【感想・ネタバレ】複眼の映像 私と黒澤明のレビュー

あらすじ

息詰まる創作の現場、あの名作の秘話が今、明かされる

「生きものの記録」以後はどうも冴えない作品ばかり――。『羅生門』『生きる』『七人の侍』の共同脚本家が見た映画人、黒澤明の真実

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Posted by ブクログ

ネタバレ

稀代の脚本家、橋本忍が日本映画界の巨匠、黒澤明との葛藤を描く。

以下、まずは気になるところをつらつらと。
・黒澤明は閃きを掴む。
・脚本の善し悪しは誰もが手をぬきがちになる人物の彫り。黒澤明の脚本つくりの最大の特徴は手抜きしてはならないものは徹底的に手を抜かない。
・脚本直しは三流監督。
・黒澤明は芸術家へと変貌していった。


この本はいわば橋本忍が黒澤明との間に感じた自伝的書である。
作中に黒澤明が自伝はどんなものでも面白いと語っているが、全くその通りである。
人にはそれぞれの人生があり、ドラマがある。
それが面白くないはずはない。
感動する。

巨匠として日本映画界に君臨し続けるイメージのある黒澤明だが、この本の中では監督の苦悩と苦闘が見える。
それは常に複眼の目でともに脚本を作っていた橋本忍だから知っていることである。
橋本の黒沢映画への批評は黒澤という人物を知っているから出来る批評でもある。

そしてなんとまあ、面白く書いてくれるのだ。

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2010年12月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

黒澤明作品を見る中で、脚本への強烈なこだわりを知った。
脚本を書く、というか脚本家を巻き込んでホンを生もうとすること、さらにその手法を確立しようとすることが映画製作の一部であった、と。
それを脚本家の側から書いたのが、この本。
「ライター先行形」、「いきなり決定稿」なるほどなるほど。
ネットで知っただけの「侍の一日」という未完作についても。

で、面白いのはこの本の文体で、なかなかこってり味なのだ。
なんでも1918年生2018年没の作者が、2006年に発表したもの。
つまり80代後半。
日記の習慣がないという人なのに、あの時あの場面で誰がどうしたかを明確に描いている。
つまり多分盛ってる。
だからこそ面白いし、だからこそ事実ベースの研究とはそぐわない。
だいたい繰り返しが多いし。
そもそも橋本忍の個性も強いし。
ちょっと笑っちゃったのは、死にそうな人の病床にお見舞いに行って、半分説明半分恨み節なドストエフスキーばりの長広舌を繰り広げるところ。
そんなんに付き合わされたら死ぬわ。
また、伊丹万作の幽霊に語り掛けるところとか、もう作者半分向こう側じゃね。とか。

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2025年03月07日

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