あらすじ
流通vs銀行、家電vs光学機器、電気vsガス、フリーペーパーvs雑誌――成熟市場で「成長」を求める壮絶な戦いが始まった。予期せぬ競争相手の出現、破壊される収益構造など、進化するビジネスモデル戦争の本質を説く。
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Posted by ブクログ
BCG内田氏の著書。
コンビニ対銀行、トイレタリー対化粧品など
これまで交わる事の無かった異業種同士による
ビジネスモデルの戦いが始まっている状況に関して
どのように戦うべきか。
異なる事業構造を持つ法人が
異なるルール(競争ルールをあえて変えて)で、
同じ顧客、市場を奪い合う競争に関して論じており、
大変おもしろい。
敵を知り、己を知れば、百戦して危うからず
さすが、BCGという演繹的な展開で吸い込まれます。
--以下ネタバレ--
■異業種競争とは
・これまでの競争ルールが通用せしない
→これまでの競合なら、打つ手が想定できた。
異業種は、既存企業の創造を超えた戦い方を仕掛ける
・成功している企業ほど失うものは大きい
→販売ルートや生産ラインなど、莫大な投資による
資産を持った、既存企業は、失うことを怖がっていては
コンパクトな対応が可能な異業種の新規参入には勝てない。
■なぜ、今?
1.経済の成熟化
→市場の成熟化により、自社市場の拡大が見込めず
新規参入を余儀なくされる
→既存市場の新しい製品開発も、既存事業の市場開発も
どちらも異業種となる選択肢
2.ITの発展
→小売店の存在価値の希薄化
ITにより、小売店独自が保持していた製品情報・ノウハウ
などの情報格差がなくなってきている。これにより、ITと小売の異業種が発生
■異業種格闘技の分析
1.事業連鎖
→どこで異業種格闘が起こるか、想定される競争相手、
自社のチャンスなどを把握
2.ビジネスモデルの深堀→具体的な戦略の検討
1.より大きな(詳細な)バリューチェンを描く
自社をめぐる狭い範囲のバリューチェーンではなく
大きな変化を捉え、何をユーザが望んでいるか把握する。
それぞれのバリューチェーンで何が起こるか
①置き換え:ある要素が別の要素に置き換わる
(フィルム→SD、カメラ→デジカメ→携帯電話)
②省略 ③束ねる ④選択肢の広がり
2.どんな方法で戦いをしかけられるかを把握する
ビジネスモデルとは:顧客に価値を提供するときの手段と儲けの仕組み
(1)ビジネスモデルの構成要素
①顧客に提供する価値 ②儲けの仕組み
③競争優位性の特徴
(2)競合の儲けの仕組みを理解するのは重要
①コスト構造の違い②事業目的の違いから理解する。
①は、既存企業は既に多額の投資実績がある為、圧倒的に不利。
②は、顧客から見れば同じサービスでも、
企業によって事業目的は違い、戦い方は変わる。
例:マイクロソフトのオフィスとググールのフリーウェア
異業種格闘は、予期せぬ相手が、商慣習と全く違う
ルールで戦いを仕掛けられる。
業界ではなく、もっと広く括りで、かつ顧客起点で捉えておく
(1)What(何の価値を顧客に提供?)
→異業種は、顧客への提供する価値は同じでも手段が違うケースがおおい。
①同じ価値を同じ手段で提供→事業構造の違いから発生。
②同じ価値を異なる手段で提供→技術やビジネスモデルの違いから発生
③異なる価値を提供
→時間、空間、財布を奪い合う(一見競争していないように見えてガチンコ)
(2)Who(競争相手は誰か)
→他事業、ベンチャー、業界異端児
失うものがなければ怖いものはない。
競合が、どのような経験・経営資源かを理解し、備える
(3)Where(どのフィールドで戦う?)
①局地戦
→H.I.Sの戦略。かなり小規模から、大規模へ。
→大手企業のおこぼれをもらう(セブン銀行)
②全面戦争
→シェア合戦、デファクト戦争
☆★P.112のロジックツリーは脱帽
■勝ち抜くための戦略
1.どこにチャンスや脅威があるか(事業連鎖の再構築)
2.敵、己、顧客を知る(競争環境の再認識)
3.事業連鎖の中でどう稼ぐか(ビジネスモデルの確率)
4.敵を自分の土俵に引きずり込む(新ルールの確率)
1.レイヤーマスター:バリューチェーンの一要素に特化。
中抜き、結合、代替、選択肢を増やす、機能・価値の追加など
※事業連鎖の要素ごとに顧客のニーズと不満を検討
→宝の山と同時に、脅威となる
2.顧客に軸足を置く。
・事業目的の違いを認識せずに戦っても、勝ち目はない
・競争相手の存在を見落としてないか。時間、空間、財布
→競争相手との違いから、顧客に提供する価値が明確化
・自社のバリューチェンのどこに敵が挑んできたのかを把握する
この仕組みを継続させるには、4が重要。
新しいビジネスモデルの誕生は、新しいルールの誕生を意味する。
相手を新しいルールに引きずりこむ
★①事業連鎖をしっかり描く②競争相手のビジネスモデルを理解する
③自社の強みと弱みを再認識。必要なら自社のビジネスモデルを再構築
Posted by ブクログ
メモ:・アナロジーを用いる・バリューチェーンを中心に広い視野を持つ(保つ)
・視点①顧客②素人③ゼロベース発想(現在の価値連鎖を崩してゼロから考える)・リーダーの重要性(最近ではファーストリテイリングなど)
Posted by ブクログ
社会環境が大きく変化し、ビジネスのスピードも急速に早まっている現代、競争の形自体も非常に複雑になってきています。同じ業界内に閉じて競争関係を見ていては、いつの間にか足元をすくわれてしまうことも少なくありません。10年以上前から業際化、という言葉は使われてきましたが、近年はより顕著になっているのです。その一つの結果が、iTunesなどのコンテンツ配信サービスが普及したことによる、音楽業界(とくにCD関連)の衰退です。
では、どうやってこれだけ複雑な競争環境で生き残っていくか。そのためにはビジネスモデルの創造的破壊を行い、そして新しい可能性を開いていくことが必要になります。この「異業種競争戦略」には、そのためのフレームワークが整理されており、経営戦略・事業戦略を考えるためのベースとすることができます。
以下、解釈と要約です。
○異業種間競争とは
異業種間競争とは
・異なる事業構造をもつ企業が
・異なるルールで
・同じ顧客や市場を奪い合う競争
と定義されます。競争の最大のポイントは“バリューチェーン”と“ビジネスモデル”。この2つをどのようにデザインするかがかぎになります。
○バリューチェーンの再構築
まず、異業種間競争を戦っていくには、対象の市場でのバリューチェーンの再定義が必要となります。生産から消費までの一連の流れ、ライフサイクルをデザインしなおすのです。もともとあるバリューチェーンの構造に変化を加えることで、自分の強みを活かして戦える環境を作ってしまうことが目的です。そのためには
・省略 : プロセス・ステップを減らす
・束ねる : プロセス・ステップをまとめてしまう
・置き換える : プロセス・ステップをまとめてしまう
・選択肢の広がり : プロセス・ステップの選択肢を増やす
・追加する : 新たなプロセス・ステップを作る
という5つの方策が取れます。
○ビジネスモデルの再検証
バリューチェーンをふまえたうえで、ビジネスモデルの再検証を行います。そのためには自社と競合について、以下の点について調べ・比較することが必要になります。そして相手の弱い部分に自分の強みをぶつけに行くことが必要です。
・顧客への提供価値:
- 同じ価値×同じ手段
- コスト構造の違い
- 事業目的の違い
- 同じ価値×異なる手段
- 技術の違い
- 提供プロセスの違い
- リアル/サイバーの違い
- 所有/利用の違い
- 異なる価値×異なる手段
- 時間を奪う : 顧客の時間を占有する
- 空間を奪う : 顧客がいる場を占有する
- 財布を奪う : 顧客が使うお金を占有する
・競合関係の把握:
- 他業界からの参入者
- ベンチャーの存在
- 業界の異端児・イノベーター
・戦う場所・戦い方のスタイルの把握:
- 局地戦
- スモールスタート
- コバンザメ戦法
- アキレス腱を突く
- 全面戦争
- シェア競争
- デファクト・スタンダード
- 市場リプレース
○ビジネスモデルの確立
ビジネスモデルを再検証した上で、あたらなビジネスモデルを確立していくことが必要です。そのためにはまず、顧客に提供する価値を定義し、そして儲けの仕組みを確立することが必要です。顧客に提供する価値、とは「顧客が何をしたいか」を突き詰めた結果から得られる、最終的に顧客が得たいと思っている価値、を捉えることが必要です。
儲けの仕組みとしては、大きくは4つのパターンがあります。
・トールゲート(料金所) :
利用量に応じて課金する仕組み。
だれもが利用するサービスや商品に有効。
・イネーブラー(撒きえ) :
自分のサービスに誘引する仕組みです。
フリーミアムが該当するでしょう。
・エンラージメント(拡張) ;
一度取り込んだ顧客とのビジネスを広げる仕組み。
プレミアムサービスを用意しているパターンが該当します。
・ブロックプレイ(妨害) :
競合の商品を選択しないように仕向ける仕組みです。
顧客の選択肢を自社に向ける、囲い込み戦略です。
○新しいビジネスのルールを確立する
確立したビジネスモデルは、競争優位性を発揮し、維持していくことが必要です。しかし、ビジネスは相手のルールに従っていたのではなかなか競争優位性を発揮することはできません。そこで取るべきアクションは、ビジネスのルール自体を新しく作ってしまうことです。そのためには
・潜在ニーズを顕在化させて、ルールにしてしまう
⇒ 顧客に新しい価値観・常識を作る
・顧客の問題を解決して、ルールにしてしまう
⇒ 顧客の目を新たな解決方法に向けさせる
・顧客を細分化して、ルールを作る
⇒ よりニッチなニーズを押さえてローカルルールを作る
という3つのアプローチがあります。
○実現にはリーダーシップが求められる
バリューチェーンを再定義し、新たなビジネスモデルを構築して、異業種競争に挑んでいくにはリーダーシップは必要不可欠です。そのためには「道を示す」こと、つまり
・ゴールを示し
・戦い方・進め方を明らかにし
・広い視野をもって将来を見据る
ということがまず必要です。
その上で
・実行力
・スピード
・柔軟な思考力
・変化対応力
をもって成果、つまり競争に勝つことが求められるのです。
では、そのために必要なリーダーの素養とは何でしょうか。この本では、
・先見性
・勇気
・現場力
をもった、諸葛孔明のような聡明さと、関羽やち張飛のような行動力・突破力が必要としています。同様のことは、野中郁次郎氏は「知的体育会系」「フロネティック・リーダー」といった表現をしています。激しい競争にさらされている現在、考え・動けるリーダーでなければ、もはや成果を得て、競争に勝つことは難しくなっているのです。
Posted by ブクログ
とても読みやすい。さらっと、つまることなく読める。
社会が成熟すればするほど、異業種間の競争は増える。
著者は、異業種間競争を異業種格闘技と呼んでいる。
以下、抜粋となるが、ドキッとさせられた。
『(音楽業界における事業連鎖において)絶対になくてはならないのは「ミュージシャン」と「消費者」だけ。そのあいだにある要素は手段であり、レコードでもCDでも音楽配信でも何でもよいのです。』
己が提供している製品やサービスのみならず、バリューチェーンの川上と川下、消費者が何を欲しているのか?をより強く意識せねばならないことに気づかせてくれる。