あらすじ
孤独と暴力に耐える日々のなか、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の圭介。妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、主人公と会話するように童話の続きを書き始める小学生の莉子。妻に先立たれ、生きる意味を見失いながらボランティアで読み聞かせをする元教師の与沢。三人が紡いだ自分だけの〈物語〉は、哀しい現実を飛び越えてゆく――。最高の技巧に驚嘆必至、傑作長編ミステリー。
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Posted by ブクログ
児童文学でつながる3編の連作小説
それぞれの話の中、不穏な空気は漂いつつも、だれも悲しくさせない結末に辿り着いてにっこり
特に「光の箱」が好きだった(ミスリードにもちゃんと引っかかったし)
作中に出てくる児童文学、本当に絵本になってくれたらいいのに
蛍とカブト虫とヤモリの話とか、大人も考えさせられる絵本になりそう
お話を自分で作ることは難しい
でも、誰かが作ったお話の中に逃げ込む感覚は身に覚えがある
本を読む時間、物語に潜り込む時間は孤独ではあるけど
みんなそうやって逃げ込める場所を持ってるのかなと思うと少し安心する
物語好きを包み込むみたいな優しいお話だった
Posted by ブクログ
連作短編集風だが、3つの物語が最終章で重なる長編小説だと思う。
最初の章でいきなりどんでん返しをくらい、その逆転が心地良かったので次はと期待するがそれほどどんでん返しがある訳ではない。
まったく別々の3つの物語が1つのところを収束というか、つながりがあったという物語。
童話がいろいろ出てくるのだが、その童話が面白く本当に絵本で読んでみたいと思えるほどのクオリティー。
とにかく一番面白かったのが、全体を通してではなく、
最初の一遍目。
分かれたカップルが再開し誤解を解く話で、まったく別人と彼女が結婚し、元彼は事故で亡くなってしまった様な描き方をされていて、それがどんでん返しとなるのでビックリ。
評価的には☆3というところだが、最初の章が良すぎたので評価を☆4とした次第。
Posted by ブクログ
3編の物語は独立しているようでいて、実は密接につながっている。
どの話も、子ども向けの「おはなし」を交えて展開するけど、どこか不穏な、不吉な結末を予感してしまうので、ハラハラする。
最悪の結果に怯えながらも読んでいくと、なんて暖かいラストシーンだろう。
おじいさんの考える(自分は何も残していないんじゃないか)という恐怖は、すごく分かる。自分もそんな不安に縛られて苦しくなることがある。
でも、生きているだけで誰かの人生に影響を与えているかもしれない。そんな可能性に気づかせてくれる一冊だった。