【感想・ネタバレ】人はなぜ逃げおくれるのか――災害の心理学のレビュー

あらすじ

地震や洪水、火災などの災害に遭遇した時、身をまもるために素早く行動できる人間は驚くほど少ない。現代人は安全に慣れてしまった結果、知らず知らずのうちに危険に対して鈍感になり、予期せぬ事態に対処できなくなっている。来るべき大地震のみならず、テロや未知の感染症など、新しい災害との遭遇も予想される今世紀。本書では災害時の人間心理に焦点をあて、危険な状況下でとるべき避難行動について詳述する。【目次】プロローグ 古い「災害観」からの脱却を目指して/第1章 災害と人間/第2章 災害被害を左右するもの/第3章 危険の予知と災害被害の相関/第4章 「パニック」という神話/第5章 生きのびるための条件/第6章 災害現場で働く善意の力/第7章 復活への道筋/エピローグ 「天」と「人為」の狭間に生きる人間として

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Posted by ブクログ

ネタバレ

災害心理学を専門とする著者が、これまでの災害を例に、災害時における人間行動や災害復興の仕組みについて分析する。
災害はいつ起こるか分からず、また災害対策の費用対効果も見えないことから、「防災のジレンマ」が存在することを著者は説いている。災害を完全に残すことは不可能であることから、いかにうまく災害と付き合っていくかが重要である。本著は、災害を知る指南書と言えよう。
災害発生時、人々を不安にさせないよう情報を隠ぺいする、あるいは被害があまりないかのような誤報を伝える、といったことをつい考えがちだが、このような行為は集団パニックを助長させるもとであることを知った。著者は、パニックが起こる4つの条件として、「差し迫った脅威を感じている」、「危険を逃れる方法があると信じられている」、「安全は保証されていない」、「相互コミュニケーションが成り立たない」を挙げている。情報の隠ぺいや被害の過少報告は、この4条件にあてはまる状況を生み出すことから、情報は適切に提供すべきだと著者は主張している。
科学技術の進歩とともに、災害の発生メカニズムなどは明らかになるが、予測・予知は完璧ではなく、完全な防災対策は難しい。むしろ、社会が高度化するにつれ、災害規模も高度化すると考えられる。「防災のジレンマ」を抱えながらも、いかに平常時から災害への意識を持つかが、防災・減災への第一歩であると思う。災害復興の仕組みとして、著者は、「災害の規模」よりも、「被災社会システムの活力」と「環境社会システムからの援助量」が大きい場合、復興が促進されると説いている。前者を操作することはできないから、後者をいかに大きくするか、社会のあり方が問われている。
2004年に書かれたものであるため、東日本大震災については触れられていない。著者が主張した内容が東日本大震災でもあてはまっているのかを知ることができなかったのが、やや残念である。

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2013年06月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「正常性バイアスのせい」自然災害の場合、警報などの緊急情報の曖昧さ・不明瞭さが被災リスクを高める。防災担当者や専門家は一般市民に対し、現段階において科学的に分かっていることと不明なとこを正直に明快に伝えることで、正常性バイアス(身に迫る危険を危険として捉えることを妨げさせて、それを回避するタイミングを奪う)に陥いらせないようにさせる必要がある。エキスパート・エラーが生じている場合もあるので、結局は個人のタイムリーを判断する知性と行動する勇気が求められる。

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2012年03月06日

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