あらすじ
周辺諸国との軋轢が高まるなかで「歴史問題」を耳にしない日はない。しかしこれまで学校で教わってきた「歴史観」はほんとうに正しいのか。その猜疑とともに、日本の近代史をもう一度学び直そうという機運は高まるばかり。その格好のテキストが本書だ。冒頭で著者はいう。「国家の歴史を肯定的に受けとめなければ、私どもが献身すべき対象をみいだすことはできません」。そうした視点で明治維新から敗戦に至る歴史を俯瞰し直したとき、そこにはアジアの発展に尽くし、世界に雄飛した人々がいた。著者が総長を務める拓殖大学は、まさにそうした「戦前のグローバリズム」を担い、生命を賭してアジアに貢献する人材を生み出す大学だったのだ。桂太郎、後藤新平、新渡戸稲造。拓殖大学の草創期を担った稀代の人物たちはいかに「興亜」を志し、行動したのか。同時にその営みを知ることは、そもそも私たちはなんのために「国際化」しなければならないのか、というグローバル化の本質を学ぶことにもなる。「否定の言葉でまみれた過去」を問い直し、日本人としての誇りと自信、そして未来を拓く力を与えてくれる一書。
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Posted by ブクログ
文字通り、戦前に日本がいわゆる植民地支配をしていた台湾や韓国、満州などについて語った一冊。
ところどころ拓殖大学について出てくるのが学長という感じだが、内容としては時代の中で日本がこれらの地を支配する必要に迫られ、かつ実際に支配したかということがよくわかった。
Posted by ブクログ
以前から、渡辺氏はバランス感覚のある思想家だと思ひ、いくつかの著作を読んできた。
今回の新書は、拓殖大学の総長として、拓殖大学の歴史を織り交ぜながら、日本の明治以降の近代史を書き上げた本である。
故人となつて仕舞つたが星野君の母校でもあり、近代史を通観する為にも良いテキストだと思つて選んだ次第である。星野君はどんな感想を表明するか楽しみにしてゐたのだが、残念である。
先づ書き出しの垂直的人間関係と水平的人間関係と言つた概念は新鮮で説得力ある表現だと感じる。
私事であるが、母方の曽祖父は日露戦争の日本海海戦で戦つた帝国海軍軍人であつたし、祖父は大東亜戦争前の南京攻略戦で戦死した帝国陸軍軍人であつた。さう言ふ意味でも明治以降の我が国の歴史は独立を維持する為に悪戦苦闘した哀しい歴史と感じる。
最近富に韓中からの日本の歴史認識批判が姦しいが、それぞれの国家には其れなりの言ひ分、事の訳がある訳で、其処に唯一の共通の「正しい歴史認識」が存在する訳ではない。その弁へをかの国は理解して貰はないといけないと思ふ。
何はともあれ、市井の一国民としては、渡辺氏曰くの「肯定的自我」を持つて我が国の歴史を知つて行きたいと思ふ。再読の価値ある本だと思ふ。