あらすじ
旅行会社に勤め、ありふれた日常への疑問を抱えて日々を送る坂脇恭一27歳。冴えない中年ヤクザと同棲し、美人局の片棒をかつぐ元OL田所圭子23歳。ある時、圭子が恭一の同僚をカモろうとしたことから、二人は出会い、絶望の底なし沼へと転がり堕ちていく。揺れる心、立ち塞がる枠(フレーム)――やがて、境界線を跳び越えて走り出した二人が掴んだ自由とは?
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Posted by ブクログ
旅行会社に勤め、ありふれた日常への疑問を抱えて日々を送る坂脇恭一27歳。
冴えない中年ヤクザと同棲し、美人局の片棒をかつぐ元OL田所圭子23歳。
ある時、圭子が恭一の同僚をカモろうとしたことから二人は出会い、絶望の底なし沼へと転がり堕ちていく。
作中に「(自意識や社会の)フレーム」という言葉が何度も出てきて、印象に残った。
心の裡に凶暴な獣を飼いならし、普通に生きているだけでは足りない主人公が、あるとき不意にフレームから逸脱していく。
読んでいて、彼の危うさや貪欲さに思わず惹かれてしまうのは、そこに自分にも通ずる気持ちの断片が描かれているからだろう。
社会のルールや暗黙の了解をとっぱらったところで自意識のフレームがゆらぎ、突き抜けていこうとするさまは、誰にもありうる気持ちの移り変わりなのかもしれないと思わせてくれる。
インモラルな二人のねじれた関係に心がざわざわしつつ、ドライブ感のある文章によって生まれる疾走感に酔いながら、一気に読んでしまった。
結末は爽快感があって良かったけど、苦い落とし穴が用意されているだろう二人の未来はなんだか切ない。