あらすじ
小さなプレス工場での単調な作業と理不尽な上司の嫌がらせに鬱屈していた29歳の一郎は、偶然再会した友人・牛木の会社で高級犬のブリーダーの仕事を手伝うことに。それは地獄のような日々の始まりだった……。
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Posted by ブクログ
導入部から何やら湿り気がありモヤが掛かった様な雰囲気。こういうの大好きです。『うなぎ鬼』同様、堕ちる人間の様を描いているのだがこの人の作風好きだなぁ。ラストまで一気に読ませる展開力と筆力で自ずと主人公に感情移入させられ、読んでるこちらまでも不安や閉塞感を煽られる。もうゾクゾクが止まらない。人間の心の弱さや隙間に入り込み地獄へ引き込まれる怖さは明日は我が身なのかも知れない。甘い汁程怖いものはないのだ。いやぁー、読後のズッシリと心が重いこの嫌な余韻…。こういうの待ってたんだよ。
Posted by ブクログ
小さな町工場で月給10万円で働く一郎。鬱屈した日々を送っていたところ、幼なじみの牛木と偶然に再会し犬のブリーダー業に誘われる。そこから一郎の運命は変わりだす。最初は少しずつ、けれど逃れようもなく着実に。もちろん悪いほうに。グロいほうに。
最初から最後までねっとりと薄気味悪い空気が満ちてる、分かりやすいホラー。もともと底辺に近いような生活を送る怠惰な人間が主人公だったけど、これが「黒い家」のようにごく普通のサラリーマンが主人公だったら、もっと怖かったんじゃないかと思う。
Posted by ブクログ
埼玉・愛犬家殺人事件をそのまま小説にしたような作品。過激な描写がある訳ではないけど、生理的嫌悪を喚起する、なんとも言えないおどろおどろしさに引き込まれて一気に読んでしまった。万民受けはしないだろうが、一読の価値あり。
Posted by ブクログ
例えばけんかになって、自分は殴り合う気だったのに、相手に自分の大切なものを壊された感じ。直接的な痛みじゃなくて、自分も罪悪感を伴う心の痛みを感じた。カタストロフィがないのも現実的、というか現実。あぁ、どんより(褒)。
自分ではどうにもならない泥沼に足を突っ込んでしまった感じの恐さ。映画『冷たい熱帯魚』が好きな人にはオススメ。
Posted by ブクログ
職場に嫌気がさしていた一郎はある日偶然旧友の牛木と再会する。牛木に誘われ一郎は彼の仕事の手伝いを始めるのだが……
本のオビなどで「読後感最悪!」という煽り文句が使われるようになって2,3年くらいたったように思いますが、この本はそうした本たちの最悪とはまた一線を画す終始イヤーな雰囲気を感じました。
なんでそう感じるのだろう、と自分なりに考えてみると、作品のリアルさがその理由かな、と思いました。主人公の現状に対する不満の感情、また彼のおかれている環境自体が現代社会のどこかに実際にありそうで他人事と一概に思えませんでした。だから、彼が甘い話に乗っかりそのまま、ズルズルと悪い方、悪い方へと転落していくのも他人事だから、フィクションだからという割り切りが上手いことできずに自分の感情も引っ張られていったのかな、と思います。読んでいてなんとなく新潮文庫の『凶悪』を思い出しました。
文章も巧いんだろうな、と思います。読んでいて終始イヤーな気分で、その感覚は読み終えてからもしばらく続きました。いつもなら面白い本を読んだ後は、その本の余韻にしばらく浸っていることもあるのですが、この本に関しては読み終えると「なにか明るくて笑える本を読んで気分を変えないと」と強迫観念にとらわれてしまい、すぐに奥田英朗さんの伊良部シリーズの『空中ブランコ』を読み始めてしまいました(苦笑)
じっとりとした嫌さを楽しみたい、という人にはおススメの小説です。