あらすじ
突然40億人もの人間が消失するという驚異の現象。日本でも、1億を超える人口のうち、残ったのはわずか25人――。「消え残り」の人々の間には、おぼろげながら「泥酔して転倒した挙げ句に失神していた」という共通のパターンがあることがみえてきた。この異常現象が発生してから10日目。「消え残り」組は東京に集まり、協力しあうことになった。しかし、新興宗教をやっている中年女性の神がかりが原因で分裂騒ぎが起こる。消え残った文明人として、この極限の状況をいかに乗り切るのか。自然災害や一極集中都市の壊滅など、現実にも起こり得る危機への鋭い警告を秘めた、奇想天外かつリアルなシミュレーション長編。小松左京の文明論とも言えるエッセイ「ホテルと私」の一部と、小松左京ライブラリによる解説も収録。
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Posted by ブクログ
複数巻の長編を平行に読破しよう月間。さほど大作ではないが、そろそろ一旦休憩する。
セスナを手に入れた福井たちは、大阪を発って名古屋、東京と移動し仲間を見つけるが、そのこととも相まって、数々の困難に直面する。
「いまここから、自分以外誰もいなくなったら」という、小松左京お得意の消失ものの思考実験だが、今読んでも良く出来ている。
消えたことによる絶望感だけでも、開放感だけでもない。電気はいつまで持つのか、そこに災害が起こった場合の被害など、きちんとある程度検証されている。
飛行機の操縦、電力の仕組みや食品の流通、生きていくためのライフラインなど、ここまで検証してちゃんと書いている(書けている)作家は、現行において何人いるのか。
本作も、未完の完と言うかたちにするためなのかどうなのかは分からないが「ゴエモン(明日泥棒)」シリーズのように楽屋ネタを出してくる。これがまた小松左京らしくて面白い。
消失モノは、有名どころ「日本沈没」「首都消失」「復活の日」や短編「アメリカの壁」など、同じようなテーマのものがあるが、個人的には尻切れ感があるが「こちらニッポン…」「明日泥棒(ゴエモンシリーズ)」の2つがやはり好きだ。
買い直して良かった。