あらすじ
一昨晩おそく、泥酔して地下鉄の階段から転げ落ち、気を失ったようだ。やっと意識を取り戻すと、街が異様な様子に一変していた。市街のあちこちで、タクシーが電柱にぶつかってぐしゃぐしゃになり、無人となった住宅の密集地あたりでは、黒煙があがっている。大阪じゅうの人間が、僕ひとりを残して消えてしまったのだろうか? あらゆる都市の知人宅や会社に電話をかけまくったが、誰も出ない。緊張と興奮の連続でくたびれ果てていたとき、突然、電話のベルが鳴った――! 日本が空っぽになる異常事態。残されたわずかな人間たちは、極限状態をどう生き延びるのか? SF長編の金字塔!
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Posted by ブクログ
複数巻の長編を平行に読破しよう月間。角川で無い版では、1冊に収まっているので、さほど大作ではない。
朝目が冷めたら、周りに全く人がいなかった。しかも車も店も、直前まで人がいたかのように…。人が消えるという、非常に基本的な異変のなかでのサバイバル。
これ、思い出の1冊(1作)なんですよね。中学の頃に、上下を一瞬で読み切った記憶があり、再度手に入れようと探していた所、数年前にようやく見つけた。小松左京の同様のテーマ「復活の日」「日本沈没」「首都消失」「アメリカの壁」なんかよりも、とっつきやすい名作。
とにかく、テーマも視点が身近で、目の前から人間が一瞬で消えたら?というだけのものだが、そこから災害パニックの思考実験として展開していく。もちろん電気であったり、上巻では近畿圏の地理であったりと、ウンチクてんこ盛りなのをさらっと読ませる辺りが、小松御大の力量であろう。
キャラクターも、大阪弁と標準語、男性と女性、老人など、中途半端に似通った世代を出してこないため、混乱がない。
上巻は「人がいない」という"邂逅"から、消え残りと周辺の探索程度で、ややこしい話もなく光速で読み切ってしまう程度のないようなのだけど、そこを「読んだな」と感じさせるあたりが名作であろう。