あらすじ
低迷を続けていた名門・新日本プロレスを支え抜き、奇跡の復活へ導いた棚橋弘至。キャリアのあらゆる場面で挫折を味わってきた著者が、「それでも立ち上がるための人生哲学」を熱く語る!
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Posted by ブクログ
棚橋弘至の新日本プロレスを復活させた経験を踏まえてのビジネス本である。『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』を発表した結果、プロレス以外の場所で後援する機会が増えたらしい。その経験をふまえて「自分」をではなく「理論」を語るものとしてこの本が生まれたのであろう。より簡単に「棚橋イズム」を受け取ることができ、読者に利用しやすいものとなっている。
この本を読んでいると、想像とは違うものが書かれていてびっくりする。新日本プロレスを復活させた彼のことだ、さぞや理論的な戦略があるだろうと思いきや、
「夢は持たなくてもいい。もし適わなかったらそれで終わりじゃない。やりたいことを沢山持っておけば、一つがダメになっても次のやりたいことを始めればいいだけだし」
「まずは目の前のことを全力でやろうよ。たとえ役に立たなくても、そのうち役に立つかもしれないよ」
「一つのことを深くより、色んなことを浅く知っておいた方が、色んな人と会ったときに便利だよ」
「とりあえず鍛えておけば余計なことを考えないから良いよ」
という感じの理論が展開するのである。とても「軽い」のだ。それに営業スキルのようなものに終始しているようにも読める。この本だけを読んだら、あまりに愚直で参考にならない。新日本プロレスが復活したのも偶然ではないかと思ってしまってもおかしくない。
だが、『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』や他の本を読んでみると、また違ったものが見えてくる。彼の行なっている全力は我々の想像を超えるようなものだ。オフの日もプロモーションでプロレスの興行を行う地方の人々に会いに行く。会った人には自分やプロレスのことを丁寧に説明する。そうしてプロレスとの繋がりを作っていくのである。そしてどんどん有名になっていく過程でどんどんと忙しくなっていく。自分を世の中に受け入れられやすいキャラクターに変えていく。だげどその合間の練習も怠らない。トップ戦線の選手で居続けるのである。この大変な状況でも「疲れてない」と言って活動を続けるのだ。脇目も振らずにできることに没頭して全力でやり続ける。全力になることは彼にとって自明であり、没頭するための心構えが書かれているのである。それはビジネスというよりクリエーターにこそ伝わるものではないだろうか。