【感想・ネタバレ】学校へ行けない僕と9人の先生のレビュー

あらすじ

鳥山明先生と出会い、少年は生きる希望を見つけた。小~中学校時代、不登校だった著者の実体験を基にした物語。学校へ行けない日々、「9人の先生」との出会いと別れを通じて、喜び、傷つきながら成長していく少年の姿を描きます。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

内容が重かった。不登校になってからの、「フツウにならなきゃ。」という呪縛が繰り返し描かれており、読んだ者の心にズシンとくる。

夕方、自宅2階の窓から近所の小学生を眺めて卑屈になる棚橋少年(著者)。不登校児(著者自身)の気持ちが事細かに描かれており、痛いほど伝わってくる。子供にとって親や他の大人の影響力がどれほど強いのかも。

行けなくなったきっかけは、小1のとき担任の先生にいきなりビンタされたから。そこから学校へ行けなくなり、行っても居場所がなかったり、いじめられたり。

小学校の担任も、心優しい先生もいれば、冷たい先生、豪快でほっとする先生、若さゆえに著者との関わりかたが分からずただニコニコするだけの先生、と様々。

相性のいい先生のときは棚橋少年も少しは学校へ行ける。でも逆もしかり。

親に心配かけまいと必死で教育テレビを見る。勉強する。親の勧める精神科に通ってカウンセリングを受ける。

何人もの家庭教師の先生。やたらと声の大きいフリースクールの女性の先生。本人には言えないからと、わざわざ母親を呼びつけて「子供が学校へ行けないのは親の責任」と言い放った先生。それを後で「本人を叱れないから母親を叱ってやった。」と、わざわざ著者に言い、自宅の母親はそんな素振りを見せないのがさらに著者を傷つける。

いつも学校へ行けない劣等感に悩まされ、追い詰められて下を向いたままだった著者。そんな著者が、憧れの鳥山明先生に会うことで「大げさでなく、生まれてきて良かったと思った」、「世界が今までより楽しそうに見えた」と感じた。

学校へ行かなくても漫画は描けるけど、行けば学校の話も描けるから得。ただそれだけのこと。この言葉が著者の呪縛を解いた。

著者は今、漫画を描いたり、漫画教室の講師をしたり、仲間もできて社会人として順調そうだ。

長い間苦しめられてきた著者のことを思うと道が開けて、本当に良かったと思った。

不登校児に送るエールとしての一冊。

1
2021年05月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「憧れの先生と自分」という図式が好きなので、購入。
息苦しさを抱えて生きる主人公にはだいぶ胸が締め付けられる。
中盤、友人の失踪からの再会があり、それが綺麗なお話に着地しないところに読み応えがある。幼くして自分の本性の浅はかさに気付いたこと、大人になってから客観的な視点で物語にできるのはすごいと思う
ただ正直、そのシーンのインパクトが強すぎた。
肝心の鳥山先生に会ってからの立ち直りの描写も早く、読後少ーしモヤモヤ……。
でも作者が初めて鳥山先生の生原稿を目にしたときのコマは本当に劇的で感動する。
そっくり美しい模写による描写で、作者がどれだけ鳥山先生を崇拝しているかが、読む側にも伝わり、まるで宗教画のようにも見える。尊い。
人間は嫌いだけど人間が作るものはどうしてこうも惹かれるのだろうなぁ……。

0
2018年11月28日

ネタバレ 購入済み

それぞれの人にそれぞれの理があるとはいえ、
優しくないひとにだけは、なりたくない。
(優しくない人は、自分が優しくないことに気づかず自身を優しいと信じて疑わず、そしてそんな人ほど、いい人顔やサバサバものわかりのいい顔をアピールしている)

法律をやぶってなくても、ひとをめちゃくちゃに切り裂いてきた人たちは、世の中にくさるほどいる。
特定の誰かとつるむときだけ性格が変わるひと、昨日までと態度が変わるひと、
心ない言葉。
他人は混乱のもと。
普通にならなきゃ、と自分を追い込むほど、普通になれずギクシャクしてしまう。
それよりも、自分らしくいれるほうが、自然にいられるはずなのに、悪いことをしていなくても周りは普通と外れると放っておいてはくれない。
糾弾してきたり、逆にかまってきたり。

後半の作者本人の話は、作品としては特に感銘は受けなかったが(社会に馴染めないまま成人し、そのままのひともいるだろうから、実話としては、本当によかったことだと思う)、
普通にならなくてはならない、という自責の描写、
平日の昼間に外にいて、周りの目がこわいこと、
身体の病気になろうと画策したりこんなに痛むのに何故本当の病気ではないのか、という自問。
周囲の人間の言動がいかに本人を混乱させているか、
などの描写は、ものすごく突き刺さった。

ゲームのキャラのネーミングについて、大人が自分の意見を言わせたがっているところをウソをつかない、というシーンが特に好きだ。
周囲に、自分に、ウソがつけないから、「普通」の社会性格に適合しにくいのだろう。
そうした描写のひとつひとつに涙し、心かき乱されながら読んだ。

0
2016年03月21日

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