あらすじ
かつて毒ガス兵器の開発者がノーベル賞を受賞した。その後も科学の軍事利用は止まるところを知らず、原子力、遺伝子ビジネスなど、研究はさらに未知の領域へと踏み込んでいく。本書は科学史と思想史を手がかりに、〈科学の古典的規範〉がいかに崩壊したかを明らかにする。さらに、専門家ではない人々が、科学の暴走に歯止めをかけるために必要な〈感覚〉について論じる。危機に瀕する科学に対し、どこに問題の本質があるのか核心を突く画期的論考。【目次】まえがき/第一章 科学の自覚/第二章 科学の変質/第三章 ある科学者の肖像/第四章 科学批判の諸相/第五章 科学の文化的批判に向けて/あとがき
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Posted by ブクログ
哲学者の考える科学の話だが,教えさせられる点が多い.科学者の仕事が個人で完結した時代から,次第に社会との接触が始まり,さらに社会から規制される過程を克明に描写している.「古典的規範」がCUDOS,さらにはPLACEになっていく.多くの科学者の事例を取り上げていることも理解しやすい構成だ.国家が主導する不適切な科学政策への抵抗として,P211に挙げている次のパラグラフが良い.「国家の中枢でなされる決定に参加できる成功した大科学者が,審議会や学術会議などの発言機会を利用して,自分の優雅な老後や帰属領域のことだけを考えるのではなく,科学の古典的規範に照らした上で少しでも健全な知識生産体制を整備するための提言を,たゆまず行っていくべきだ.」