あらすじ
あの時、あの街で、君に出会った
中国返還前の香港で、たくましく生き、様々に悩み、見果てぬ夢を追い続ける香港の人々の素顔。第32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作
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Posted by ブクログ
別れ、再会、疎遠、遭遇、衝突、すれちがい、離散
‐返還前夜の香港‐あの時あの場所でしか起きえなかった交流の必然と偶然が描かれている。
生活を前に進めるには持っているものを切り捨てなければいけない、いくつものそういう描写に気持ちが辛くなった。
「多様性」の理解を一歩進めるきっかけにもなった。
多様性とは、肌の色、宗教、年収などではなく、バックグラウンド。いつ香港に来たか、どんな手段で香港に来たか、なぜまだ香港に居続けるのか、そういった全ての背景が一人ひとりを形作る。背負っているものを明かすことあるし、隠しておくこともある。これらの集合体が香港の多様性だと知った。
作中に何回か出てきた「尊厳」という言葉が気に入った。
(本物の資本主義国である)香港において尊厳を保つため、時に少し高い買い物をする。相手の尊厳を守るため、モノを直接手渡す。資本主義は尊厳を過敏に反応させる。尊厳を気にすることなく過ごせる国は「いい国」であり無防備だ。
Posted by ブクログ
香港返還の瞬間に立ち会うため、返還の前後2年間現地で過ごした筆者による記録。
政治的、経済的に不安定な中でもたくましく生きる香港の市井の人々の人生が、筆者との交流を通して瑞々しく時に生々しく描かれている。
現在の、この不安定な日々の中、勇気をもらえた作品。長編が苦手だが、読みやすい文章&電子書籍だったおかげで、どんどん読めた。
「すべてのものは変わってゆく。永遠に変わらないものなど何一つない。予期しない変化を嘆いたところでどうしようもない。ただその中で自分が生き残ることだけを考えて前に進む。」