【感想・ネタバレ】この国の空のレビュー

あらすじ

戦争末期の東京――空襲に怯え、明日をもしれぬ不安な日々を過ごす十九歳の里子。母と伯母と杉並の家に暮らす彼女の前に、妻子を疎開させた隣人・市毛が現れる。切迫する時代の空の下、身の回りの世話をするうち、里子と市毛はやがて密やかに結ばれるが……。戦時を生きる市井の人々の日常と一人の女性の成長を、端正な筆致で描き上げた長編文学作品。谷崎潤一郎賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2017年、5冊目です。

太平洋戦争末期の東京で暮らす一人の女性が、少女から大人になっていく様が、
精緻な市井の暮らしぶりと共に描かれている作品です。

戦争に影響を受けた人々の人生を描いた作品は、浅田次郎作品を、
しばしば読みますが、市井の人々の暮らしを精緻に描いている作品は、
初めて読んだ気がします。
自宅の庭を畑にしトマトなど野菜を栽培しているところで、
畑の土に家の下肥を自分で撒く様は、主人公が女性であるだけに、
情景ばかりか、その時代の匂い空気を震わせてながら伝わってきそうです。

主人公”里子”の心情が細密に、しかし誇張、虚飾されずに描かれており、
人間としての成長と共に女性としての心情の揺らぎを感じることができます。

20歳の女性と妻子が疎開して一人で暮らしている隣人の
38歳の男性の間に生まれた恋。戦争が終わり、二人の関
係はどうなるのか?そこは描かれずに終わっています。
「この国の空」を見上げるように様々な思いを馳せるだけです。

昭和58年作品。谷崎潤一郎賞受賞

この本は、リサイクル本の店を回っていて、偶然出逢って手にした一冊です。
いい作品に出逢えたと思っています。31年ほど前の作品ですが、戦時下を描いた作品であることも影響していると思いますが、作品に劣化を全く感じませんでした。

おわり

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2017年01月29日

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