あらすじ
自動車、家電、IT機器からソフトウェア、飲食サービスまで……。
日本から「かっこいい商品」「売れる商品」「素敵な商品」が生まれなくなったのはなぜか?
その理由は、日本の経営者がデザインを経営の中核に置くことを怠ったからだった。どうすれば、日本の商品が消費者にとって魅力的なものに生まれ変わるのか? 伊藤忠ファッションシステムで長年流通業を研究し、ifs未来研究所の所長として、百貨店や老舗和菓子、化粧品などと協業企画を実践する、川島蓉子が、3人の経営者、3人のデザイナー・クリエイターに、「デザインを生み出せる経営のあり方」について訊く。
登場するのは、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭社長、三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長、伊藤忠商事の岡藤正広社長、広告から企業のブランディングまでを手がけるクリエイターの佐藤可士和、アウディのデザインで知られる和田智、アメリカのMITメディアラボの副所長を務める石井裕。
日本が「売れる、愛される、かっこいい」を取り戻すための処方箋。
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Posted by ブクログ
読み応えがある1冊でした。
経営トップとクリエイターが3名づつ、デザインを軸にインタビューを受けられ、まとめられたもの。
当たり前ですけど、キレッキレで頭がいいです。
みなさん。
デザイン論は昔から好物なので、前のめりで読めました。
【佐藤可士和さん】
・社内にその会社のイズムがビシッと走っている会社は、社長がサラリーマンでもブランディングは上手ですね。
・「デザインとは感覚言語である。」
【岡藤正広さん】
・自分で仮説を立てられるようになれ、ということです。
・(かっこいい上司ってどんなひとだと思いますか?という問いに対して)
「かっこ悪い」を引き受けられるひとかな。それで「かっこいい」を人にあげられる人。
・苦労して苦労してようやく成功に辿り着いたというくらいの経験をして、人は充実した気分を味わうことができるのです。
・「勘定のまえに感性」です。
Posted by ブクログ
日本企業の「経営とデザイン」をテーマに、経営者目線とクリエイター目線から語る、学びの多い素晴らしい良書。
それぞれのバックグラウンドも人柄も大きく異なっているけれど、
不思議と話の内容に共通点があり、普遍的なtipsが散りばめられていると感じた。
・モノが余っている時代において、目新しいデザインや機能、効率化によるコストカットを追求するだけでは埋もれてしまう。
・日本は右肩上がりの時代つまり安くて良いものをつくれば売れる時代の価値観から抜け出せていない。いま経営者に求められているのはビジョンであり、そのビジョンを目に見える形に翻訳できるデザイン。
・デザインとはもののかたちを小手先で変えることではなく、ビジョンを形にすること。
・ビジョンとはすなわちその企業やサービスの存在意義。ビジョンを消費者に目に見える形で伝えるのがデザインでありブランディング。
・ブランディングすることで社会の中で企業やサービスのポジションが確立され、ターゲットとなる人に出会う確率が上がり、モノが売れる流れができる。
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その他備忘録として、特に心に残った文章を以下に抜粋。
CCC増田社長
・アップルストアの存在はアップルのブランディングにとってものすごく重要。翻ってパソコン業界から撤退したIBMにしろNECにしろ昨今の日本の家電メーカーにしろ自分の店を持っていない。ブランディングの面からすると、あれが弱いところです
・企画のコンセプトだけを前に出しても理解されない。だから先にお金の話をする
・モノ余りの上に、ウェブの進化で、編集権がお客さんに移った。だからこそ供給者側は、本物のプロとしてお客さんがあっと驚くもの、素敵な空間や時間をデザインして編集してあげないと存在価値がなくなる
佐藤可士和さん
,ブランディングとは社会の中でその企業や商品のキャラクターをはっきりさせて、ポジションを取ること。企業がいたいポジションを取ること。
・自社のブランドのポジションをマーケットでちゃんと取れるようになる。そうするとターゲットとなるべきお客さんと出会う確率が高くなり、モノが売れる流れを構築できます。
・ブランディングとは本質的価値×戦略的イメージコントロール
和田智さん
・団塊の世代からその上の世代は右肩上がりに市場が成長してきた時代。新しいもの=いいものという価値観を引きずっているのかもしれない。
・デザインに対する考え方。企業やブランドが持っている思いや哲学を翻訳して、具体的なかたちにする
伊藤忠商事 岡藤社長
・問屋さんに卸した商品をどうやったら最終消費者が百貨店で買ってくれるか。そこまでを総合商社がプロデュースする。つまりモノが流れる仕組みをつくる
・自分なりに仮説を立ててそれを検証するために現場に行くのがビジネスの基本。事前に仮説を立てること
・薄利多売から脱するにはブランドに対する主導権を持たないとダメ。そうしてはじめて付加価値を上げることができる
・自分で仮説を立てられるようになれ。微妙な変化に気づいて先手を打つ。これはいけるという芽をつかんだら一気に広げる。直近でこの辺りが伸びるところというのを見つけるのが重要。お客さんの要望の少し先。
・他の先進国も新興国も技術を先鋭化している。いま日本が持っている技術は市場における主導権になっていない。マーケティングが必要。あらゆる商品はブランドビジネス化している。
mitメディアラボ石井さん
・これだけモノが溢れている現代において画期的な技術革新やサービス革新も盛り込まれていないのにデザインだけ新しくした製品を出して消費者を煽る消費サイクルそのものが時代遅れ
・素晴らしいアイデアかどうかを見極めるための問い。So What?、Who care? Why?
Posted by ブクログ
ビジョンを駆動するデザインそれは、どういう世界を作ろう、どういう未来をつくろう、どうやって皆を幸せにしようと考え方、ビジョンから構造をデザインする。
日本は、海外をモデルとして、表面的な新しさ奇抜さを求める傾向にある。
忘れられ、捨てられるデザインではなく消費者から長く愛されるデザインを考える必要がある。その為には、『思い』『未来』を明確にしてそれを内外へ浸透させる必要がある。
押し付けや、他の成功例を真似て当てはめるのではなく、その人の持つ魅力を引き出す仕事をしたい。
Posted by ブクログ
企業や経営におけるデザインの役割
日本や世界のトップクラスの経営者やデザイナーが何を考えて仕事をしているのか
個別の商品の外観ではなく大局的な視点から企業・経営をデザインする
方法論だけでなく背後にある哲学も示唆深い。
Posted by ブクログ
未来研の川島蓉子さんが、3名の経営者(CCCの増田さん、伊勢丹三越の大西さん、伊藤忠の岡藤さん)、3名のデザイナー(佐藤可士和さん、和田智さん、石井裕さん)と対談し、それぞえれの考える「デザイン」を引き出していく。それぞれのトップランナーが語る内容から『デザインの本質を考えるヒント』をたくさん貰える良書。
デザインの重要性が声高に叫ばれる今日この頃だが、日本で言う「デザイン」は危うさが伴っている。すなわち、斬新さに偏った『一時的な見た目の新しさ』を求めることに終始しがち。しかし今考えなければならない「デザイン」はそうではない。どのような未来を創りたいかの「ビジョン」を『デザインする』ところから見つめ直さねばならない。過去に敬意を払い、現在をよく理解し、未来を創造する、一連のプロセスを描くことが「デザイン」である。
・見た目じゃない、男は中身だ。そんなマッチョな発想はお客様には通じない。
・社長の仕事は「経営」。デザインの良し悪しなんかわかるわけない。もちは餅屋に任せるべき。その変わり、どの餅屋を「選ぶか」と、こんな餅が欲しいのだ!というコンセプトをしっかりと「伝え理解してもらう」のはまさしく「経営」の仕事。この経営のするべき仕事をせずに、餅屋の餅に文句をたれる経営陣が多い。
・効率化は重要だが、需要>供給の時代にフィットした考え方。需要<供給の時代においては「需要を上げるための科学」をもっと真剣にやらなければならない。
・経営者はオフの時間を重視するべき。会社から離れて、自分の時間を持ち、学び続けなければならない。トップの器が会社の器を決める。
・歩けるようになってから歩く赤ちゃんはいない。出来ないことに挑戦していく中で、人は出来るようになる。やりもしないで、出来ないと立ち止まることは絶対にあってはならない。
・お客様自身が情報を編集できる時代になった。そんなお客様に驚きを与えられるよう、供給側はあらゆる情報・価値を編集し、その価値を最大限に増幅できるプロでなければならない。
・ブランディングとは、本質的価値×戦略的イメージコントロール。
・社外の前に、社内のブランディングをしっかり浸透させる必要がある。社内が腹落ちして動かない限り、社外にブランドを打ち出していくことは出来ない。
・デザインとは感覚言語である。5感にフルに訴えかけるものがデザイン。
・良いデザインを生み出すためには、自分自身が5感をフルに使えるよう日頃から鍛えることが必用。
・「わざわざ」を積極的な価値として前向きに捉えてもらう工夫を。
・新しい<美しい・使いやすいを目指すべき。
・車は動く建造物。街並みに映えるデザインになっているか。ミニワゴンはやめませんか?
・きれいごとを貫こう。きれいごとと聞こえること、矛盾することを、それを諦めずに、貫き通すところに、普遍的な美しさが生まれる。
・たきたての白いつやつやなご飯の美しさ。これが美しい普通。新しいデザインとは、次の時代の「美しい普通」をつくりあげること。
・目の前のお客さまのさらに先にいるお客さまを常に見て行動する。
・ぶらっと現場を渡り歩いても意味がない。自分なりの仮説をもって、その仮説の検証をするために現場を渡り歩く。
・良いデザインを生むためには、会社に余裕が必用。
・技術は日進月歩で進化する。故に、技術は陳腐化する。しかし、強固なビジョンは時代の変化に耐え、時代を超えて生き延びる。強固なビジョンのもとに、デザインを考えなければならない。
・人がいいかどうかではなく、まず自分にとっていいかどうか。この価値判断をするクセを日本人はもっと持たねばならない。
・新しい物事に挑むことは最高の贅沢だ
・僕の前に道はない。僕の後ろに道はできる。整備された道での勝負は競争とは言えない。道なき道を切り開くことこそが真の競創である。
・偶然を偶然と受け止めず、必然と考えて意味を解釈する。そう思うと目の前のチャンスが見えてくる。
・アイディアの95%はゴミ。固執せずに、次のアイディアに素早く移ることが大事。そのためにも、大量のアイディアストックは重要。
・アイディアは「なぜ?だから?誰にとって価値がある?」を問い続けることで磨き込む。
Posted by ブクログ
ものを世に送り出すものとして、非常に興味深い内容だった。なるほど、と思わされるところと、それは自分のやっていることで考えれば視点が違いそうだな、ということ、様々だけれど、自分の思索を深めるのにとても役に立つ。
Posted by ブクログ
デザインをどう捉えるか、という点で興味深い話が多く、参考になる。特に、和田智さんの、「美しい普通」。石井裕さんの、「2200年のことを考える」「200年先に残る「ビジョン」を産み出す」。いずれも突き詰めて実行できているか?自問して実行せねば。
Posted by ブクログ
酷いデザインではいいものでも売れない。これは間違いないと思う。でも、優れたデザイン、美しいデザインで付加価値を付けて必要ないものでも売りつけようという時代もそろそろ終わりかけている。というか早く終わって欲しい。でも、地球上の人たちが幸せになるためにデザインで何が出来るかを考えようなどという大きなテーマは、それを考える余裕がある人にしか取り組めない。デザインという仕事はいつの間にか高度な仕事になってしまったなあ。
Posted by ブクログ
CCCの増田さん、可士和さん、三越伊勢丹の大西さん、Audiのデザイナーだった和田さんなど、デザイナー側、経営側の両方から、デザインについてのインタビューを採録。それぞれいろいろ成し遂げてきた人だけに、おもしろい。80年代デザイナーは奇抜なものを作らされていたと。そこに、普遍的なものはなく、普通をいかにデザインするかだと説く和田さんの意見に納得。その和田さんの話にちょっとでてくるが、Jinsで眼鏡をデザインした。外を見る眼鏡でありながら、自分自身が見えるウェアラブル眼鏡。見た目はきわめて普通に見えるところがカレの言うデザインなのだろうと思う。
Posted by ブクログ
自分の好きな、和田智さん、佐藤可士和さん、石井裕さんのインタビューを見たかったこともありますが、皆さん、すばらしいご意見です。これからの200年先を考えて、ビジョンを考えぬき、デザインし、プロダクトを決めていく。漆黒の中、遠い光る星を目指して、、。たとえこの年からであっても、大いに参考になります。
Posted by ブクログ
デザインとは、その企業のDNAである。つま
り、その企業の文化、想いや哲学が表されて
いる。それは、ブランドイメージとなり、独
自のモノとなり、消費者へ届く。
美しい、カッコいいは1つには限らないがその
センスは人の心に入っていくものである。
Posted by ブクログ
80年90年代は世界でもクールだと称賛された日本製品が、最近は海外勢にどんどんシェアを奪われる。特に家電業界はその傾向が強い。そしてシェアを失うにつれて、商品のデザインまでもクールではなくなっている。
なぜそうなったのだろう?とデザイナーに聞いてみても、社内でかっこいいというデザインを提案しても採用されない。という答えが返ってくる。その悪循環に陥った原因。ダサい社長の対極にいる社長やデザイナーに話を聞いている。
読んでいて思ったのは、質問についていきなり確信をズバ!っという人は少なく、じゃああなたの言うダサいデザインって何?とかの問いを挟み、インタビューアーの想定している答えを聞いたうえで、相互のギャップについて話し始める人が多いと思った。
結局、デザインが軽視される(又は重要視されいない)原因は、仕事一筋で、その業界しか知らず、いいものであれば最後にはわかってもらえる(だから売れるはず)というマーケティングの基礎もわからない、頑固おやじ的マッチョな思想で、わき目も振らず働いた人が偉くなり決定権をもっても、デザインがわからないから無難な特徴のない製品となってしまうと言う事だと思った。
自分が一番響いたのは、日本のデザインは、「新しいにこだわりすぎること」といったこと。新しい事を重視していて本質的な美しさや使いやすさ、機能美を重視していない。そのデザイナーが70年代美大時代の授業で「新しいよりも本質を見極めろ。何十年たっても色あせないデザインを目指せ」(「新しい」は古い)と言われていたにもかかわらず、社会に出たら「新しい」事に執着している。というくだり。
とっくの昔に問題と解決につながる処方箋がわかっていたのにそれが実業に繋がっていないこと。
本当にそろそろそういう情報が共有できない弊害で問題が問題であり続ける事はやめてほしいと思った。
また日本企業が元気がないのは、デザイン以前に未来に足してのビジョンが欠けている。と言う意見も内部にいる一人として非常に共感する。