あらすじ
ある事件をきっかけに会社人間だった父親の人生を追い始めた著者。その過程で見えてきたのは、家族までを抱え込むことで社員に忠誠心を植え付けてきた日本企業と、会社のために身を削って働く父の姿。会社に忠誠を尽くせば一生安泰。そんな時代が終わって十数年。今、会社は利益のために人を平気で切り捨てるようになった。
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Posted by ブクログ
著者の自伝。
戦後日本を支えた会社人間だった父と、敷かれたレールを嫌っていたら、いつの間にかレールそのものが消えていたという著者。
著者がニッポン株式会社と表現する社会については、私は全くもって未経験の世界。そんな時代もあったのだな……と。
それよりも、著者がトラック運転手をしていたときの話が衝撃です。
なんとなくその業界の状況は想像していたものの、ここまでなのかと。そして、これからどうなるのかと不安に駆られます。
Posted by ブクログ
著者の自伝でありながら、父親と著者自身の「仕事」を通して時代の変化を浮き彫りにしており興味深く読んだ。格差は以前から存在し、良い大学にはいれば良い会社に入れて一生安泰、という「ニッポン株式会社」の崩壊によって、その格差が露呈したというのが筆者の見解。格差を是正せよ、という論調ではなく、機会の平等はないとだめだよね、という肩のチカラの抜け具合がなんだか心地よい。やっぱり、汗して働く人が報われる社会が大事。
Posted by ブクログ
家では優しい父だった。朝は郊外の家から子供が寝ているうちに出勤、夜も接待で遅く休日も接待ゴルフが多かった。団地の原風景、社宅住まい、父の出世による転勤・・。会社の運動会が楽しみだった少年時代。
まさに戦後のニッポン株式会社を支えたサラリーマンの典型的家庭に育った著者は、大学在学中に父親になったが、その孫の顔を見ることなく父は倒れた。
父はあの大和銀行国際総合部長だった。あのように正義感の強い父が会社のためには偽装工作にまで手を染めていた。父はそのストレスで死を向かえる結果となったのではなかろうか。卒業後、父と同じ金融(信金)に入庫して金融機関の内実を体験し父の立場を思い知ることになる。
日本の国って何なのだ、働くとは何なのだと一念発起し裏社会も体験、肉体労働を自分に課すべく派遣請負のトラック運転手になる。
戦後のニッポン株式会社は崩壊、格差が広まっている現状を身をもって知る。父は会社に滅私奉公した。その足跡を辿ることで父を理解していく。
人は時代や社会の影響を受けずには生きられない。批判するのは簡単だがその状況を理解した上での父へのレクイエムは重い。
Posted by ブクログ
銀行の役員で会議の席上で倒れたおとうさんとそれに反発して会社員にならなかった息子昔の夢が忘れられず息子(父)の反発を買った祖父この本を見てから 運送トラックが 本当に怖くなりましたトラックの事故が起きたりするとこの運転手さんも寝てなかったりするのかな とか思う
Posted by ブクログ
大和銀行の出世階段を順調に登るが、最後には多大な業務量を抱え、職場で倒れたまま帰らぬ人となった父を持つ著者。その著者はそんな会社人間だった父を否定するように転職を繰り返し、小さな会社のトラック運転手へとたどり着く。しかし、その労働契約は、労使契約ではなく請負契約だった。しかも、企業が社会保険コストを削減するために編み出した「偽装請負」だ。
「ニッポン株式会社」にはその昔、「会社人間」という普遍的存在があった。また、現在の「ニッポン株式会社」は格差社会だ。その底を象徴するのが「偽装請負社員」。互いに遠い存在であるそれぞれが父と息子になってしまった。その2人を比較することで混沌とした日本社会を著者は浮かび上がらせようとする。
読みどころは著者が就いた過酷なトラック運転手業。偽装請負に加えて、使用者は労働者派遣法や労働基準法を無視しているのに、そのことを労働者は気づかない。ワーキングプアや派遣切りよりも問題だ。日本社会の底はこれほどまでに深いのかと痛感する。