【感想・ネタバレ】寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」のレビュー

あらすじ

「坊主丸儲け」「寺は金持ち」というイメージは強いが、日本のお寺は、かつてないほどの危機に瀕している。菩提寺がなくなり、お墓もなくなってしまった――。こんな事態が現実になろうとしている。

中でも地方のお寺の事態は深刻だ。高齢化や過疎は檀家の減少につながり、寺の経営を直撃する問題となっている。寺では食べていけないことから、地方の寺では、住職の跡継ぎがいない。しかし、寺は地域住民の大切なお墓を管理しなければならないため、簡単に廃寺にしたり、寺を移転したりすることはできないのが現実だ。

一方、都会で働くビジネスパーソンにとって、お寺やお墓は遠い存在であり、お寺との付き合いは「面倒」で「お金がかかる」ばかり。できれば「自分の代からはもう、お寺とは付き合い合いたくない」と、葬儀は無宗教で行い、お墓もいらない、散骨で十分という人も増えている。

経営の危機に瀕するお寺と、お寺やお墓はもういらないと言う現代人。この問題の根底には、人々のお寺に対する不信感が横たわっている。僧侶は、宗教者としての役割を本当に果たしてきたのか。檀家や現代人が求める「宗教」のあり方に応えることができているのか。

地方崩壊の根底に横たわる寺の消滅問題について、日経ビジネスの記者が全国の寺や檀家を取材し、徹底的にルポ。芥川賞作家の玄侑宗久氏らのインタビューを交えてこの問題に迫る。

お寺やお墓、そして地域の縁を守ろうと必死で努力する僧侶たちの姿と、今だからこそ、仏教に「救い」を求めて集まる現代人の姿が見えてくる。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

お寺に興味を持つのは、ある程度年齢が高くなる頃である。
それはなぜかと言うと、自分の親が亡くなったり、
自分のお墓の事を考え始めるからだ。

私が今回この本を読むことになるのも、
そういう年齢になった自分がお寺を気になり出してきたからだろう。

この本は3つの事を教えてくれる。

①地方の困窮寺院の声が聴けてお寺の現在の実情がわかる。

②伝統仏教の構造をひもといた歴史がわかりやすい。

③菩提寺との付き合い方がわかる。

将来、全国の7万7千カ寺のうち3割から4割が消滅する恐れがあると、
本書は指摘する。
果たして、本当だろうか?

もっとも深刻な問題が
全国の寺院7万7千カ寺のうち、住職がおらず、後継者も見つからない
「無住寺院」が約2万カ寺存在する。
さらに活動停止している「不活動寺院」が2000カ寺あるという。
この傾向は地方だけではなく、都心の寺でもある問題であるという。

壇家の高齢化に伴う現象。
地方から都心への人口流入により、お墓を都心に改葬する人の増加。
他にもいろいろ原因がある。

話は変わるが、本書に興味深いエピソードが書いてあるので紹介しよう。
福沢諭吉がミイラで発見されていたという話。

今から38年前の事。
諭吉がミイラで発見された場所は東京都品川区上大崎の常光寺(浄土宗)。
諭吉が亡くなった時、本来なら菩提寺の麻布十番にある善福寺(浄土真宗本願寺)であるべきが
なぜ、常光寺に埋葬したかと言うと、諭吉の遺言で「眺望がよかった常光寺にして欲しい」と書いて
あったからである。

しかし、世の中は諭吉を安らかには眠らせてくれなかった。
常光寺である理由で宗派が違う者は埋葬できないように決まってしまい、
諭吉は改葬(移動)しなけれはならなくなった。
そこで、穴を掘り棺を開けたら、着物を着た諭吉がそこに居た。
当時そのミイラを観た関係者によると、お茶の葉が沢山かぶっていたという。

ミイラになった原因はお茶の抗菌作用と地下の冷水に浸かった状態がそうなったのでは
ないかと推測する。
ビックリなエピソードである。
平成の日本を観て諭吉はどう思ったのだろうか、聞いてみたくなる。

最後になるが寺院消滅をくいとめる為にはどうしたらいいかを
作家の佐藤優氏が提言しているので、本書を読んで確認して欲しい。

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2016年01月12日

Posted by ブクログ

日本の地方過疎化に寺院はどういう状況になっているか?僧侶かつ記者の著者が、現状のルポと歴史背景を記述。
歴史的には、江戸時代で体制に組み込まれる。寺請制度で、すべての民が基本どこかの寺の檀家となり、それが寺の経営も支えることになる。しかし明治の廃仏毀釈、国家神道化で仏教の政治的梯子が外される。その後は政治に擦り寄りつつ、勢力をキープし、中国大陸での布教活動や殺生戒を破って従軍、武器の寄進などの戦争協力をすることになる。戦後のGHQの農地改革で領地を小作人に払い下げ、経済基盤が弱くなり、さらに宗教離れ、過疎化で檀家が少なくなってきた。
現状では全国7万の寺院のうち、無住職がすでに多くあり、ま高齢化しているため都市が消滅するよりも早く寺院が消滅していく可能性がある。寺院は個別で独立宗教法人であるため、本山が直接指示することは難しく、また行政も政治と宗教の分離のためサポートは見込みづらい。実際311では宗教法人へのサポート体制は欠如している。

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2015年12月17日

Posted by ブクログ

良書。日本における神社仏閣の現実を、知らなかった自分に唖然とした。日本人としての自分のあり方をも考えさせる。

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2015年08月14日

Posted by ブクログ

この本で紹介されている過疎化が進む地域の寺院の荒廃ぶりは想像以上だ。ただ荒廃・衰退していく教団事情について述べるだけでなく、このような現代の仏教が直面する問題に対する、僧侶・尼僧たちによるユニークな取り組みについての紹介もある。

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2017年03月01日

Posted by ブクログ

お寺の存続問題をわかりやすく書かれていて、読みやすかったです。
学校がずっと仏教系だったので、よけいに興味深く感じました。
京都の「祇王寺」は行った事があります。「尼寺」としての歴史が
終わりに近づいていると書かれていました。
薩摩藩島津家の菩提寺がないことに、驚きました。
薩摩藩主は、歴代名君といわれていますが、廃仏毀釈の嵐には
屈してしまったようです。

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2016年02月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

けっこう前からわかっていて、という日本でよくあるパタンの話なんだが、では、自分が檀家寺のお布施に何十万出せるかというとそれもなかなか難しい。良い葬式仏教ってどんなものだろう。

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2016年01月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「遺骨ってゆうパックで送れるらしいよ」といいながらこの本を返却してきたお客さんがいて衝撃を受け読んでみることに。
「送れるかもしれないけれど送る人そんなにいないだろう」と思いつつ読み進めると、ゆうパックの話だけではない衝撃的なことがたくさん書かれていました。

本当に以前から「宗教法人は非課税だから」とか「坊主丸儲け」とか宗教関係職はあまりよく言われなかったものですが、これを読むとそんなことは全くなく、今の寺院の大変さと言うものが壮絶なことになっているのが良くわかります。
世俗習慣の変化と言うのも大きいとは思いますが、政治がらみというか社会の仕組みや制度の変化によるあおりがかなり大きかったのだ、ということは全く知らず大変興味深く読みました。寺院の土地を一般に払い下げ、と言うような事実は一般には全く知られていないことでしょうね。

著者は僧侶でもあるライターさんと言うことで、僧侶ならではの目線と危機感をリアルに感じられ大変読み応えがありました。
おそらく手に取るのは40代以降で興味のある人だけだろうとおもわれますが、寺や墓のことが気になりだしたら常識やマナー本とは全然違いますが、社会人として読んでおいてもいい一冊かもしれません。
自分もこれを読んで、菩提寺がなくなったら困るのでお布施を増やしたほうがいいのだろうかと思ってしまいました。

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2015年10月30日

Posted by ブクログ

なんで日本の仏教は、上座部仏教と違って妻帯者OKなのかなとか、色々疑問があったのですが、本書を読んで結構スッキリしました。そして、お寺さんってどのような経営になってるんだろうとか、税金回避で儲かってるんじゃないかとか、そもそも実態はどうなんだろう、というお寺に関する素朴な疑問もスッキリ解決しました。

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2017年11月05日

Posted by ブクログ

人口動態と日本人の価値観の変化により苦境に追いやられている寺院の状況を取材している。寺院の収支や住職の役割、宗教崩壊の歴史などがよくわかる。福沢諭吉のミイラの話も面白い。

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2015年07月19日

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