あらすじ
あの夏、私たちは「家族」だった――。息子を事故で亡くした絵本作家の千紗子。長年、父・孝蔵とは絶縁状態にあったが、認知症を発症したため、田舎に戻って介護をすることに。父との葛藤と息子の死に対する自責の念にとらわれる千紗子は、事故によって記憶を失った少年の身体に虐待の跡を見つけ、自分の子供として育てることを決意する。「嘘」から始まった暮らしではあるものの、少年と千紗子、孝蔵の三人は、幸せなひとときを過ごす。しかし、徐々に破局の足音が近づいてきて……。切なさが弾ける衝撃の結末――気鋭のミステリ作家が描く、感動の家族小説。
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Posted by ブクログ
みんなそれぞれの意図を持ちながら嘘をつく。人を傷つける嘘もあるし人のための優しい嘘もある。
子供を失ったショックから離婚をした千紗子。長年絶縁状態だった父親の介護のために田舎に行くことに。そこで出会う少年との出会いから物語が始まって行く。
いろいろなところでつかれる嘘。娘のためや子供のため、自分のためと本当に様々。だけど、それが暖かい物語に繋がってもいく。最後の大きな嘘がバレた時に破局の展開になるのかとも思ったが、最悪の展開にはならずに良かった。
Posted by ブクログ
飲酒運転のひき逃げダメでしょ!
犯罪に犯罪を重ねたら後から辛くなるよ!
その場しのぎの考えじゃ、長い人生つらいよ!
って思った。
(私も自分を守る嘘をついたことはあるけど)
どこか現実味がなかったけど
読みやすい文章で結末が知りたくてすいすい読めた。
最後の嘘が光のような救いのような気がした。
Posted by ブクログ
物語が動き出すきっかけが飲酒運転ってことで
「ちょっとなぁ」と思ってましたが…読み進めていくうちに「まぁありかな」と…
解説から読むべきではない!
最後から読むべきではない!
それだけは「嘘」ではありません。
Posted by ブクログ
虐待、いじめ、認知症などの重たい場面は少し読むのが辛くなりました。とくに認知症は自分の父親のことをイメージしてしまってきつかった。
この小説で1番強く感じたのは、世の中の虐待されて心に傷を負って育った子どもを救わなくてはいけないということ。
千紗子の選択が正しいわけではないけど、優しくて強い行動だと思った。
孝藏が千紗子のことを娘だと認識していたことには胸が震えた。忘れることを繰り返しながらも、千紗子と少年の3人で過ごす日々の積み重なりが与えた何かが孝藏の中に残って、最後に穏やかな時間を過ごせたことにじんわりと感動が広がった。
一つだけどうしても気になるのは、少年の記憶喪失が嘘ならなぜ裁判で両親からの虐待を主張しなかったのか。その嘘を突き通すと決めたのはわかるけど、実の母親ぎ嘘を主張してるんだから、実は虐待の日々が辛くて記憶喪失のふりをして千紗子との生活を選んだけどそれで救われたんです、って主張をできたはず。
それをしない納得できる少年の胸の内を書いて欲しかった。千紗子を守るために父親を殺す強さがあるなら裁判でも守って欲しかったし、母親がした仕打ちを世に知らしめてぎゃふんと言わせて欲しかった。小学生だとそこまで考えが及ばないものなのか?
終章がいかにも実はわかってましたという流れだったので、裁判で話さなかったのにそのオチはやめて、、、と願いながら読み、ラストの1行でがっかりしてしまった。
Posted by ブクログ
ラストがどうなるのか気になってどんどん読み進めてた。
始まりが始まりだっただけに、よくある「本人も周りにも認められるような幸せな結末」にはならないと思っていたけど、これもひとつの終わり方だと思った。
個人的には、少年の嘘が一番印象的。途中でもしかしたらそうかも、と思うけど、「記憶喪失で過去の記憶を忘れた人格で過ごしていく」じゃなくて「過去の記憶を持ちながら、これからも生きていく」という感じがして希望に思えた。
登場人物のそれぞれの嘘が、自分のためだけど、でも相手に影響を与えるようになっていって。どう表現したらいいかわからないけれど、嘘は決して本当にはならないけれど、本当にしたいくらい自分や誰かの支えになっていく。そうなったら、本人たちにとってはもう嘘でも本当でもどっちでもいいのかもしれないと思ったりした。信じたいものを信じていければ、その心があれば幸せとよべるのかもしれない。
Posted by ブクログ
面白かった。
他の方の評価を見る前の個人的な感想。
拓未との関係が歪んで感じた。特に刑期中、どれほど拓未自身が望んだとしても、もっと親以外の世界とも交流せよ、と導くのが親の役割だとおもう。後半になればなるほど、イヤな気持ちで読んだ。
「略取も、殺人も、飲酒運転も、あくまで犯罪であること」
「主人公が、拓未に、第一子の面影を求め続けていること」
「自分に厳しかった父親を、見放そうとしたこと(そのような態度が母親を苦しめたと自覚しているにもかかわらず)」
「一方で、自分に従順な拓未を溺愛したこと」
この辺りで、感動の物語!と言うにはちょっと引いてしまった。例えば、『自分は介護から逃げた(極端な言い方をすると)が、きっと彼女の老後は拓未が世話をするだろうな』とか。描かれていないことだが、そういうグロテスクさを嗅ぎ取ってしまうのだ。
勧善懲悪とはゆかずとも、せめてもっと反省の色を見せて欲しかったというか。いや、そこは10年服役したのだから十分だろう、と読むべきか。
不安定さの中にも光は見出せる的なメッセージだったのだろうか?うーむ。
この本を肯定的に読むには、自分には読解力と、人生での昏い体験とがまだ足りないかもしれない。
※他の方の感想を幾つか拝見して追記
・肯定的な意見が多数で、やはり自分がややこしく考えすぎかもでした。
・「拓未に障害や暴力性があってもかわいがったのか疑問(概意)」と書いている方がいて、共感した。
・拓未の内面が描かれないために、“千紗子による洗脳”感が強かったのかもしれない。
元の家族との暮らしをどう感じていて、千紗子が抱える闇をどの程度理解しているか、そういう描写があれば、二人の関係性の不健康さも多少は薄まる(一層濃くなる可能性も、なくはない)。
作者としては「実は拓未は記憶がないフリをしていました」をオチにしたかったのだろうし、実際「最後の1行で驚いた、感動した」という感想も多いことを見ると、本文中では触れられなかったのか。