あらすじ
地震や洪水、火災などの災害に遭遇した時、身をまもるために素早く行動できる人間は驚くほど少ない。現代人は安全に慣れてしまった結果、知らず知らずのうちに危険に対して鈍感になり、予期せぬ事態に対処できなくなっている。来るべき大地震のみならず、テロや未知の感染症など、新しい災害との遭遇も予想される今世紀。本書では災害時の人間心理に焦点をあて、危険な状況下でとるべき避難行動について詳述する。【目次】プロローグ 古い「災害観」からの脱却を目指して/第1章 災害と人間/第2章 災害被害を左右するもの/第3章 危険の予知と災害被害の相関/第4章 「パニック」という神話/第5章 生きのびるための条件/第6章 災害現場で働く善意の力/第7章 復活への道筋/エピローグ 「天」と「人為」の狭間に生きる人間として
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Posted by ブクログ
人は災害時にパニックにならない、という前提をもとに、災害に備えた社会を説く。韓国の地下鉄事件の被害者の落ち着き払った様子や、9.11の世界貿易センタービルのテロ事件の際の人々の行動などからその前提を解説している。ただ、内容的には危機対応時の人間について語っているので、アマンダ・リプリーの『生き残る判断、生き残れない行動』なども参照した方が、タイトルの疑問については理解しやすいであろう。
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■避難勧告や避難指示が出された場合でもこれに従う人々は驚くほど少ない。これは日本だけのことではなくアメリカやヨーロッパでも同じ。
■災害の被害を避けるために避難の指示や命令などが発令されても避難する人々の割合が50%を超えることはほとんどない。安全に慣れてしまって危険を実感できないでいる。
■私たちの心は予期せぬ異常や危険に対してある程度鈍感にできている。常に移り行く外界の些細な変化にいちいち反応していたら神経が疲れ果てまっとうな日常生活が崩壊してしまう。心に遊びを持つことでエネルギーのロスと過度な緊張に陥る危険を防いでいる。ある範囲までの異常は,異常だと感じずに正常の範囲内のものとして処理するようになっている。このような心のメカニズムを「正常性バイアス」という。この「正常性バイアス」が身に迫る危険を危険としてとらえることを妨げてそれを回避するタイミングを奪ってしまうことがある。
■最終的に自分の身を守るのは自分自身であることをしっかりと自覚すること
■PTSDの主な症状
①過覚醒
・意識が過度にピリピリと敏感になっている状態
・いつ再びやってくるかもしれない同じ危険に対して常に身構える体制をとり続ける
・自己防衛機制が行き過ぎて働く結果
②侵入
・外傷を受けた瞬間の情景を目覚めているときにはあたかも実際に今起こっているかのようにありありとフラッシュバックの形で再現して想起する
・眠っているときには外傷性悪夢として繰り返し繰り返し仮想体験する
・外傷性記憶が繰り返し意識の中に執拗に「侵入」してくるので日常生活は混乱して家族や親しい友人との間でも満足な心の交流やコミュニケーションが取れなくなってしまう
③狭窄
・不快感をもよおす脅威に満ちた恐ろしいものは決して見たくない。私たちは見たくないものを見ないようにするために無意識に自分の興味や関心をより狭い範囲に制限しようとする。そして極端な場合には自分自身や家族の生活への関心,それまでの生活においてエネルギーの大半を注ぎ込んでいた仕事や趣味への情熱などをまったく失ってしまうことがある。災害や事故で自分自身が経験した危機的な状況を再び思い出させるような場面に直面したくないという心理がこの狭窄の症状をもたらす。
■避難行動のメカニズム
・避難行動とは個人や家族のような集団が脅威や破壊にさらされたときに,その事態を回避するための移動行動。避難行動は単純に見えてなかなか複雑な要素を抱えている。
・避難行動の特徴は個人の単独な行動というよりは集団的な行動という点にある。避難行動はそのメカニズムを見るとそれをともに行う個人の間では相互作用的であり,複合的であるため様々な要因がこれに関与して避難行動を促進したり遅延したり,場合によると中止したりする。
・また,多くの場合,移動は一時的なもので危険が去った後には再び元の場所へ戻ってくるが,時には移動した場所で定住したり,そこから更に別な場所へと移動を重ねることもある。そのような各段階に,個人や集団の意思決定のプロセスが介在している。
・避難行動は,まず危険を知らせる情報が伝えられるところから始まる。この情報にはマスメディアからの災害情報の伝達の場合もあるし,市町村による防災行政無線のスピーカーや,消防や警察の車両からの避難勧告や指示の伝達の場合もある。いずれにしても我が身に降りかかる危険が現実にあることを実感しなければならない。
・だが,仮に危険を感じたからといって直ちに避難行動を始めるわけではない。その次は危険の大きさを評価する段階がくる。中には危険を過大にとらえる人々もいるが,一般には,危険は実際よりも過少に評価される傾向がある。そのために多くの災害では避難勧告や避難指示が出されてもそれに従って避難する人々は少ない。
・最後に考慮すべき事柄は,果たして避難するに際して何か重大な障害があるかどうかということ。例えば避難の途中に大きな危険がないか。避難所は十分に準備されているか。避難所までの距離はどうかなど。さらに,様々なことが思案される。その結果,避難しないよりも避難した方がより安全だと思える時に公的な非難の指示や自分自身の判断に従っての避難行動が開始される。
・避難行動を行う人々の割合が一般に低いのは,避難には大小様々なコストがかかるという理由によるものである。
■人々は警報を受け取っても自分たちに危険が迫っていることをなかなか信じようとはしない。
・警報のメッセージに少しでも曖昧なところや矛盾したところがあったりすると警報の信頼性に対して疑いの目を向ける傾向がある。
・正常性バイアスという私たちの心に内蔵されている機能は元々は私たちが過度に何かを恐れたり不安にならないために働いているはずであるが,時にこの機能は私たちをリスクに対して鈍感にするというマイナスの役割を果たす。
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地震や火災など、予期せぬ災害に遭遇すると人間はどんな行動をとるか。心理学的アプローチと過去の事例から、危険を回避する具体的な方策をアドバイスする。危険な時代を生き抜くための必読の書。(商品紹介より引用)
・防災のジレンマ
災害は、予知することはできない。しかし、防災をしなくてはいけない。という第一のジレンマ。
また、災害発生後にも、防災をしていて効果があったのかどうかを示すすべはない。
という第二のジレンマ。
それでも、我々は防災に努力しなければならない。
・災害時の家族の重要性
親は子のため、子は親のために自己犠牲を厭わない。その力が個々でいるよりも、生命存続には大切になる。
・生き残ったことを誇ることのできる世の中に
海外では、災害を生き延びた人を「サバイバー」呼ぶのが、日本にはそれに相当する言葉がない。
日本では、「被災者」であり、「被害者」。特に、日本では生き残ったことに対する罪の意識が強い。
実際に世界中で起こった災害を例にしているので、時々その恐ろしさに背中がゾワっとすることが多々ありました。
防災とは、しなくてはいけないと思いながらも、出来ていないことNo.1ではないでしょうか。
滅多に起こることではないし、上記にあるように防災していたからといって、それが正しいことだったのかも分からない。
けれど、していなくて後悔するよりも、今できることは全力でしたいと私は考えます。
また、防災も大切ですが、゛忘災″してはいけない。とても、この言葉に納得した。
私自身は、関西在住で阪神淡路大震災のときは、まだ、赤ん坊でしたので、全く記憶はありません。
しかし、これからの残りの人生で何があるか分からない。地震かもしれないし、火災かもしれない。備えあれば患いなし。
防災を改めて考えるよいきっかけになる本でした。
Posted by ブクログ
■避難
1.避難行動には模倣性と感染性が見られる。隣人や知り合いなどが避難すると、つられて避難する。
2.パニックとは各個人が自分自身の安全を脅かす事態をさけようとし、他者の安全を無視して行う、非合理かつ無秩序な行動の集積である。
3.パニックはほとんどおこらない。スケープゴートの材料にされている。
Posted by ブクログ
政治家、役人、マスメディアや指導的な立場にある人びとは、すでにこのような知識をお持ちのことと思うが、実のところ欠如しているのではないかと心配でもある。
Posted by ブクログ
今回の震災と照らし合わせたりして
非常に興味深く読んだ。
パニックはそうはおこらない。
沈着冷静がサバイバーになるために効果的。
震災後の復興は合理的に進むので体力がもともとなかった地域はなくなることも考えられる。
などなど。
海難事故や停電、ペスト、テロなど
いろいろな事象がとりあげられていた。
結局は情報を自分でいくつも照らし合わせて判断するしかないのだ。
八潮は地盤が砂ではなくがれきなどの産業廃棄物、
つまりコンクリ的なものらしく液状化はまぬがれるらしい。
東京湾が震源だった場合高いところにすぐ逃げる。
とかいまのうちに考えておくだけでも有効だよね。
あと災害持ち出し袋。
それぞれ作ろう。
Posted by ブクログ
政府はパニックを恐れているらしい。パニックってそんな簡単に起こるものではないらしいぞ。政府関係者にはこの本を読んで欲しいな。
政府がパニックを恐れるあまり嘘をついているんじゃないか、必要なことをしていないんじゃないかっていう政府への不信感が買いだめパニックに繋がった。
政府は、津波や地震の情報は多少不確かであってもすぐに公開している。その事で一定の成果を上げているのに、原発関連の情報はほとんど表に出さない。
パニックを恐れているのではなく、情報を公開することによって自分たちの手落ちが明らかになることを恐れているのではないか。
けれど誤った秘密主義は、結局高く付く。
大災害は社会に大きな変化をもたらす。良い変化にするために、私に何が出来るだろう。これからどう生きればいいんだろう。
参考文献
ロバート・リフトン 広島で被曝した人にインタビューした
『台風とのたたかい 青函連絡船遭難体験記録』
『洞爺丸遭難記』 淵上満男
『原爆体験記』 北山二葉
心身一元論 PTSD 海馬の縮小
ハーバート・サイモン 愛他行動は、それを行うものの利益に反するが、社会全体の利益を高める。
『死の淵からの生還 エストニア号沈没 そして物語はつくられた』ケント・ハールステット
ジュディス・ハーマン 『心的外傷と回復』
被災して、生き残った人達に「生きていてくれてありがとう」って伝えたい。
Posted by ブクログ
竹内薫・科学ブックガイドから。非常時、パニックにならないのが危ないっていうの、目から鱗だった。言われてみればその通り。自分のことを振り返ってみても、思い当たることがあって冷や汗もの。話題は感染症にまで及び、かなり前の出版ながら、内容はかなりタイムリー。常日頃から色んな可能性に思いを馳せ、より確実な準備を整えていくことが肝要。当たり前のことなんですけどね。
Posted by ブクログ
鹿児島の実家、実は先日の大雨で半孤立しています。地表滑落のため、団地に隣接する幹線が下り側で全断。年内の復旧見込みはなく、移動に苦が伴っている。
大雨前に避難警報の発報を知るも、離れた土地にいる家族は「ダイジョウブ」の一点張りだった。結果、大丈夫だったけどニアミスだった。
実は、先日、ウチのビルで発煙があり警報が鳴った。"This is not a drill"というフレーズは訓練の時にも流れていて、「あれ?訓練かな」と思って誰も避難しなかった。実際に避難したのは、消防士の姿を見た来た時だった。
警報はその信用を落とし、避難意識も高く持ち続けられていないのは現実のように思う。
どうしたら彼らに避難してもらえたか、自分が避難行動をとれただろうか。
実際にはパニックにはならないが、落ち着き過ぎはまずい。災害天災のもたらす悪い面と良い面(!)の存在。新しい時代には新しい災害が、など知っていて損のない内容でした。
Posted by ブクログ
災害における人間の心理とは?という興味で手にとったものの、災害の心理学というよりも防災に軸足どころか両足をのせた一冊。
防災という観点から見れば、かなり硬めの内容で新書サイズによく収まっているので俯瞰しやすく読みやすい。昨日に読んだ『人は皆「自分だけは死なない」と思っている』と似たような内容ではあるものの、こちらの方が情報が整理されていてよく感じたが、やはり気になったのは心理学としての情報の少なさか。
Posted by ブクログ
災害時に、パニックが稀にしか発生しないということは意外であった。
また、災害時の心理として、正常性バイアスが被害を拡大させることに、災害から逃げることの困難さを感じた。
Posted by ブクログ
災害心理学を専門とする著者が、これまでの災害を例に、災害時における人間行動や災害復興の仕組みについて分析する。
災害はいつ起こるか分からず、また災害対策の費用対効果も見えないことから、「防災のジレンマ」が存在することを著者は説いている。災害を完全に残すことは不可能であることから、いかにうまく災害と付き合っていくかが重要である。本著は、災害を知る指南書と言えよう。
災害発生時、人々を不安にさせないよう情報を隠ぺいする、あるいは被害があまりないかのような誤報を伝える、といったことをつい考えがちだが、このような行為は集団パニックを助長させるもとであることを知った。著者は、パニックが起こる4つの条件として、「差し迫った脅威を感じている」、「危険を逃れる方法があると信じられている」、「安全は保証されていない」、「相互コミュニケーションが成り立たない」を挙げている。情報の隠ぺいや被害の過少報告は、この4条件にあてはまる状況を生み出すことから、情報は適切に提供すべきだと著者は主張している。
科学技術の進歩とともに、災害の発生メカニズムなどは明らかになるが、予測・予知は完璧ではなく、完全な防災対策は難しい。むしろ、社会が高度化するにつれ、災害規模も高度化すると考えられる。「防災のジレンマ」を抱えながらも、いかに平常時から災害への意識を持つかが、防災・減災への第一歩であると思う。災害復興の仕組みとして、著者は、「災害の規模」よりも、「被災社会システムの活力」と「環境社会システムからの援助量」が大きい場合、復興が促進されると説いている。前者を操作することはできないから、後者をいかに大きくするか、社会のあり方が問われている。
2004年に書かれたものであるため、東日本大震災については触れられていない。著者が主張した内容が東日本大震災でもあてはまっているのかを知ることができなかったのが、やや残念である。
Posted by ブクログ
ヒトは危険に対してある程度鈍感に出来ているので、異常を過小評価しがち。周りに「じっとしてて下さい」などと言われても、自分で災害の驚異をしっかりイメージして自ら行動することが大事だそうです。
そんなこと言われてもなぁ・・・とは思いますが、注意喚起のため日頃から目を通しておきたい一冊。
日本語にはサバイバーに相当する言葉がない、という話も印象的でした。日本では生き残った人は被災者とよばれてしまうために、素直に生き延びたことを喜べる社会風土が作られにくいそうです。まずは被災者を罪悪感から解放し自分をサバイバーと感じられることが災害から立ち直るためには大切、と。目から鱗。
「急速に成長しつつあるコミュニティは被災しても急速に復興するが、変化せず停滞しているか、下り坂にあるコミュニティは、被災後にきわめてゆっくりと復旧するか急激に衰えていく」んだそうです。
ひぃ、今の日本はどっち?!でもこれで自然にダウンサイジングしていけばちょうどいいか?
Posted by ブクログ
災害時ほとんどの場合、人はパニックにならない。その場の雰囲気に流されず、冷静な判断をすることで生き残れる。その際、1時間後に生き残る可能性を高めるために今リスクを取ることも時には必要。
災害は社会の新陳代謝を早める。優れたリーダーシップで思い切った改革をするべき。
今の日本はどうか。
Posted by ブクログ
防災に係わる職場にいるし、緊急時の人間行動や災害心理というのは比較的とっつきやすい分野だったので何となく手にとって読み始めたのだが…。
読んでいる途中で東日本大震災が起こった。
当然本の話題に上がっているのは今まで起きた地震・起こるであろうと言われている地震等の災害の話。(それだけではないが。)
とはいえ語られている内容が、現在進行中の事象とあいまって、途中読み進むのが非常につらくなった。
東海・東南海・南海の複合地震が起きたときの災害規模や災害後に起こる人々の心理状態の変遷の話はあまりにも今回の震災と近似していて背筋が寒くなった。
テレビで映るその状況が、死者行方不明者の規模が、本の内容と合致するのだ。
そして、災い防ぐ「防災」ではなく、災い減らす「減災」という表現をしていたのが印象的であった。
確かにそうなのだ。
災害は起こるもの。それを無くすのではなく、被害を最小限に抑える方向へ発想をシフトするべきなのであろう。
余談だが、震災初期の頃ニュース取材で著者の教授がコメントをしていたが紹介のされ方が「メディアの専門家」。(少なくとも私にはそう聞こえた)
…おや??この方は災害心理の専門家では??
意図してか知らずか。
この頃“専門家”が乱出していたのでついつい目に付いてしまった。
本とは全く関係の無い話だが。
Posted by ブクログ
実はパニックは起こりにくい。人間とはむしろ、危機を前に切迫感を抱かないようになっている。
パニックを起こさないためには、情報提供の中身、方法の吟味が必要。
Posted by ブクログ
日本語には、英語のサバイバーに対応する言葉がない。…このような被害感覚は、"生きのびた罪"を、災害を生きのびた人びとに、強く意識させるのではないか…
タイトル、テーマとは外れるが、この言葉に考えさせられた。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
地震や洪水、火災などの災害に遭遇した時、身をまもるために素早く行動できる人間は驚くほど少ない。
現代人は安全に慣れてしまった結果、知らず知らずのうちに危険に対して鈍感になり、予期せぬ事態に対処できなくなっている。
来るべき大地震のみならず、テロや未知の感染症など、新しい災害との遭遇も予想される今世紀。
本書では災害時の人間心理に焦点をあて、危険な状況下でとるべき避難行動について詳述する。
[ 目次 ]
プロローグ 古い「災害観」からの脱却を目指して
第1章 災害と人間
第2章 災害被害を左右するもの
第3章 危険の予知と災害被害の相関
第4章 「パニック」という神話
第5章 生きのびるための条件
第6章 災害現場で働く善意の力
第7章 復活への道筋
エピローグ 「天」と「人為」の挟間に生きる人間として
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
タイトルは「なぜ逃げおくれるのか」であるが、その原因について洞察しているというよりは、災害全般について、筆者の考えが整理されている。
パニックとはギリシャ神話に出てくる半獣神「パン」が由来だというのは初耳であったし、災害ではパニックは簡単に起こらないということも主張している。
また、日本では災害で生き残った人達を「被災者」と呼ぶが、実は「サバイバー」なのだという見方は斬新である。
Posted by ブクログ
【ノート】
・災害は、その地域が持っている上昇か下降のベクトルを加速させるというのが面白かった。
・第一次警報伝達過程と第二次警報伝達過程。マスコミなどは後者。
・ちなみにこの本は2004年に書かれているが、3.11後の今、情報伝達について今はどのような見解を持ってるんだろうか。
Posted by ブクログ
東日本大震災のとき、結果として僕はたぶん正しい行動をとれた(それなりに正しくリスクを計算できていた)と思うんだけど、それって懸命だったわけではなく、単に「正常バイアス」が強かっただけなのかも、と思ったりする。
そんな感じで、災害の際の人間心理をさまざま紹介してくれていて興味深かった。パニックのあたりが白眉かな。
ただこれ、ずいぶん前の本なんだよね。
マスコミについての記述は古さが否めない。SNS全盛になった今の状況を著者にはまた書いてほしいなあ。
Posted by ブクログ
災害法制の勉強をしていて、関係ある本を読んでいくと、同じ本と時々二度かって読んでしまう。
この本も二度目。ちょっと情けないが、しょうがない。
今回、気になった点。
(1)十分な資格があると認められるNPOとかNGOに対して、現在地方公共団体が行っている被災者救援の仕事を、逐次、可能なかぎり権限とともに委譲すべき。(p195)
大災害になれば、ボランティアや民間企業に助けてもらう謙虚な姿勢が大事だと思う。
(2)パニック発生の4条件、「多くの人々が脅威を感じている」「危険を逃れる方法があると信じられている」「脱出は可能であると信じられているが、安全は保証されていない」「人々の間の相互のコミュニケーションが成り立たなくなっている」(p145)
(3)放送メディアからの警報は効果がある。(p120)
何度読んでも、学ぶ点はある。
Posted by ブクログ
洪水を経験した人は、洪水には対処できるが、津波には対処できない。
自分の目で災害をみないと、警報があってもそれを過小評価してしまう。
この本は、阪神大震災の九年後に書かれている。
このため、東日本大震災でまのあたりにしたような、津波被害に対する避難態度というのは、書かれていない。
しかし、冒頭で書いてあるように、人は、自分が実際に経験したことでないと、きちんと状況を把握できない。
だから、過小評価してしまい、結果的に逃げ遅れが発生してしまう。
一つの災害からは学ぶものがたくさんあり、次に類似した災害時にそれを生かさなければならない。
でも、東日本大震災から一年半たった今、被災地以外の人々があの経験から学んだことを今も実感として保っているか?と言ったら、保っていないと思わざるを得ない気がする。
災害は予見することが難しい。まして、自然災害は人間の力が及ぶものではない。
だとしたら、過去の経験を生かして、いかに生き延びるか?を考え、対策する必要があると思う。
生き延びると一言でいっても、生き残ったことを悔やむ生き残りではなく、サバイバーとして生きていける世の中でないといけないんだなーと思った。
あと、生き残るには、「冷静な判断力」「生き残るんだ!という精神力」が必要だと、あらためて思った。
Posted by ブクログ
明石の歩道橋事故、警備を担当した株式会社ニシカンの”茶髪の男が暴れた”という責任回避のウソ、これを思い出した。
洞爺丸の遭難で、首まで水につかっている状態のときに、このまま沈んでいけばあの窓に手が届く、それまでここを動くなよ、と冷静に自分に言い聞かせて生き延びた人などの事例を読んで行くと、生き延びるためには冷静な判断、そして自分は生きるという強い意志力の2点が必要なことを、改めて実感した。
Posted by ブクログ
「正常性バイアスのせい」自然災害の場合、警報などの緊急情報の曖昧さ・不明瞭さが被災リスクを高める。防災担当者や専門家は一般市民に対し、現段階において科学的に分かっていることと不明なとこを正直に明快に伝えることで、正常性バイアス(身に迫る危険を危険として捉えることを妨げさせて、それを回避するタイミングを奪う)に陥いらせないようにさせる必要がある。エキスパート・エラーが生じている場合もあるので、結局は個人のタイムリーを判断する知性と行動する勇気が求められる。
Posted by ブクログ
地震・伝染病・テロ……現代社会を脅かす災害は枚挙にいとまがない。本書は、災害を乗り越えるために必要な事を、心理学を通して考察したものである。
まず災害が発生した場合の人間の心理状態を分析し、被害軽減のための諸条件を検討する。そして、災害が過ぎ去った後の、復興へ向かう道についても言及している。
災害時の人間心理を中心に据えながらも、災害後の行動や災害と社会の関係性など、災害と人間について広く考察がなされており、災害について考える入門書として位置づけられる。特に、主に終盤にかけて述べられている筆者の災害観は、東日本大震災を経験した今こそ強く心に響くものである。
「心理学」と題されてはいるが、学問的に突っ込んだ内容は少ない。また、理論の根拠代わりに事例を頻繁に用いていたり、論の展開が曖昧な部分も多いなど、厳密に読もうとすると引っかかる所がある。
しかし、実際に発生した災害の事例が数多く詳細に紹介されており、読み物としては面白い。難解な内容も特にないため、新書らしく誰にとっても読みやすいと言える。
Posted by ブクログ
仕事がらみで読みました。2004年の初版ですが、今、平積みされています。わかりやすく書いてあります。しかし、東日本大震災のケースであてはまるのか・・・?
Posted by ブクログ
長文レビューを書いたのに、うっかり消えてしまってショック・・・。
過去の災害を取り上げているので、ケーススタディーになる。
この本で気になった点をいくつか。
①人が逃げ遅れるのは、災害に対して鈍感にできているから(これを正常性のバイアスという)
②災害からの復興には、被災社会システムの活力が大いに影響(←日本は今回立ち直れるのか・・・?)
③過去の大災害からのみごとな復興には、有能なリーダーがいた。(←日本は・・・)
④パニック神話(←恐れられているほど、パニックは起きない)
自明なものをやたら抽象的に書いているので、ざっと目を通して読む程度でよいかと。