あらすじ
物部家の巫・影媛は、神の声を聴くため翠鳥となって森を飛び回るうち、鹿狩りに熱狂する平群家の臣・志毘に出会い、恋に落ちる。しかし両家は対立する間柄、そして彼女はすでに皇太子に求婚されている身だった。特異な想像力と類まれな言語能力で描き切った、鮮烈な愛の物語。新潮新人賞最年少受賞の新鋭による待望の第二作。
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Posted by ブクログ
影媛を描いた貴重な作品 物部氏(物部麁鹿火)の娘、影媛が、平群鮪と恋に堕ちたが、海柘榴市での歌会で既に婚約を交わしていたとされる小泊瀬稚鷦鷯尊(おはつせのわかさざき:武烈天皇の皇太子時代)と遭遇し、その歌の内容でも完勝となった平群鮪と逃亡。激怒した小泊瀬稚鷦鷯尊は平城山で物部氏、久米部氏らと平群氏を襲撃、滅亡させたという日本書紀の記録を、物語にしている。古語を用いており難解だが、雰囲気は伝わる。
Posted by ブクログ
影媛、物部麁鹿火、物部石弓若子、物部尾輿、平群真鳥、平群志毘、武烈天皇、大伴金村、が登場する。
ネット上の感想を見ると、二十二歳の著者が書いた芥川賞候補作ってことで、上から目線に「お手並み拝見」と読んで叩いてるのばかりですなw評論家きどりは楽しいかおまえらw
読みにくい文章といえばそうなんだけど、古代文献の訓読文をたまに眺めてる人ならすぐ慣れる。
あと作中の「彼女」はすべて影媛のこと。直前の文に誰か別の女性が出てきてても、その人のことだと思って読み進めてはいけない。
旧事本紀の系譜にのみあらわれる、麁鹿火の息子・石弓、彼が登場する貴重な小説として、後世まで物部氏マニアの間で語り継がれるであろう。
Posted by ブクログ
最近よくある、歴史小説でオンナ主人公。わかりやすく、オンナとわかるタイトル。
失礼ながら、ネットによく散見される、とてもよくできたオリジナル歴史小説を自費出版したのかな、と思っていた。
現役京大生による擬古典的な文体、芥川賞候補作。第二の平野啓一郎を生みたかったのか。
物部の巫女媛が敵対する平群の後継ぎ、志毘と恋に落ちるが、聖徳太子に嫁ぐことを強いられ、父に恋人を殺される。ただそれだけの中編。題材がいいので期待していたが、構成力に乏しい。
格調高い文体を目指しているが、古語辞典から単語をひっぱって継ぎ合わせたようなちぎはぐさで、古文独特の柔らかさやリズムがない。やたらと「…の様に」を多用しているのが気になって仕方がない。平野はまだ文章になっていたのだが、これはなっていない。
鹿肉をやたらと解体するシーンだけ執拗にリアルに描写されていて、気味が悪かった。医学的興味からなのだろうか。
若さゆえの感性は鋭いと思うのだが、無理に古典的文体に挑戦せずに、現代語でのびのびと書いたほうが良かったのではないか。
若い頃に背伸びして擬古典的文体を真似て評価されたものの、その後、さっぱりという作家さんもいらっしゃるので、物語としての面白さを追求する技巧を磨いた方がいいように感じる。まあ、純文学でエンタメじゃないからこれでいいと思うかも知れないが。
あと聖徳太子の意地悪さが、某漫画っぽいと思ってしまった。