あらすじ
政治に対する倫理の優位を信じ望ましい政治秩序を構想する、変革の思想としてのユートピアニズム。現実を分析し、そのユートピアニズムの偽善を暴くリアリズム。戦間期二十年の国際政治に展開した理想主義と現実主義の相克と確執に分析のメスを入れ、時代と学問の力動的関係を活写する、二十世紀国際政治学の記念碑。(新訳)
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Posted by ブクログ
【121冊目】これを読まずして◯◯なんか語るな、っていう本はたくさんありますが、主権を持つ者としてあまり本を読まずに選挙に行くことは仕方のないことですね。民主主義社会っていうのはそれでいいんだと思います。
さて、政治、特に国際政治を語るにはこれを読まないと資格がないよっていう名著中の名著、クラシック音楽の「第九」、歌謡曲の「川の流れのように」に当たるのがこの本です。イギリス外交官だったE.H.Carrがケンブリッジ大学教授時に書いた国際政治の本。戦間期の二十年を、理想主義が支配した前半と、その敗北によって一気に現実主義の前に陥落した後半によって構成された期間だったと看破します。「危機の二十年」というタイトルですが、第一次世界大戦や第二次世界大戦に至るまでの過程についての描写はCarrの主張を支えるための例示程度にしか出てこず、どちらかと言うと、理想と現実が(国際)政治において果たす役割について、深い洞察を持って描かれています。hindsightをもってすればCarr自身がとんでもない理想主義に陥ってることはクライマックスで一目瞭然なのですが(Marxismに影響を受けていたことは有名な話)、それを補って余りある理想主義と現実主義の相克に対する考察。
結論を言ってしまうとすごくありきたりな話で、現実を直視する冷静さと誠実さ、だけどそれだけではなく、我々を勇気付け前に進めようとしてくれる理想や夢、その両方が必要だよねってことみたいです。
こちらで読む本のほとんどがそうですが、西欧世界からの視点に終始しているのが残念なところ。