あらすじ
現代ミステリを導く鬼才・島田荘司の到達点
ワシントンDCで発生した猟奇殺人は、恐竜絶滅の謎を追うひとりの男をあぶり出す。そして舞台は、難攻不落の牢獄アルカトラズへ。
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Posted by ブクログ
<あらすじ>
1939年
ワシントンDC近郊で中年女性の死体が発見される。
その死体は手と首をロープで縛られ、首吊りのように木に吊るされていた。
しかも性器が切り取られ、そこから内臓がぶら下がっていた。
検視の結果、死因は心臓麻痺だった。
しばらくして、今度は若い女性の死体が発見される。
死体は1件目の事件と同様に木に吊るされていたが、
今度は腹が切られ、骨盤がノコギリで切断されていた。
検視の結果、死因は交通事故だった。
2つの事件を異常者による犯行とみて調査するも捜査は難航する。
そんな警察のもとに、最初の事件の第一発見者から、
事件に関するものかもしれないから確認してほしい、と
彼が学校で偶然見つけた論文が渡される。
その論文は重力について考察したものだった。
恐竜はなぜ地球で生きていられたのか?
首長恐竜は骨格や筋肉量からして首を支える構造になっておらず、
ティラノサウルスも2本足で走ることなど不可能だし、
翼竜も空は飛べないはずである。
そこで昔の地球は今より重力が少ないと考えると全てに辻褄が合う。
太陽系の惑星の自転速度はほぼ同じなのに、地球の自転速度だけなぜか遅い。
ならばもし、昔の地球の自転速度が太陽系の惑星の自転速度と同じだったなら?
恐竜もあの骨格や筋肉で生きることが可能!
それで地球に隕石が落ちたりしたことで地球の自転速度が遅くなり、
重力が大きくなったことで、恐竜は死滅した。
その後
恐竜に変わって哺乳類が台頭。直立二足歩行する猿が生まれた。
普通の哺乳類は直立すると骨盤の影響で内臓が下に落ちてしまう。
特にメスは子供を産むために骨盤に穴が開いている。
しかし人間はそれを筋力で支えたり、進化の過程で骨盤を変化させメスの骨盤の穴も小さくなった。(だから人間はひどい難産なのだと)
上記の論文を読んだ警察は、論文の著者バーナードの元を訪ねる。
>下巻につづく・・・
Posted by ブクログ
島田荘司さんの小説を読むのはこれが初めてです。
自分が好きな作家さんがこの本の名前をあげていらしたので、手にとってみました。
一部が切り取られた女性の遺体が
森の中に吊るされているのが発見されたところから物語は始まります。
猟奇殺人事件と思われたこの連続殺人から
重力論文へ構成が展開していくわけですが、
興味深い内容の論文にページを捲る手が止まりません。
初めは唐突とも思えるある人物の論文の転記に戸惑いますが
読み進める内に犯人の意図が見えてくるところが恐ろしいです。
実際の科学者であればこのような論文や、こういった書き方はしないという指摘もありますが
この辺りは飽く迄もフィクションということで自分は割り切れました。
地球の自転速度が遅くなり、重力が変わったことで恐竜が絶滅したという説が
あまりに突飛であり一笑に付して終えられないじわりとした恐怖。
日本人作家が書いている外国が舞台の物語ですが、海外ミステリーのようなタッチで違和感もなく読みました。
下巻でどのようにまとめられるのか非常に楽しみです。