【感想・ネタバレ】選択と捨象 「会社の寿命10年」時代の企業進化論のレビュー

あらすじ

市場の力を活用すれば、日本は再生できる! JAL、ダイエーなど、企業再生の修羅場を知り尽くした著者が、ブラック企業・ゾンビ企業の淘汰から始まる日本再生の処方箋を説く。真の改革のチャンスは危機の最中か直前にしかやってこない。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

選択と集中ではなく、捨てることが大事というタイトルからしてすぱっと明確な本。冨山氏の本
古くて大きな会社に対する処方箋として名著。
企業再生実務の観点からも非常に示唆深い。
昭和時代の遺産、歴史を学べる本とも言えそう。
後段のGとLの世界の課題感も個人的には共感。


メモ
・現代においてイノベーション環境で持続的に成功している会社は、コアをわきまえた上で、事業と機能の新陳代謝と連続的なイノベーションを積み上げている。コアドメイン周辺で起きそうなラディカルなイノベーションシーズは若くて小さな会社を買収していくスタイルをとっている。
・運命共同体を形成する約束事としての企業理念やらしさなんてものはグローバル化とイノベーションの時代においては百害あって一利無し。
・大人の会社としての新陳代謝とは、若くて小さな会社を取り込んでしまうこと、イノベーション力が競争要因になっている領域は捨て去り参入障壁高く競合密度の低い市場に出ていくことの二つ。例えばgeは航空機エンジン、医療機器、重電といった若くて小さい会社は戦えない領域に出ていった。代わりにデジタル領域やコスト勝負の領域からは撤退してしていった。
・カネボウ再建のwhatの話。手触り感がないならそれがわかる人を据えて解決に繋げようという話。
・企業は共同体を守り延命することご至上目的になった瞬間に腐敗し、傷んでいく。成長や理念や競争は二の次になる。内向き思考になる。
・歴史の真相は中空的なことが少なくない。だからこそ関わる人の動機付け、インセンティブや性格を観察することが重要になる。それこそが結果の決まっていないシナリオの先を予測する最も有効な手掛かりになる。経営観を醸成する根本は人間観を磨くこと。
・G型は激しいグローバル競争を意識して戦略的にダイナミックに選択と集中を行う必要。L型は足元を見つめてコツコツとやるべきことを精緻にやること。
・地方の基幹産業は農業ではなく、サービス産業。この底上げをしない限り地方経済再生につながらない。
・地方で活きていく人々のために行うべきこと
 共働き夫婦が子供2人を育て大学を出せる年収を得られること
 限定正社員やジョブ型雇用の長期雇用を確立すること
 労働者がプライドもって働ける環境を整えること
 すなわちL型新中産階級の構築。
・言葉を見に付けていない人間に考えろといっても時間の無駄。

0
2021年01月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

選択と捨象 「会社の寿命10年」時代の企業進化論 2015/6/19

永久に変化し続けないと淘汰されてしまう
2015年12月13日記述

元産業再生機構COO、経営共創基盤CEOの冨山和彦氏の著作。
2014年10月6日から2014年12月22日まで朝日新聞・朝日新聞デジタルにおいて計10回にわたり連載された「証言そのとき 再生請負人がゆく」をベースに大幅に加筆したものである。

本書で唯一残念であるのは誤字である。
P48のタイトル 中小企業の経営者から産業革新機構のCOOへ
明らかに産業再生機構の間違いであろう。
朝日新聞出版の編集、校正はどうなっているのか?
自分が読んだのは第1刷の分であるので、それ以降は修正頂きたいものである。

カネボウ、三井鉱山、ダイエー、JALなどの企業再生に関して振り返り企業経営において大事な事は何かを語る。
カネボウに関しては他の書籍でも数多く著者が書いてきているので再読感はある。
しかしそれ以外の三井鉱山、JALに関しては本書で裏舞台を見ているような思いだった。

印象的だった提言、指摘、文章を書いてみる。

永久に変化し続けないと淘汰されてしまう

多様性を持たないホモジニアス(同質的)な組織では、産業構造の大きな変化には対応できない
意識的に多様性を高める努力をしなくてはならない
⇒外から人材を連れてくる、共同体の発想に染まっていない若手を抜擢する

あれもこれも(多角化)ではなく、「あれかこれか」(選択と集中)

ローカル経済圏においては良質な雇用を増やし、経済全体を押し上げるには本当はつぶれるべきなのに生きながらえているゾンビ企業や、若者を酷使するブラック企業には退出してもらうことが大事なのである

ソニーがまず行うべき改革は、何よりも大人の会社として新陳代謝力を持つこと自前主義の文化や自らの革新性や技術力への過度な期待を捨て去り外部資源を買収・活用できるよう、心も体もフルオープンな会社になること

大人の会社としては、ものすごいスピードでラディカルなイノベーションが次々と起っているような市場は、若くて小さな会社に譲ればいいのである。

経営陣選びは「戦う指揮官」を誰にするかということである。
定年退職者の「あがり」や、社員の論功労賞のポストではいけない。

Lの経済圏では、顎を引き、地域と顧客に密着して、精緻に緻密に執念深く経営すること
規模より密度を制することが大事

「あれかこれか」を選択する場合は、将来世代から見てどちらが好ましいかを基準に決めていくしかない

0
2022年01月12日

「ビジネス・経済」ランキング