社員が出会ったミステリアスな若い女性の話。そして昭和15年の女学生と電車車掌の秘密の関係。
この三つのエピソードがどう結びつくのかがミステリとしての読みどころ。
個人的には展開が性急な印象が強かったり、肝心の登場人物の心理がよく読み取れなかったりして、消化不良なところはあったものの、エピソードの継ぎ目の構成や語りの上手さというものは強く感じました。
ミステリ面よりも前半から中盤にかけての青春小説の雰囲気の方が、印象が強かったかもしれない。淡い恋心もそうなのですが、男友達と恋のライバル関係のような雰囲気になり、それぞれが相手の一挙手一投足が気になって仕方なくなってしまう様子は、ほほえましくもありそしてまぶしかった。
作品の舞台が六甲の避暑地と自然豊かで、それらの情景描写や夏休みという季節感もあいまって、作品全体を通してどこか郷愁や幼心を思い出させます。その雰囲気が抜群によかったです。
Posted by ブクログ
真実を知った時、頭を掻きむしりましたね笑
何でミスリードをしてしまったのか。。
予想する → 分析する → ミスリードする → 真実知る
頭を掻きむしるよね、本当に。うわぁぁぁぁ!
作品内容は面白かったです。
ガキンチョとその親達の恋模様と訪れていた別荘地で
起きる奇妙な事件。ベルリン&空襲。
これ以上、書かないどこ笑
ただ、家族構成が分かりづらく読み手を混乱させます。
且つ多島先生の文章力で絶妙にカムフラージュさせ
頭を掻きむしる事になります。さすが、小説家。
解説とかも無いので、「?」で終わる方も多いかも。
今後読む小説で分析の知識を得ました!
もう、ミスリードはしない笑
Posted by ブクログ
本屋でふと目にして購入。最後まで読んでなるほどとは思ったが、事前に帯の宣伝で期待しすぎたせいか、ミステリーとしては、ちょっとがっかりしたところも。主人公の若かりし頃の恋の思い出語りを楽しむのがよい。
Posted by ブクログ
夏休みの淡い恋模様と大人たちの過去の話。
一番最後で真相がわかって、
絶対最初から読み直したくなる系ミステリー。
本当に最後の最後まで騙されてた!
脇役だと思っていた人が実は…というのは
やっぱり驚きますね!
読み直すと驚くくらい超緻密に構築されてて、
些細な描写が重要なヒントになっている。
「ここもそういうことだったのか!」
って感動することうけあいだ!
でも、話の大筋はわかったけど、
モデルの小林十三氏についてとか
挿入されているラジオドラマについてとか
もうちょい調べればわかることがありそうだし、
進が香にあげた白百合と黒百合の対比とかも
意識されてそうだから、
まだまだ気づけてないネタがありそう。
精巧で濃くて重たいミステリーという側面と、
少年たちの爽やかで切ない恋という要素も
十二分に楽しめるのがまたよい。
Posted by ブクログ
本格推理苦手なのに定期的に読んでしまう不思議。そして見事に騙されます。今回もきれいに騙されました。
少年少女たちの淡い恋情と、その親世代の薄暗い愛憎が交互に描かれますが、少年少女たちのひと夏の思い出の部分にばかり頭が行ってしまい、推理に必要な部分には全く興味が沸かない体たらく。嗚呼やはり私は阿保だった。
青春的な部分だけ書きますと、短期間で会わなくなってしまうけれど淡い恋を抱くというのは、少年時代の通過儀礼ですよね。本当に好きならば万難を排して会いに行く所でしょうが、小中学生の頃はちょっと離れただけであきらめざるを得ないですから。自分の昔を省みても少々甘酸っぱい気持ちになります。
Posted by ブクログ
この小説に探偵は出てこないので、一体何がどうなっていたのかは自分の頭で考えなくてはなりません。
ラストを読むまで完全に叙述トリックにやられていました。何度か読み返してようやく頭の整理がつきました(遅すぎ笑)
ベルリンにいた女性「相田真千子」=若かりし日登美叔母さんと交際していた「運転手」=一彦の「義理の母」
これで合ってますよね?笑
六甲の女王と日登美の旦那さんは完全なるダミーでした笑
タイトルの黒百合の百合はそっちの方の意味も含んでいるんでしょうか?
Posted by ブクログ
青春ラブストーリーと思いきや
現代と過去を行ったりきたりして
毎回騙されてしまう。
トリックが巧妙です。
退屈な日常で刺激が欲しい人はオススメです。
Posted by ブクログ
完全に騙されたー。まんまとミスリードされましたー。でもいまいちスッキリしないー。
進と一彦と香の3人の物語はとても素敵でした。読んだのがちょうど暑い日が続くときだったので、ノスタルジーに浸れました。
Posted by ブクログ
あー、なるほど。
騙される率100%と聞いて読んでみたけど
もう簡単に騙された。
というか正直推理しながら読んでなくって
本当にひと夏の少年少女の恋物語として
純粋に読んでしまったので、全然気づかなかった!
そして読解力がないので(笑)
解説を読んで、あああなんてスムーズな綺麗な
ミスリードなんだ、と感動しました。
夏だね、ジュブナイル。
Posted by ブクログ
普通の読み物として、充分楽しめた。
父親の友人、浅木謙太郎が持っている六甲山にある別荘で夏休みを過ごす14歳の寺元進。
そこで浅木の息子である同い年の一彦と、ひょうたん池と呼ばれる池に遊びに行ったとき、倉沢香というやはり14歳の女の子と出会う。
3人は仲良くなり、一緒の時間を過ごすようになる。香に惹かれていく進と一彦。裕福で恵まれた家庭に育ったかと思いきや、実は複雑な家庭環境で育った香。
その話と交互に、彼らの父親がまだ30歳位のときに、宝急電鉄の創始者、小芝一造の海外視察に同行したときの話が綴られる。旅先で偶然出会った相田真千子という若く美しい女性。
またそれらの話とは別に、香の叔母の日登美の学生時代の恋が語られる。
時代が前後するのと、登場人物が多いため、非常に分かりづらい。それがこのストーリーの肝なのかもしれないけど。
わたしは読んでいる最中に、謎があるとは思わなかったので、ただ普通の物語として読んだ。それはそれでとてもいい話だなと思った。
最後に、実はあの人はこの人だった。。。みたいなオチがあるのだけど、それは別にどうでもいいと思った。
毎日暑いので、わたしも六甲山の別荘に行って、池で泳ぎたい。読んでいる間は、とても涼しい爽やかな気持ちでいられたのがよかった。