あらすじ
「東京は人間がいちばんあったけぇ場所じゃねえか?」。隅田川の河川敷で暮らす硯木正一はしみじみ思う。ホームレスと呼ばれるものの、家はある。しかも、三食、酒、タバコありの優雅な生活。バッテリーを使えばテレビも楽しめる。東京にはほしいものがなんでも落ちている――。実在の人物をモデルに描く、自らの知恵と体を使って生きる男の物語。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
浅草の公園で寝ていたら、財布とバッグが盗まれた。
男は無一文になった。
隅田川沿いのホームレスたちのコミュニティに入り込み、いつの間にか路上生活が性に合っていた。
都市に出かけて採集し、工夫して新しくものを作る。
コンロを手に入れて暖かい食事を作るようになり、バッテリーを手に入れて家電製品を動かす。
廃材を手に入れて家を作り、お金にするためにテレホンカードやアルミ缶を採集する。
隅田川には人が集まった。
ホームレスだけじゃなく、何か面白そうだと普通の人も立ち寄るようになっていた。
そんな隅田川に現れたコミュニティにも終わる時が来る。
男は最後に隅田川という自由から旅立ち、より大きな自由へと旅に出る。
これは実在する、あるホームレスの話だ。
クリエイティビティは最新技術の追求なのか。
現代人が忘れた、生活そのものの求道者を描く。
Posted by ブクログ
「ゼロからはじめる都市型狩猟採集生活」→「TOKYO 0円ハウス0円生活」と読み進め、この考え方、生き方にハマって読んだ。隅田川沿いに住む「スーさん」が主役の自伝的小説となっている。ドロドロせずあっさり味な感じになっているのは、この生活自体がドロドロせずあっさり味なせいもあるかもしれない。
Posted by ブクログ
いまから10年くらい前に
「路上の夢」という、
これまたホームレスのことを扱った本を
読んだことを思い出しました。
正直、ホームレスに
あこがれもないんですけど
この2冊を読むと、
どっちが「普通」なのかが
よくわからなくなります。
いや、だからといって
ホームレス願望がある訳ではないのですが
一方で土地に縛られるのは
まっぴらごめんだ、という意識も強いです。
基本的には悲しいんですけど
なんだかうらやましい、そんな話です。
しかし、車のバッテリーが
そんなに使える存在だったとは。。
Posted by ブクログ
身一つで生きていくには人間力、コミュニケーション力、好奇心、独創性が必要なんだな。
好機を逃さないアンテナも重要。
生きるための知恵を獲得していかなきゃ。
Posted by ブクログ
主人公は、立ち位置が変わり新たな環境で生活することになるのですが、今まで経験したことのないことを経験し、その環境を楽しめる主人公に感動しました。
また、時が経つごとに、だんだん周囲の優しさがなくなって行くことに、今の日本の現状を表しているようで虚しさを感じました。
自分は困っている人がいたら、手を差し出せる人になりたいと思いました。
Posted by ブクログ
隅田川に実在のホームレスをモデルにした小説。これはある意味、本物のノマドなのでは!と衝撃を受けた。「家とは、生活とは、エネルギーとは、どのくらい必要なのか」普通の生活をしていると、全く見えないことばかり。実は12Vの電力でテレビ、パソコンなどの多くの電化製品が十分まかなえること、家の造りを把握しているので自分で自在に直せること。憧れるなー。
Posted by ブクログ
ホームレスとして暮らす主人公・硯木と隅田川沿いのホームレス仲間たち。「ホームレス」と言ってしまうとイメージが良くないけれど、お金ではなく知恵と工夫で生き抜いていく姿に、生き物としての本来の暮らし方を考えさせられた。
暮らしを楽しみ、ふわりと、しかし前向きでしなやかな生きていく――読んでいて楽しく、爽快な気持ちに。
p250
人間は、アイデアを使い、工夫し、方法を発明することで自分にとって必要な最小限の空間を発見することが出来る。さらに壁に囲まれた空間だけを家を感じるのではなく、脳味噌を使うことで、壁を通り抜けて広大な世界を自分の空間と体感出来る。
硯木は無意識にこの極小と無限大の感覚を同時に持ち合わせていた。彼にとって、自分が路上生活者であるということは、今はもう消え去っていた。
彼は自分のことを、住所も、コンクリート基礎でしっかり固められた家も持っていないが、地球という地面で生活する『ただの人間』であると考えていた。
硯木にとって、それはとても自由な気持ちになれた。
Posted by ブクログ
今から20年以上前、舞台は1990年代後半の東京、主役の路上生活者が読み手を終始わくわくさせてくれる物語であった。著者は東京の路上生活者を取材した「TOKYO 0円ハウス 0円生活」という本を書いており、その取材ネタを元に小説に落とし込んでいるので準ノンフィクション的な小説である。
僕自身、出世しないタイプというか、宝探しや小さなリサイクルや小屋建てや青空宴会が大好きであって読んでてずっとわくわくだった。またこれは小説の要素だと思うけどクロやモチヅキさんのようなひたすらに利他的な仲間がすごくいいなあと思った。
テレカ、モーニング娘。、時代を感じる一方、あの頃は今より絶対息苦しくない緩い時間で生きてたなあと。インターネットは膨大な知識とコンテンツを人に還元した代わりに、過剰な生産貨幣社会も生み出し、時間と心にゆとりが無くなったきたのは間違いないと思う。
あと寝れなくする目的で設置してるベンチ中央の手すりとか花壇、いつもながら見るたびに酷いよなあって思います。
Posted by ブクログ
隅田川に暮らすホームレスの生活を舞台にした小説。東京にはこれだけゴミがあったんだなあと思う。建築学科卒の作者だけあって、やっぱり、「家」についての知識がすごい。
建物としての家と、そのなかに展開されるホームとしての家。ハードとソフトのどちらについても考えさせらる内容だった。
もちろん、人の暮らしはどんな家にすむか、というハードに左右されるところがあって、どんな家にすみたいか、というのはその人の哲学が反映されるところでもある。家とは、中であって外でもあるんだなと思う。今までなかった「家」ができてくるのは、新しい哲学の誕生なのかも。ていうか、ホームレスってすごく原始的というか古いものだと思ってたけど、もしかして新しいもの?ちょっとそこらへんまた調べてみたい。
主人公が都会のサバイバルさながら、廃材や家電製品、いらないものを拾ってきて路上生活をする。モノであふれかえる生活の裏目をかいている、しかしそんな都市生活にどこか息苦しさを感じているからこそ、あまりにも都合のいいことばかり起きてないか、と思うが、すごくうらやましくもある。
アパートを借りると、働かなくてはいけなくなる、という文章にもインパクトがある。働いてるからアパートを借りられるのではなくて。そんな見方もはっとさせられる。
とくに、一番最初の河原?で主人公が目覚めて、気持ちいいなー!地面と近いっていいなーってなる場面、夜中近い本屋で目をしょぼつかせながらこの本を読んでいて、猛烈に羨ましくなった。本捨ててもうこの生活をやめたくなった。最初は、もっとシンプルに暮らしたいって思って、それで仕事をやめたはずなのに。
なかなか、この都市生活から抜けるのは容易じゃない。ここまで思いきれたらと思うのに。毎日飲んで遊んでのんびり過ごす。それだけが叶えられれば、私たちは幸せなはずなのに。
Posted by ブクログ
隅田川の河川敷で暮らす実在の人物をモデルに描かれた小説。知恵を使って生きる路上生活者の力強さに圧倒される。また、自分の全く知らない東京が見えてくるというてんでも面白い。
ただし、このように前向きに生きる路上生活者ばかりではないということは、当然忘れてはならないし、一部の人が路上生活を強いられる社会になぜなったのかという点については、別に考える必要がある。
Posted by ブクログ
「TOKYO 0円ハウス 0円生活」を小説にしたもの。
上記の本の内容がほぼそのまま組み込まれていて、
「0円ハウス」を読んだ後だと、
「これはここの話か~」という発見があって面白い。
軽妙な語り口で読みやすいけれど、
小説としては少し物足りない。
問題があっさり解決しすぎている。
けれども、
たぶんこれは小説というよりは、
希望を含めた未来予想図として描かれているんだと思う。
そういう意味でいうと、
「一般意志2.0(東浩紀)」に似ている。
チョウメイさんの船になるパソコン管理の家や
スーさんのリヤカーハウスでの日本一周というのは、
「0円ハウス」で取材された人が語った夢であるが、
それが現実として描かれていることがその証拠。
Posted by ブクログ
面白かった。路上生活だからといって決して不幸だということはなく、世捨て人というわけでもない。人の繋がりを大切にし、生き生きとしているスーさんの生き様は魅力的です。
Posted by ブクログ
豊かさってこうゆうことかなと思わせてくれた作品。街全体が家であり、庭であるってすごく理想的だなと思った。現代に足りないものを示してくれた。人間関係はもちろんだけど、常に考えて行動すること。現状に満足したロボットみたいな現代人にスーさんは考えることの必要性を教えてくれた。
Posted by ブクログ
ホームレスという全く想像が付かない世界にどんどんのめりこんでいってしまいスグに読みきってしまった。
この本に出てくる人たちに限っていえば、人が思っているよりも暖かいし良い環境で、場合によっては擦り切れた人間関係の中で苦しんでる「家のある人」よりも幸せな人たちに見える。
Posted by ブクログ
著者についての予備知識も何もなく偶然読みだしたら、止まらなくなった。ホームレスも創意工夫と努力(?)しだいで、かくも楽しく暮らしていけるものだとは。その細部の具体的描写がおもしろい。途中までノンフィクション作品かと勘違いしていたくらいだ。この著者自身かなりユニークな人のようなので、今後の活躍に注目したい。
Posted by ブクログ
小説、モデルがいるのもあるし、物語というよりも
日記というか記録といった感じの文章でサクサクサクッと読めた。
ホームレス生活、メンタルには憧れるけど実際経験するのは、私には無理だな。
蚊に刺されるのも、寒いのも、暑いのも。
でも,工夫したり毎日楽しんでるのは凄くいいと思った。
Posted by ブクログ
実在のホームレスをモデルに書かれた「小説」。主人公の硯木が著者に向かって語り聞かせているような文体でサクサク読める。この本より後に書かれた『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』で著者の主張や、いろんなホームレスがいることを知っていたので驚きもせず読んだが、予備知識なしにこれだけ小説として読んだら、けっこう突飛なものだと思うかもしれない。主人公たちの創意工夫や生活態度には、ヴェルヌの『神秘の島』を髣髴とさせるものがある。また、隅田川を流れるチョウメイさんやラストシーンなどファンタジー風味すら感じる。
『ゼロから・・・』より、むしろ小説形式のこちらの方がホームレスの辛い側面も率直に描かれる。結局は体力・気力・才覚、そして仲間がいないとやっていけないのである。本当に狭いニッチに生きる人たちなので、誰にでも真似できるかと言えばそうではないだろう。
ラストは主人公らの旅立ちの場面であるが、実際、街中でなければこの生活は無理だろうな。
解説が石川直樹というのも意外なような納得感があるような。彼が書くように、他人と喧嘩しない硯木のしなやかな姿勢も読みどころのひとつ。
Posted by ブクログ
下町ロケット的な話かな?
と思って手にした本作でしたが、
全然違った!(笑)
まさかの隅田川沿いに住むホームレスの話。
お金を稼がなくても生きていく術を発明と例え、
そのあまりの充実した暮らしぶりがすごい。
主人公のすーさんには
実在のモデルがいて、筆者自ら取材しているだけあって、話の細部が生々しく、リアルさが伝わる。
Posted by ブクログ
会社の倒産後、全財産を盗まれてしまった硯木正一は、隅田川沿いに小屋を建てて生活を始めます。彼は、クロやモチヅキさん、ハシモトといった、金もなければ地位もないけれども、底抜けに明るく毎日を生きている人びととの出会や、そこにあるもので工夫をかさねていく生活に、充実をおぼえるようになります。
「豊かさ」とはなにかという根源的な問題を読みとることはもちろん可能ですが、イデオロギー的な主張は抑制されており、登場人物たちの魅力がストーリーの駆動力となっていて、おもしろく読みました。
Posted by ブクログ
なんとも前向きな物語、でした。
主人公は路上生活者、いわゆるホームレスです。
始まりは1990年代後半、舞台は題名にもある隅田川の沿岸、
“テレカ”などの単語にどこか懐かしさを感じながら、、
生きていくこととは「全てを捨てる」ところから、
こういうブレなさ、前向きさもあるのだなと、、うーん「強い」。
狩猟民族との観点はなるほどと、妙に納得です。
日本の原風景は農耕ですから、新鮮さを感じたのかもですが。
ただ、その狩猟する「獲物」も周囲とのつながりがあってこそで、
その周囲を「自然」に限定されないのが、時代を映しているようでもあり。
“自然の手伝いをして、その恵みを分けてもらう。”
ちょうど同時期に読んでいた『奇跡のリンゴ』での、
このフレーズが浮びました、まったくベクトルは逆なんですけどね。。
小説といいつつも、主人公達の息づかいまで感じるとれるような内容で、
これは実際に作者の方が、地に足のついた取材をされていたからなのかな、と。
「生きていく」ということをつきつめると、、なんて考えてしまいました。
Posted by ブクログ
路上生活者が主人公の話。
あることがきっかけで隅田川に住むことになるが、意外に快適であることに気づく。
食べ物には困らないし、自分で家を建てたり、電気だって生み出すことができる。
東京を自分の家として生活する人々の物語からは、なにか人として大切なことが感じ取れます。
Posted by ブクログ
坂口恭平氏による、彼の本に出てくるホームレスの鈴木さんを主人公にした小説。
ホームレスというと落ちるところまで落ちたという感じがするが、それでも、その人の工夫、感じ方次第で、ここまで豊かな生活を送れるというのは、前に読んだ坂口氏の本に続き、やはり驚き。
一見、主人公のスーさんの知恵や工夫の素晴らしさ、コミュニケーション能力の高さが目に付き、この人どこに行っても優秀じゃん、という気持ちになってしまう。
しかし、終盤でクロちゃんという、鈴木さんとは真逆の一見「無能」とも見える人物が、なんと台東区の色々な家でご飯を食べさせてもらっているなど、台東区を自分「家」のように使ってしまっているという驚きの事実が明かされる。
それも一つの才能のありかただ、と言ってしまえばそれまでなのだが、我々個人個人が、それぞれのやりかた、考え方で、世界を変える余地がまだ残されているのでは?と思った。
解説にもあったが、世界のルールを変えるために戦うというのは、相当な強い人間であっても、とても骨が折れる。
そうではなく、スーさんやクロちゃんのように、自分独自の視点で世界を再発見することが、これからの時代には特に重要なのではないかと感じた。
Posted by ブクログ
「東京は人間がいちばんあったけぇ場所じゃねえか?」。隅田川の河川敷で暮らす硯木正一はしみじみ思う。ホームレスと呼ばれるものの、家はある。しかも、三食、酒、タバコありの優雅な生活。バッテリーを使えばテレビも楽しめる。東京にはほしいものがなんでも落ちているー。実在の人物をモデルに描く、自らの知恵と体を使って生きる男の物語。