あらすじ
デンマークの首都コペンハーゲンで開催されたオークションで、チャールズ・ダーウィンの所有していた聖書が出品された。調査に訪れたシグマフォースのグレイソン・ピアース隊長は、謎の暗殺者に命を狙われる。同じ頃、ネパールの僧院で発生した奇病を調査していたドクター・リサ・カミングスは、狂気に支配された仏教僧とともに、同じ奇病に感染したシグマフォースのペインター・クロウ司令官を発見した。病気発生の隠蔽を図る謎の組織に捕えられた二人は、ヒマラヤ山中にあるグラニートシュロス(花崗岩の城)と呼ばれる施設に収容される。一方、南アフリカ共和国の動物保護区では、現地のズールー族の間に伝わる謎の怪物の目撃例が頻発していた。ヨーロッパ、アジア、アフリカで起こったこの三つの事件が一本の線で結び合わさる時、かつてナチス・ドイツの行っていた恐ろしい研究の正体が明らかになろうとしていた……。ハインリッヒ・ヒムラー、ヴェーヴェルスブルク城、ブラヴァツキー夫人、ルーン文字、カンブリア爆発、ヒマラヤのシャングリラ……この小説に記された歴史的事実の数々。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
ヒマラヤ、デンマーク、そして南アフリカで進行していくそれぞれの事件が、やがて1つの落としどころに向かって収斂していく様は実にダイナミックで、清々しい気分になるぐらい上手くまとめられている。
シリーズ第2作にしてすでに、シグマフォースというチームの持つ魅力が存分に描かれており、また肝心のストーリーについても、前作より完成度は高いと感じた。
特に第1作の「マギの聖骨」は、キリスト教的素養を下地として持たない大多数の日本人にとっては少し難解な部分もあったが、今作はナチスに関する最低限の知識があれば十二分に理解可能なプロットとなっているので、そういった意味でも味わいやすい。
物語のヤマ場で量子論を恋愛感情に転化してしまっているある種のご都合主義だけはちょっと…と正直思わないでもないが、辻褄合わせを含めたディテールの技術も確かで、高レヴェルのエンターテインメントに仕上がっている。
Posted by ブクログ
ジェームズ・ロリンズによるシグマフォースシリーズ第2弾の上巻。
今回はナチスが研究していたとされる研究内容がテーマ。近代の謎がテーマになっているため、案外身近なのかなと思いきや、出てくる話は量子論をベースとした結構難解なもの。
物語は大きく3カ所でそれぞれに起こる事件を並行して展開していく。あくまでも本編の主人公はグレイなのだろうが、どうも本作の真の主人公はペインター・クロウであるようにしか思えない。
ペインターはグレイの代わりにヒマラヤの山中に調査に出かけ、事件に巻き込まれる。一方、グレイは恋人レイチェルに会えるウキウキ感の中で事件に巻き込まれ、ダーウィンの聖書を危うく奪われかけたり、危うく殺されかけたり。そして、遠く離れたアフリカでは奇怪な生物が目撃され、、、、といった感じで、いきなり危機的状況に置かれるシグマの面々と、それとはなんの関係もなさそうなアフリカでの出来事が、今後どのように関わってくるのか、読者の興味を引っ張っていく。
相変わらず、疾走感には欠けるが、先が気になる展開は前作から変わらず。蘊蓄の度合いや謎解きの仕掛けなどは若干地味になった感じはあるが、前作同様物語の中にうまく溶け込ませて読者を飽きさせない。下巻が楽しみだ。