あらすじ
「東京は人間がいちばんあったけぇ場所じゃねえか?」。隅田川の河川敷で暮らす硯木正一はしみじみ思う。ホームレスと呼ばれるものの、家はある。しかも、三食、酒、タバコありの優雅な生活。バッテリーを使えばテレビも楽しめる。東京にはほしいものがなんでも落ちている――。実在の人物をモデルに描く、自らの知恵と体を使って生きる男の物語。
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Posted by ブクログ
隅田川に実在のホームレスをモデルにした小説。これはある意味、本物のノマドなのでは!と衝撃を受けた。「家とは、生活とは、エネルギーとは、どのくらい必要なのか」普通の生活をしていると、全く見えないことばかり。実は12Vの電力でテレビ、パソコンなどの多くの電化製品が十分まかなえること、家の造りを把握しているので自分で自在に直せること。憧れるなー。
Posted by ブクログ
隅田川に暮らすホームレスの生活を舞台にした小説。東京にはこれだけゴミがあったんだなあと思う。建築学科卒の作者だけあって、やっぱり、「家」についての知識がすごい。
建物としての家と、そのなかに展開されるホームとしての家。ハードとソフトのどちらについても考えさせらる内容だった。
もちろん、人の暮らしはどんな家にすむか、というハードに左右されるところがあって、どんな家にすみたいか、というのはその人の哲学が反映されるところでもある。家とは、中であって外でもあるんだなと思う。今までなかった「家」ができてくるのは、新しい哲学の誕生なのかも。ていうか、ホームレスってすごく原始的というか古いものだと思ってたけど、もしかして新しいもの?ちょっとそこらへんまた調べてみたい。
主人公が都会のサバイバルさながら、廃材や家電製品、いらないものを拾ってきて路上生活をする。モノであふれかえる生活の裏目をかいている、しかしそんな都市生活にどこか息苦しさを感じているからこそ、あまりにも都合のいいことばかり起きてないか、と思うが、すごくうらやましくもある。
アパートを借りると、働かなくてはいけなくなる、という文章にもインパクトがある。働いてるからアパートを借りられるのではなくて。そんな見方もはっとさせられる。
とくに、一番最初の河原?で主人公が目覚めて、気持ちいいなー!地面と近いっていいなーってなる場面、夜中近い本屋で目をしょぼつかせながらこの本を読んでいて、猛烈に羨ましくなった。本捨ててもうこの生活をやめたくなった。最初は、もっとシンプルに暮らしたいって思って、それで仕事をやめたはずなのに。
なかなか、この都市生活から抜けるのは容易じゃない。ここまで思いきれたらと思うのに。毎日飲んで遊んでのんびり過ごす。それだけが叶えられれば、私たちは幸せなはずなのに。