あらすじ
血に濡れたネグリジェ姿で売春宿から逃げてきた少女、バード。黒頭巾の男が子どもの遺体を街外れに埋めたらしいという彼女の証言によって、ティムは19人もの子どもの遺体を発見してしまう。彼らのほとんどが胴体を十字に切り裂かれていた。あまりの出来事におののくティムだったが、さらにカトリックの聖堂の扉に少年がはりつけになっているのが発見される。19世紀半ばのニューヨークにおけるプロテスタントとカトリックの対立、アイルランド系移民の排斥、政治闘争などを背景に、苦難に負けず「前に進みつづける」人間たちの勇姿を描いた雄篇!/解説=日暮雅通
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Posted by ブクログ
面白かった!
ティムとヴァルの確執(というか、一方的にティムがヴァルを憎んでいた)は、成る程、そういう事だったのか。
そしてその、真相が判った後のティムの心境の変化、これは上手いなぁ。
これを書いたのが男性作家だったら、とてもとても嬉しかったろうと思う。
女性の性に対して、この話のような見解を持つ男性が増えて欲しい。
Posted by ブクログ
19世紀半ばのニューヨーク。
創設されたばかりの警察で働く新米警官の奮闘を描きます。
ティム・ワイルドは、殺人事件の捜査に当たりつつ、逃げてきた少女バードを下宿にかくまっている。
下宿の女主人もバードを可愛がっていたが、その身に危険が迫る‥?!
移民が殺到し、治安が悪化するニューヨーク。
移民排斥運動もおき、プロテスタントとカトリックは激しく対立し、流言も飛び交う。
プロテスタントの牧師の娘マーシーがカトリックの貧民の慰問に行くのは、当時としては常識はずれなことだった。
いきいきした女性マーシーの意外な側面も。
バードが逃げてきた売春宿の女主人シルキーは、兄のヴァルに恋していたことがあったらしい。
早くに両親をなくした二人だけの兄弟だが、大柄で強引な兄のヴァルと気が合わないティム。
だがその理由には、互いの誤解が‥
兄の放蕩の理由も、じつは切ない兄弟愛だった‥
警察の権威も捜査方法も確立していない時代。
独特な隠語があって、同じ英語圏から来た人間同士でも、ろくに言葉が通じないこともあったとは。
うねるような街の情勢が熱っぽく描かれ、読み応えがありました。
センチメンタルな部分も貫かれて、いい読後感です。
作者はシャーロッキアン(シャーロック・ホームズのファン)だそうですが、ティムの人間像は「卑しい街を行く高潔な騎士」というハードボイルドの探偵のようでもありますね。